独自制作した動画をYouTube上に公開し広告収入を得るクリエイター「YouTuber」。SUSHI RAMEN【Riku】(すしらーめん《りく》)さん(環1)もそのうちの一人だ。2018年5月現在、チャンネル登録者数は240万人を超え、正真正銘の「大人気YouTuber」として活躍している。

そんな彼が今年4月、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に入学。今回SFC CLIP編集部は、大学受験について、そして大学生YouTuberとしての今後を伺った。

青春の全てを捧げた高校生活

—— 受験期は本格的な活動を休止していたものの、高校生活3年間をほぼ全て動画制作に捧げ、勉強と活動を両立されていたのが印象的でした。りくさんにとっての高校生活、そして大学受験はどのようなものでしたか?

高校生活は青春の全てを動画に捧げた感じでした。あっという間に終わってしまい、卒業の時は虚しいなと思いましたね。

高1の時はチャンネル登録者が3000人くらいで、友達みんなが一緒になってチャンネルを育ててくれたという感じです。大きくなる自分をずっと周りで見ていてくれて、YouTuberとしてでなく普通の友達として接してくれたので、まさに「一緒に動画を作る仲間」でしたね。高3になってやっと少し余裕ができてから初めて友達とファミレスに行ったり、ディズニーに行ったりして、すごく楽しかったです(笑)。

大学受験の時は、今までずっと積み重ねてやってきた活動を急にプツンと辞めるのにとても勇気が要りました。「本当にこれで正しいのかな」と思ったんですけど、そもそも大学に入るというのがYouTube活動を始める時の親との約束だったので、「約束だし」と思って始めました。

でも、それまでずっと動画のことしか見てこなかったので、本当に「大学って何?」っていうレベルだったんです。そこで、勉強が大好きな「すしらーめん」の元メンバーに話を聞いたら「りくならSFCが良いんじゃない?」と。「変な言い方だけど、あそこなら良い意味で変な人いっぱいいるし」って教えてくれて。それでSFCについていろいろ調べていくうちに「出る杭を伸ばすキャンパス」という言葉にすごく心を打たれて感動したんです。自分はいろんなことで「出る杭を打たれる」タイプだったので、自分の居場所を見つけられた感じがしましたね。

人の夢を聞くのが大好き

—— 大学合格をSNSなどで発表した際に「かねてから行きたかった2大学のうちの1つ」とコメントされていましたが、SFCを選んだ一番の理由は何だったんでしょうか?

予備校で同じSFCを目指すたくさんの人たちと触れ合った際、みんながみんなとても大きな夢を持っていたんです。その夢に向かって毎日楽しそうに走っているのを見て、「わぁ、すごい」と感じて。「こんな人たちと一緒にいたら絶対成長できる」と思いました。そういう自分の居場所、行きたい場所を見つけられた気がして、もう直感で決めました。もちろん授業も楽しそうだとは思いましたが、一番の理由はSFCに集まる「人」ですね。

—— 入学して早速周りの人から刺激を受けましたか?

はい。いろんな方とお話をして感じるのは、SFCへ入るための努力や時間を惜しまず一生懸命にやってきた方が山ほどいて、そしてすごい夢を持っている方がたくさんいるということです。そういった方々から多くの刺激を受けています。僕はまだ入学したばかりなので、まだまだこれからたくさんの方と会えると思うとワクワクしますね。

自分は夢を動画という形にしてみんなに届けるっていうことをやっているので、人の夢を聞くのがとても好きなんです。頑張ればどんな夢でも実現できると思っているんですけど、まずその夢を思いつくのが本当に大変なことだと。なので、いろんな人の話を聞くのが毎日楽しくて、宝の山だと思っています。

空きコマで編集したい 始まったばかりの大学生活

—— 授業が始まって約1ヶ月が経ちましたが、今のところの印象はいかがでしょう。

楽しいですね。「大学ってこんなに自由なんだな」と思いました。授業中ご飯を食べたり、何なら動画編集しようと思ったらできちゃう(笑)。「環境情報学」の授業で先生がいきなりドラムを叩き始めたのはすごくびっくりしましたね。「何かのイベントに来てるのかな?」と思いました(笑)。毎回同じじゃなくて本当に楽しくて、座っているだけでいろんなことを知れるなあと感じます。

—— YouTube活動で大変お忙しいと思いますが、大学生活での時間の余裕はどうですか?

移動が一番大変かもしれないですね。また、空きコマで編集できるかなと思ってたんですけど、時間を空けちゃうとどのシーンをやってたかも忘れてしまってなかなかうまく進められなくて、まだ上手く空きコマを活かせていないです。

—— メディアセンター(図書館)は編集用PCが並ぶ「編集ブース」があったり業務用の撮影機材を借りられたり、個人的には「YouTuberにぴったりの施設」なんじゃないかなと思うのですが、いかがですか(笑)。

一人で使うのはちょっと恥ずかしいかもしれないです(笑)。

でも撮影スタジオが学校にあるってすごいですよね。「ヤベェ撮ってなかった!」っていうシーンを空きコマで撮影したり(笑)。

—— ブルーバックを使って合成も。

えぇ、ブルーバックもあるんですか! それはすごい。YouTube Space Tokyoみたい(笑)。

移動が多いため、編集でもMacBookを使うことが多いという 移動が多いため、編集でもMacBookを使うことが多いという

—— 編集は、動画でも登場するMacのノートパソコンでされているんですか?

