プラごみ削減に「リターナブル容器」で20円引き 「レディバからブームを起こしたい!」瀬川さん(総4)ら塚原研プロジェクト
SFCのご飯処であるレディバードとタブリエで5月8日、プラスチックごみ削減の狙いで「リターナブル容器」の取り組みがスタートした。テイクアウト注文時に「リターナブル容器で!」とお願いすると全品が20円引きとなる。
「レディバードからブームを起こしたい!」と語る本プロジェクト塚原研究会の瀬川茉里さん(総4)、バーン杏雅愛(アナリア)さん(総3)、住友菜のはさん(総2)の3人に、きっかけから今後の展望までを伺った。
レディバ前で笑顔の3人(左から住友さん、瀬川さん、バーンさん)
塚原研究会で昨年9月から企画 返却率は100%!
—— 一ノ瀬友博教授が早速試しましたとも話すリターナブル容器。皆さんの活動を教えてください!
瀬川さん
「キャンパス全体をサステナブルに」と活動する塚原研の1つのプロジェクトとして、「食」という切り口から環境負荷を減らしていこうと進めているプロジェクトです。
私は、研究会に入った当初から食関連で環境問題に興味を持っていたのですが、ORFで発表する際に個人ではなくプロジェクトになったことがこの取り組みのきっかけです。2022年9月に5人で発足し、現在はそのうちの3人が卒業して、残った私たち2人に住友が加わり、3人で活動しています。
—— いわゆるデポジット制度という容器返却時の値引きではなく、予め値引きする仕組みなんですね!
元々は返却率を高めるために、返却時に20円キャッシュバックする制度を考えていました。ただ、「20円のためにレディバード前まで返却しに来てくれるか?」と考えた時に、「利用者は返却の手間を考えて返却しないのではないか」と考え、さらに20円をスタッフさんが渡しに行く手間も出てしまうことから、思い切って最初から20円引きとしました。
普及や返却率を不安視していたのですが、現在の返却率は100%。割合としてはテイクアウトの5-8割に活用してもらえており、1番多い日には1日25食分も使っていただきました。開始から2週間で104個販売でき、嬉しいです!
容器はMeglooさんを参考に きっかけはORFの発表
—— 容器を参考にしたというMegloo(メグルー)さんとのきっかけも教えてください!
瀬川さん
Meglooの土肥梨恵子さんがSFC出身で、ORFで私たちの発表を見て、声をかけてくれたことがきっかけです。
—— ORFがきっかけなんですね! その時はどんな発表をされていたのですか?
バーンさん
ポスター発表で、SFC生に行ったSFC内の食について感じていることやサステナブル食への意識のアンケート結果と、それを踏まえてリターナブル容器とベジタブルメニューの提案を行いました。
瀬川さん、バーンさんの2人は1年近くこの活動を行ってきたという
—— 住友さんがこの活動に興味を持ったきっかけも教えてください。
住友さん
元々食が環境に間接的に影響していることを知り、その分野に漠然とした興味がありました。ORFで塚原准教授のことを知り、このプロジェクトを見て「一緒に活動したい!」と思いました。
リターナブル容器の導入から1週間は、プロモーション期間としてレディバードの入り口に立って3人で宣伝をしていました。目の前で「使ってみます!」と言ってくれたり、友達がInstagramのストーリーに載せてくれたり、目に見えてフィードバックをもらえることが嬉しいです。
バーンさん
プロモーション期間は、食べてくれる人もいる一方で「あ、いらないです」と断られてしまうこともあり、半ば心が折れかけていました。
だからこそ、サブウェイの上でお昼を食べてた時に女子3人組がリターナブルの容器を持ってきて写真を撮ってくれたことが嬉しかったです。サブウェイというレディバードからは距離の遠い「返却するのが面倒」と考える人がいてもおかしくない場所まで持っていって「見た目が可愛い!」と選んでくれたことが嬉しかったです。
「ナッジ」を使った行動変容も視野 まずは環境作りを
—— 確かに丸っとした形で、可愛い容器ですよね。
瀬川さん
SFC生の環境意識に繋がって欲しいなとは思いつつも、まずは環境に良い行動をして欲しいとも思っています。
