設立から10年 SFC-IVスタッフが語るIVの魅力とは?
今年で開設10周年を迎えるSFC-IV。知られているようで知られていないこのIVについて、SFC CLIP編集部が「IVってなんの略?」にてお届けしていく。
SFC-IVは正式名称を「慶應藤沢イノベーションビレッジ」といい、起業家や新事業に取り組む事業者を総合的に支援、オフィス提供やビジネスのサポートを行っている。施設はSFCキャンパスから徒歩5分程度のところに位置し、入居すると藤沢市からオフィスの賃料の補助などが受けられる。OB企業である株式会社LoiLoや面白法人カヤックなどは名前を聞いたことのある人も多いのではないだろうか。
大学の研究成果とビジネスを繋ぐ役割もしており、SFCと深い関わりがあるIV。そんなIVのスタッフで、起業や経営の相談に応じているIM(インキュベーションマネージャー)の吉田寛夫さん、中井彰人さん、上田将史さんに話を聞いた。
IVはSFCから徒歩5分のところにある
SFC-IVってどんな施設? IMにインタビュー
—— IMの皆さんのお仕事について教えてください。
上田:
私たちIMの仕事は、スタートアップの企業に対して、事業がより良いものとなるように、お金まわりや販路の開拓など、ビジネス上のあらゆるサポートをすることです。
—— IVでは入居者に対して様々な支援を行なっているようですが、入居者以外の場合でも支援を受けることはできますか。
上田:
IVに入居していなくても、藤沢市内で起業を考えている人からの相談も受け付けています。もちろん、その中にはSFCの学生の皆さんも含まれています。
—— そのような相談に対し、IMの皆さんは具体的にどのように支援をするのでしょうか。
上田:
相談者の相談内容に応じて、支援内容は異なります。何から手をつけたらよいのかわからない人がいる一方で、アイデアを実際の事業へどのように落とし込むのかについて具体的なアドバイスを求める人もいるなど、様々な内容の相談を受けています。しかし、我々IMには「これをする」といった決まった対応があるわけではなく、相談者の状況を踏まえ、相談者の求めるものに応じて、個別対応の支援をしています。コンサルタントや銀行出身者など、様々なバックグラウンドを持つIMが待機しているため、そのような柔軟な対応が可能となります。
—— 最近行なった支援についてお話を聞かせてください。
上田:
昨年「フジモリ(藤沢盛り上げ会議)」」というものを実施しました。藤沢市内にいる起業支援者が連携して、地元でビジネスをしている方、起業を検討している方を応援することを目的に、セミナーを開催したり、勉強会を行ったりしました。
勉強会では、経営に関する「理論」の面をIMが教え、「実践・実務」の面は、実際に起業して成功している方たちに講演をしていただきました。例えば、昨年のある勉強会では、まず私が、フレームワークを用いた競合分析の方法を解説し、その上で、ロイヤルブルーティージャパン株式会社(ワインボトルに入った高級茶を販売する会社)の社長さんから、具体的な事業戦略についてお話しいただきました。
IVについて説明する上田さん
「何となく起業してみたい人」も大歓迎!
—— SFC-IVを利用するメリットはどういったものがあげられますか?
上田:
どんな相談でも受けられることですね。ビジネスについての相談ももちろんですが、学生の皆さんは、学生の頃は大人との接点をなかなか持てないと思いますので、社会人の先輩として、学生生活のことなども含めて色々な相談に乗れればと思っています。ビジネスに関して言えば、私たちがそれぞれの専門性、強みを活かして相談に乗ることもできますし、自分たちに無いリソースが必要でしたら、外部へ取りにいくこともできます。SFC-IVでは、かつてIVに入居していた企業とのネットワークや、長年付き合いのある弁護士、会計士等の専門家、金融機関やVCなどとの関係性を活かして、人・モノ・カネ・情報、全ての面で起業家を手助けする用意があります。
吉田:
起業した段階では、メンバーが少人数であることも想定され、第三者の客観的な意見を得られないことも多いと思います。そんな時に、第三者に何でも相談できる関係をIVで築けることは、大きなメリットになるでしょう。
IVを利用するメリットについて語る吉田さん
上田:
ビジネスだけでなく、人間関係など、メンタル面でのサポートもしています。まだ仕事に慣れていない新入社員の方を誘って飲みに行き、世間話をしつつ、仕事をする上での真面目なアドバイスをたまにしたりもします。
—— では、特にはっきりとしたアイデアのないまま、なんとなく起業したいと思っている人でも訪れても問題ないのでしょうか。
上田:
むしろそういう人の方がいいですね。クレイジーなアイデアを持った方は大好物です(笑)。たとえ最初は具体的でなかったとしても、私たちとのディスカッションを通じて、より具体的で洗練されたアイデアになっていくと思います。ここにいる他のIMもアイデアマンが多いので、お互いのアイデアをぶつけ合って、その人のビジネスプランがブラッシュアップできればよいのではないでしょうか。
吉田:
アイデアがなくてもその人が起業したいと思っているのなら、その人の興味のある事を質問していって、事業を一緒に考えていけます。アイデアのない状態でも全然大丈夫です。
上田:
その人がワクワクするもの、大切にしたい価値観などを、コミュニケーションを通じて、気づかせてあげられればと思っています。最初から高いレベルなんて必要ないので、まずはIVを訪れていただきたいです。
「SFC生には社会をよくする活動をして欲しい」
—— 最後にSFC生へメッセージをおねがいします。
中井:
素直な感想なのですが、SFC生は社会的な問題への関心が非常に高いと思います。僕らの時代、ITバブルの頃は起業=一攫千金のイメージがあって、「上場して、あとはビバリーヒルズに引っ越すぜ!」みたいな人がたくさんいた時代だったんです。しかし、それから時代が変わったなと思います。
特にSFCは、金儲けをするためではなく、世の中を変えていこうという意識が非常に高いと感じます。そういう少し高い次元でものを考えている人に、IVでアイデアを話してもらえると、持続的な組織が作れるのではないかと思っています。
SFC生の現状について語る中井さん(左)と上田さん(右)
上田:
以前、SFCのある先生が「SFCにはビジネスを始めて、うまく儲けている学生もいるし、お金儲けはできていないけれど、社会課題の解決のために活動している学生もいる。特に、そういった儲からない活動を、潰さないで何とか継続できている学生を多く輩出しているのはSFCの強みだ」とおっしゃっていました。営利性を追求してビジネスをするのも、もちろん素晴らしいことですが、個人的には、社会を良くするために活動してくれるSFC生を一人でも多く増やせるよう、学生の皆さんのお手伝いができればと思っています。
あとは何でもいいので、まずは話しに来てください。かまってほしくて寂しそうにしているオジサンたちがIVにはたくさんいるので(笑)。IVを利用している入居者や学生にも様々な人がいるので、そういった方たちとの交流を通じて、自分にない多様な視点も身につくのではないかと思います。そういった意味でも、IVで学ぶことは多いと思います。ぜひIVに来ていただき、ビジネスの匂いなどを少しでも感じ取ってもらえれば、我々も嬉しいです。
毎年おおよそ100組の人が訪れ、5-7件ほどのプロジェクトがIV内で始まっているという。気さくで判断力のあるIMの皆さんが起業のパートナーになってくれるだけでなく、他の入居者の方と経験を共有できるいい場になりそうだ。起業を考えている人はぜひ一度、足を運んでみてはいかがだろうか。