あ! 最近、ずっと欲しかった大きなディスプレイのパソコンをやっと買いました!

—— 編集時間は短縮できましたか?

そうですね、めっちゃ早いです。でも、移動の時に結局ノートパソコンに移すんですけど、それが結構時間かかりますね。

—— 「時間かかるのになんでノートパソコンにこだわるんだろう」と以前から気になっていました(笑)。

今までずっと移動中に編集することが多かったんですよね。実は高校の修学旅行の時も、新幹線の中で一人だけ編集していました。周りのゲームとかやってる友達に挟まれながら(笑)。でもみんなも自然と気を遣ってくれていて。高校の先生も応援してくれて、とても温かかった。

—— その点大学では、やはりYouTuberとして声をかけられることが多いですか?

そうですね。みんな知ってくれていて。4月初めの健康診断の時も「うわ〜友達いないな〜」って思いながら歩いてたらいろんな人が話しかけてくれて、すごく嬉しかったです。「すしらーめん《りく》」として友達が接してくれたのは大学が初めてだったのでやけに緊張しました。

SFCで何を学ぶ? AO入試が変化のきっかけに

—— りくさんの受験されたAO入試では、「自分が何をしたいのか」が重要視されたと思います。りくさんがSFCに入って一番学びたいことは何ですか?

受験期は「超人スポーツ」の勉強をするために大学に入ろうと思っていました。人間の脚力などの身体能力を拡張するロボットを作りたいなと。ただ、一度YouTubeの活動を休止して自分を客観視すると、見る目が変わってしまったんです。それで、活動を再開しても編集に40時間かかるようになっちゃったり、今まで週4で動画を出せていたのが週1でも厳しいくらいになっちゃったりして。

—— 「見る目」というのは動画制作に対する価値観でしょうか?

それもあるし、自分自身が変わったのかな? でもまだこれは難しくて、自分でもよく分かってないんです。何かが変わり始めていて、今までずっと上へ上へと頑張っていたのが、急に分厚い壁に当たったような気がして。頑張っても頑張っても前に進めなくてどうしよう、というのが最近の気持ちです。本当に今までで一番難しいところにいる気がします。

そのAO入試でいろいろなことに気づかされて、自分のことを見つめ直す機会をもらったと感じています。大人の方々にもたくさんの話を聞けて、そこでいろんなことを教えてもらいました。最近は、何も考えずにとにかく進もうと決めてやっています。

なので今は「自分探し」の段階なのかな、と。とりあえずもがいて、自分を見つけたいというか。まずは自分の活動に力をいれて、その中で本当に自分がやりたいことや勉強すべきことを見つけたいなと思っています。

また、最初は自分は出演者じゃなくてディレクターの側になりたかったので、映像の勉強もしたいなと思います。例えば、自分の動画のオープニングとかも毎回作れたら。

—— 毎回違うオープニングを作るんですか?

日本のYouTuberさんはあんまりやってないんですけど、海外のYouTuberさんってオープニングを毎回PVみたいに仕上げるんですよ。それが格好よくて。

—— 動画の内容は実験系や工作系が多いですが、映像以外に、ものづくりなどの分野も勉強される予定でしょうか?

ものづくりはやりたいですね。でも自分一人でできるようにならないといろんなことができないような気がして、今は動画にせずに家で変なものを作ったりしています(笑)。

—— ちなみにどんなものを?

無知なので作れるわけないんですけど、重力に逆らって浮く物体を作りたくて。いろんな設計図を描いたりして遊んでいます。溶接の免許を持ってないので、時間がある時に取得したいと思っています。

ただ、大学でそれをやろうとすると趣味じゃなくなってしまって、そっちに時間を取られるかなと思うんですよ。あくまでも趣味でやりたいですね。そういうことが好きな友達といろいろ話して、一緒に作っていきたいなと。週に1度の動画を待ってくれている視聴者の方がたくさんいて、今まで支えてくれた分の恩返しがしたいので、軸はブレさせないようにしようと決心しています。

「軸はあくまでも動画に」 「軸はあくまでも動画に」

動画制作に没頭したい! 休学も視野に

—— 以前インタビューを依頼させていただいた際、動画制作のために休学を考えているとのことでした。よろしければ詳しく伺ってもいいですか。

今まで学業なしに本気で動画制作だけをやったことがなくて、休みの日にしか動画を作れなかったんです。毎日朝から夜まで動画っていうのを1度やってみたかったんですよ。それをするタイミングはいつだろうか、と自分の人生を俯瞰して考えた時に、大学卒業してからだと遅いなと思って。それだったら今1年間本気で動画を頑張って、その後、自分のことをもう少し知ってから勉強した方が自分のためになるんじゃないかなと思ったんです。

