Association for International Students(以下、AIS)は、SFCの英語のみで授業が行われるプログラムであるGIGAに参加する学生(GIGA生)が中心となって、GIGAプログラムの改善とGIGA生とその他のSFC生の交流を促進することを目指した公認団体だ。SFC CLIP編集部はAISのメンバーを取材し、AISの課題意識と活動について聞いた。なお、インタビューはすべて英語で行い、翻訳はSFC CLIP編集部が行った。

GIGA生中心の公認団体

GIGAプログラムはSFCの総合政策学部・環境情報学部に設置されている、英語の授業のみですべての卒業単位を取得できる秋入学課程のことである。AISはGIGA生を中心とした公認団体で、GIGAプログラムの授業の改善、GIGA生や留学生の食生活などの処遇改善、そしてGIGA生とそうではない学生の交流を増やすことなどを目的にしている。

メンバーは14人で、そのうち9人がGIGA生である。団体名には「International Students」という語が含まれるが、メンバーのGIGA生の中には、留学生だけではなく人生のほとんどを海外で過ごした日本人や、日本でインターナショナルスクールに通った日本人など、GIGAと同様に多様なバックグラウンドの日本人学生が含まれる。

AIS公式Facebookページ AIS公式Facebookページ

始まりは授業への不満から

AISが未公認団体として設立されたのは2016年の春学期。従来からGIGA生は様々な不満を抱えていた。その不満の1つに、一部のGIGA生が語学力の問題から英語でしか授業を履修できないのにも関わらず、抽選選抜に落選してGIGAの授業を履修できない場合があることなどがあった。また、GIGAの授業を担当する教員の英語力も問題になっていた。そこで日本人ではないGIGA生3人が中心となってAISを立ち上げ、2016年度は未公認団体だったが、2017年度には公認団体になった。

AISは、設立当初はGIGA生の不満を解消することが目的だったが、徐々にその役割を拡大させていった。当初はメンバーはGIGA生のみだったが、最近はGIGA生以外の学生もメンバーとして受け入れている。「現在はGIGAプログラムの改善だけではなく、GIGA生とその他のSFC生の交流促進も行っている。そのためにはいろんな意見が必要なので、GIGA生以外の学生もメンバーとして受け入れている」とAIS代表の海部真世さん(総3)。AISのミーティングは基本的に英語で行っているが、言語能力はさほど重要ではなく、とにかくコミットメントを求めているという。

次回のイベントについて話し合うAISメンバー 次回のイベントについて話し合うAISメンバー

不満を言うだけで終わらないために

AISはGIGA生を代表し、学期中に1回、学部長に対して現状のGIGAの問題を議論する機会を設けている。また、職員とも学期中に数回話し合っている。「みんな文句は言うのに変えようとしないのが問題。私たちは彼らが文句を言える先としての団体になることを目指している」と海部さん。溝田伊吹さん(総2)も、「AISは大学とGIGA生をつなぐ媒体です」と語った。その言葉の通り、AISはGIGA生の不満や提案をアンケートなどで汲み取り、教職員に伝えてきた。

「教職員からは積極的な回答をもらっている」と溝田さん。GIGAの授業を履修した十分な英語力を持たない日本人学生がグループワークでGIGA生とコミュニュケーションを取れないという問題があり、それに対してGIGA生の間で不満の声が挙がっていたというが、そこで「TOEFLの点数でその授業で最低限必要な英語力を示してもらうようにした」とアーロン・タンさん(環3)。現在は、一部の授業で教員が英語力の目安の記載し始めている。

このように、部分的に改善しつつある問題がある一方で、なかなか改善しない問題もあるという。AISはSFCのムスリムコミュニティとも定期的にミーティングを重ねながら、ハラールフードやベジタリアンフードへの対応を大学に求めてきた。海部さんは「私たちの要望も食生活タスクフォースが生まれた要因だと思っている」と大学側の動きを評価しながらも、キッチンカーが一時的に導入された際も、ハラルフードやベジタリアンフードへの試みは進まなかったとと話した。

多様な団体・研究会との協力で交流促進

AISも運営に関わった、GIGA生と日本人学生がともにタコスをつくるイベント(AIS提供) AISも運営に関わった、GIGA生と日本人学生がともにタコスをつくるイベント(AIS提供)

AISはGIGA生の意見を教職員に伝えるだけではなく、GIGA生とその他のSFC生の交流促進も行っている。GIGA生は言語的・文化的障壁や入学時期の違いからGIGA生でないSFC生と交流することが少ないが、AISはその壁を取り除こうとしている。

AISにとって初めてのイベントは、2016年秋に新入生のウェルカムイベントとして行われたチーズ会だった。その際は慶應の起業支援サークルであるKBCとイベントを共催した。また、AISはSFC内外の多くサークルを巻き込み、秋のサークルオリエンテーションも行った。そして研究会とともに活動することもあり、長谷部研究会とはタコス会やSBCでの合宿を行った。今後はGIGA生に限らず多くのSFC生がよりよく研究会を知る機会を作りたいという。

AIS主催の秋入学者を主に対象にしたサークルオリエンテーションの様子(AIS提供) AIS主催の秋入学者を主に対象にしたサークルオリエンテーションの様子(AIS提供)

GIGA生としてSFC全体を改善していく

今回インタビューに答えてくれたAISのメンバー 今回インタビューに答えてくれたAISのメンバー

「どのSFC生も、このような団体がうまく働くなど思わなかっただろう」と溝田さん。GIGAはそのプログラムをスタートさせて以降様々な問題を持ち続けてきたが、このようなGIGA生を主体とした組織が持続的に活動し続けているケースは珍しい。

また、AISは当初GIGA生の処遇改善に焦点を当てていたが、現在はSFC内で分断している「GIGA生」と「GIGA生ではないSFC生」の交流促進に力を入れている。AIS(Association for International Students)は、GIGA生の視点からSFC全体を変えようとしている。「外国人学生だけについて言及したいなら、Foreign Studentsと呼べばいい。私たちがInternational (注: ここでは「国を超える」の意)という言葉を使うとき、それは外国人学生だけではなく日本人学生も含めたものになる」と海部さんは強調していた。