六本木・東京ミッドタウンにて開催されている「SFC Open Research Forum 2017」(以下、ORF)では、今年もさまざまな研究室が日頃の研究活動の成果を発表している。今回SFC CLIP編集部は、岡部正勝総合政策学部教授率いるサイバー防犯ボランティア研究会のブースを取材した。サイバー防犯ボランティア研究会は、子供たちへのネットモラルの特別授業を主な活動内容としている。

大学生が授業をする サイバー防犯ボランティア

スマートフォンの普及でインターネットに触れる機会が増えた子供たち。それに伴って、よりレベルの高いリテラシーやモラルを身につけることが求められている。そうした状況を受け、ネットリテラシーやネットモラルを、小学校から高校の子供達を対象とした特別授業によって分かりやすく伝えるのが、このサイバー防犯ボランティア研究会の主な活動だ。

2015年-2017年の3年間では、毎年約15校から依頼を受け、特別授業を実施してきた。最近では首都圏だけでなく地方での実施もあり、今回のORFの直前、20日(月)にも広島県で実施したという。活動は大手メディアで取り上げられたほか、「2015年度SFC STUDENT AWARD」「東京キワニスクラブ 2015 青少年教育賞」を受賞、神奈川県警から感謝状を授与されるなど、学内外から高い評価を得ている。

特別授業を大学生が行うことの意義について、岡部教授はこう語る。

「子供たちに対してインターネット関連の注意を呼びかける資料は、警察や通信事業者などで制作されたものが既に存在しています。しかし、その伝え方も重要です。大学生、つまり子供達と年代の近いお兄さんお姉さんが授業を行うことで、子供達はより耳を傾けてくれるため、高い効果があります」。

気になる授業の内容は

特徴ある3パターンの授業

特別授業は、インターネット関連のトラブルについて多くの事例を紹介する「講義型」授業、特定の事例をとりあげて子供達に深く考えてもらう「グループワーク型」授業、その両方を行う「ハイブリッド型」授業の3つの選択肢を提供している。

グループワーク型の授業では、ある物語の主人公が被害に遭うまでの出来事をもとに「どこでどのような間違いをしてしまったか、どうすべきだったか」を子供達に考えてもらう。その考えをグループごとに模造紙に書いてもらい、みんなの前で発表するという流れだ。

子供達が書いたシートの一部も展示されている 子供達が書いたシートの一部も展示されている

特別授業の準備は念入りに

特別授業の準備は念入りに行われている。学校ごとに授業を設計する「オーダーメイド方式」をとっており、授業をする学校の教員と事前に打ち合わせを行う。「その学校では実際に何が問題になっているのか」「どうしてこの特別授業を要請したのか」を聞きながら、その学校の子供達のニーズに応じて授業内容を構成する。「毎回授業の展開は異なります。また、扱う内容は同じでも、小学生と高校生では伝え方を変えなければなりません」と研究会所属の重兼千春さん(総4)。

特別授業のない日には、警察庁でサイバーセキュリティを担当していた岡部教授をはじめ、専門家からの指導や教示を受ける。研究会所属の学生同士で「今流行しているインターネット関連の問題」についてプレゼンをし合うこともあるそうだ。

授業の相手は大人の場合も

サイバー防犯ボランティア研究会では、子供対象の特別授業だけでなく、保護者・教員向けの研修授業も行なっている。岡部教授や研究会の学生が、現在のネット犯罪の概況、最新のネットサービス・アプリについて解説する。

「保護者の方からは、ご自身がインターネットに詳しくないのでお子さんにどう注意すればよいか分からないという声も上がっています」と重兼さんは話す。

ORFでは特別授業の成果・分析を紹介

来場者に研究会の紹介をする代表の鈴木杏菜さん(総3) 来場者に研究会の紹介をする代表の鈴木杏菜さん(総3)

今回の展示では、サイバー防犯ボランティア研究会の特別授業の成果・分析を詳しく見ることができた。

「大学生が授業をするということを強みにしています。まずは何をしている研究会なのか知ってほしい」と代表の鈴木杏菜さん(総3)。また、副代表の松井一勝さん(環3)は「我々大学生は子供の頃からインターネットに触れてきている世代。これからの世代にもインターネットを上手く使ってほしいので、その使い方を分かりやすく伝えていきたい」と今後の意気込みを話した。

子供達と同じ目線でインターネットの使い方を分かりやすく教えるサイバー防犯ボランティア研究会。ぜひ皆さんも展示ブースに足を運んでみてはいかがだろうか。

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