でも実際はそこまでの決心ができなくて、とりあえず先週お試しで全部授業を休んでみたんですよ。ただ、いざ時間がたくさんできると、どう動けばいいかわかんなくなって空回りしちゃって。そのバランスというか、新しい環境に慣れるのがすごく大変ですね。

—— お試しで休んでみた結果、撮影中に怪我……。お大事になさってください。

ほんとだ(笑)。ちょうどその時ですね。「授業休んだぞ、うぉぉ」って気合い入りすぎて怪我しちゃいました(笑)。

本日18日(金)公開の動画の撮影で怪我をしたという。骨折はしていなかったものの「軟骨くらいはやっちゃってるかも(笑)」と語る 本日18日(金)公開の動画の撮影で怪我をしたという。骨折はしていなかったものの「軟骨くらいはやっちゃってるかも(笑)」と語る

—— では今のところは大学に通いながら動画を作っている状況だと思うのですが、新しい環境になって動画の作り方や撮り方に変化は感じますか?

そうですね、毎回新しいことに挑戦するようにしています。例えば実況を入れたり、テロップをなるべく少なくしてみたり、海外の方にも分かるように言葉をなるべく使わず動きだけで面白くしたり、毎回さまざまなテーマを決めています。

—— 最近チャンネル名をローマ字に変えてらっしゃったのも海外の人向けに?

そうですね。最近動画のコメント欄に海外の方も書いてくれるようになったんですが、「名前が日本語だから検索しても出てこないんだよう!」っていうのがあって。大学生になるし、自分のやりたいことは海外じゃないと出来ないことも多いので、海外の方にまずは動画を観てもらいたいなと思ったのが理由です。英語も喋れるようになりたいです。

あと、こんなことをしてる人はあんまりいないと思うんですけど、動画を作った後、しっかり自分のためにレポートを書いています(笑)。いろいろ研究しながらやってますね。研究していると面白い動画の規則などが見えてきて面白いんですが、それも時間がかかる要因かなと思います。

—— 時間がかかるのは編集だけじゃないんですね。

そうですね。最近、Googleさんにお声がけいただいてスピルバーグ監督の映画試写会に行って、そこで監督の話を聞いて「この人すごいな」と。それに感銘を受けたというか、憧れて。そういうすごい人になりたいなと努力しています。

大学生YouTuberとしての夢

計画中の企画内容を話す姿がまぶしかった 計画中の企画内容を話す姿がまぶしかった

—— 大学生活4年間で、「これはやっておきたい」というような夢はありますか?

うーん、一生のうちならたくさんあるんですけどね。月面で体力測定、とか(笑)。「それなんのためにやるの?」って言われそうなんですけど、そういうしょうもないことをやりたいですね。意外なところに意外な隙間がありそうで、いろんなことをやるうちに「あ、こことここが繋がった」みたいになればいいなと思います。

大学生活でということであれば、自分と同じ夢を持ってる人と一緒に、例えば何らかの装置を作って、それを動画にできたら面白いかなと思います。これまでは友達の出演していない動画が中心だったので、なかなかやったことないんですけど。今までは装置を作る時間はかけても1週間だったんですが、それを半年かけたりして「○○プロジェクト」みたいに出来ればなと思います。

あとやりたいのは、家を作る系の企画ですね。今ちょうど進めているのが、本気で作るからくり屋敷です。家を自分で作って、ボタンを押したらそこにある椅子が無くなって下の階に落ちちゃうとか(笑)。部屋ごとにテーマがあって、「ヘリウムガスの部屋」とか「水中の部屋」とか。水中の部屋ならいくら編集しても疲れないですね。浮いていられるので。それを、ちょうど大学在学中にやろうと思っています。いろんな人たちに「この部屋はこういう風に作りたいんだけど」って相談してアイデアを貰いたいです。あとは、インターホン押したらピー(自主規制音)したり、

—— それ以上詳しく言っちゃっていいんですか(笑)。

あ、「ピー」つけといてください(笑)。「インターホン押したらピー」って(笑)。(※つけました)

—— 最後に、SFC CLIPの読者に向けて一言お願いします。

なんかへんちくりんな奴が入ってきたなと感じると思うんですけど、何かしらでみなさんのお役に立てたら僕も嬉しいので、いつでも声をかけてください。

そして、夢の話を聞くのが本当に大好きなので、「こんな夢あるぞ!」っていうのを気軽に話してもらえたらめちゃくちゃ嬉しいです。よろしくお願いします。

—— 貴重なお話、ありがとうございました。

新しい環境に飛び込んだすしらーめん《りく》の今後に期待

大学受験をきっかけに考え方が変わりつつも、それでも軸をブレさせることなく進み続けるすしらーめん《りく》さんの強い想いを感じることができた。SFC生として、また一ファンとして、大学生YouTuberになった彼の活躍を楽しみにしたい。

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