私は卒業プロジェクトとして「環境配慮行動の行動変容を起こす要因、要素は何か」を切り口に研究しようと思っていますが、必ずしも環境に良いということを伝えるだけでは行動に影響を及ぼすとは限りません。デザインや訴求の仕方を、この活動を通して段階的に実験的に行っていきたいです。
バーンさん
サステナブルな観点では「環境に良いモノを好んでもらうにはどうしたらいいのか」が1番の課題です。「環境に良いこと」というメッセージを全面に押し出すよりも、そのメッセージを伝えなくても買ってもらえるか、という視点も意識したいです。
瀬川さん
専門的な言葉で「ナッジ」という、人が意識せずともより良い行動を後押しできるような工夫を活用していきたいと思っています。過去にはメニューの名前に使う文言1つで人の行動変容を後押しした例もあるようです。だからこそ、私たちの取り組みにも「ナッジ」を使って行動変容を後押しできるのではと期待しています。
学生が卒業したら終わり、では広い意味のサステナブルになりません。私たちが始めたことではあるけど長く続いて欲しいし、それがSFCの当たり前になって欲しい。「SFC生は未来からの留学生。プラスチックごみが増え続けた10年後、20年後、世界はどんな姿なのだろう? 私たちにできることから始めよう」とコピーに書いたように、まずは、最先端のキャンパスにいる私たちSFC生がこれからの時代を率いていく人間として責任感のある行動を起こせるような環境作りをしていきたいです。
バーンさん
食に関してはコロナが落ち着いた今だからこそできることだと思います。「キャンパスにいけなかった」という時期があるからこそ、キャンパスを最大限使っている今が嬉しいです。
これからは意義の「プラスチックごみ削減」を伝えていきたい
—— レディバードと取り組もうと思った理由はありますか?
瀬川さん
一番はレディバードの店長が新しいことに意欲的だったことです。これまでも学生の「地産地消の野菜を使ってほしい」という要望を取り入れた経験があるなど、柔軟に応援してくれました。
バーンさん
逆に、店舗の方が導入を進めてくれた理由に、テイクアウト容器のコスト削減がありました。プラスチック高騰などの理由から、500円のテイクアウト料金に対して容器コストが50円かかっていたからこそ、Win-Winの関係として進められています。
レディバードの責任者の方に私たちの環境問題への想いを伝えるべく、春休み中から10回ほど打ち合わせを重ねてきました。ただ、責任者の方以外のスタッフさんとは話し合いの場を設けておらず、プロモーション期間に「プラスチックのレジ袋も一緒にどうぞ」とスタッフの方が勧めてしまい、購入者から戸惑いの声をいただきました。これからはスタッフさんに向けて、導入が始まった理由を伝えていけたらいいなと思います。
瀬川さん
もちろんお客さんであるSFC生にも意義が伝わらないと、他の行動が変わっていかないと思います。生きている長い時間の中でこのSFCのレディバードで買う瞬間だけでなくて、この容器を起点に「プラスチックを削減しよう!」「ゴミを分別しよう!」という意識に繋がるきっかけになったら嬉しいです。
住友さん
現状ではリターナブル容器が20円安いから買う人の方が多いですが、そういった私たちのメッセージが伝わるよう活動を広げられたらいいなと思っています。
瀬川さん
また、他にも回収場所を増やして、より快適に使っていただけるようにも改善したいです。
バーンさん
リターナブル容器はまだまだ鎌倉や渋谷でも実証実験が終わったばかりで日本では実例が少ないですが、ヨーロッパには普及しています。だからこそ、SFCだけに留まらず、むしろSFCからリターナブル容器の取り組みを広げていきたいです。
—— これから取り組んでいきたいことはありますか?
瀬川さん
現在は「リターナブル容器」をSFC中高にも導入しようと取り組んでいるほか、「ベジタリアンメニュー(以下、ベジメニュー)」の開発を行なっています。将来的にはリターナブルメニューとベジメニューでレディーバードからブームを起こしたいです。
6月末導入を目指し、現在試作中のベジメニュー・ビビンバ丼(提供写真)
—— ありがとうございました!
概要
当日21時までに返却Boxに返す仕組みで、未返却や紛失の場合は容器代を支払う。なお万一返却期限をすぎた場合でも翌日朝に返却できる。
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