授業オンライン化 アンケートで不安も 担当者「団結してあらゆる準備講じる」
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、授業のオンライン化が推進される春学期。誰もが初めての経験に期待や戸惑いを抱いている。SFC CLIP編集部では、SFCの関係者を対象に約1週間アンケートを実施し、彼らの声を大学当局にぶつけた。
集まった回答49件 学生は賛否両論
アンケートは日本語と英語で、20日から26日までの7日間、オンラインで実施。集まった回答は49件で、教員や保護者らからの回答もあった。
集まった意見・疑問は編集部で確認し、匿名化した上で総合政策学部/環境情報学部/政策・メディア研究科オンライン授業支援窓口に取材した。以下、寄せられた意見・質問とそれに対する窓口の回答・コメントを紹介する。
オンライン化について
寄せられた意見・疑問の中で一番多かったのはオンライン化の施策そのものに関する意見だ。「すべてオンラインでやりたいです!」といった肯定的なものから「するなら全ての授業をオンラインにして欲しいし、しないならはやくキャンパスに行って授業をうけたいです」といった細かな方針に意見するものもあった。
窓口の回答
「総合政策学部長、環境情報学部長、政策・メディア研究科委員長名で3月19日付けに発表したとおり、塾生および教職員の命と健康を第一と考え、4月30日以降も新型コロナウィルス感染症が収束していない事態に備え、状況が収束するまではキャンパスで活動する人数を可能な限り減らすことを目指します。これは、塾生や教員の移動を極力少なくする、キャンパスで人が密集しない環境を実現する、教室を使わざるをえない場合にはできるだけ広い教室を利用する、などの対策を取ることによって感染リスクを低減するためです。
オンライン化された授業が教授法として必ずしも最適ではないケースがあることやキャンパスでの交流が学生生活にとって重要であることは理解していますが、人命や健康に換えられるるものではありません。
一部、オンライン化が難しい授業があることも事実ですが、両学部・研究科は研究会や言語を含め、可能な限り授業をオンライン化すべく努力を続けています。
また、春学期の授業を秋学期に回せばよいという意見もありますが、これを行うことによって単位を取得することができなくなり、卒業や進級が遅れるといったことはあってはならないことだと考えています。
学生諸君は履修計画を立てる際に、シラバスを参照してオンキャンパスとオンラインの授業を適切に選択してください。また、充実した交流が行えるよう、ICTツールを使いこなすことを検討してください」
授業スタイルについて
オンライン授業で使うツールに関して、予備校や高校時代の自身の経験に基づいた提案も寄せられた。
窓口の回答
「慶應義塾大学はWebexというオンライン会議システムを契約しており、全教員・学生が使うことができます。今回のオンライン化では、その中のWebex Trainingというトレーニングに向いたシステムを使って授業を行うことを推奨しています。ただし、他のツールを使うことや録画したコンテンツを使うことも含めて創意工夫を凝らして最善の教授法を模索していくこととしています。
Webex Trainingを使った典型的な授業は、決められた曜日時限に学生と教員間で双方向のコミュニケーションを取りながら授業をすることを想定しています。そのため、同じ曜日時限の授業を複数履修することはできません。また、Webex Trainingには音声による会話はもちろんのことチャット、Poll、テストなど双方向コミュニケーションのための機能が備わっています。これらを使って学生の参加度や理解度を確認することができます」
また、教員からは、ギリシャで行われていたという哲学の議論を例に出し、オンラインとオンキャンパスを効率的に組み合わせる提案も行われた。
窓口の回答
「既に教員にはご依頼させていただいていますように、オンラインの場合はWebex Trainingの利用を推奨していますが教員の創意工夫は歓迎です。人命・健康第一という姿勢は変わりませんが、リスクを減らした上でできるだけ学習効果があがあるような教授法を模索していただけると幸いです」
将来に卒論を控える学部生からは、卒論の相談やグループワークがオンラインでうまくできるか不安の声が上がった。
窓口の回答
「教員側もいろいろなツールを使いながらサポートしていく予定です。担当教員とよく相談をするようにしてください」
オンキャンパスで行う授業について
合宿型で行っている授業は根本的にオンラインでは行えないが、必要な対策を講じてオンキャンパスで実施できないだろうかという研究員からの提案があった。
窓口の回答
「オンキャンパスで実施する授業については現在ガイドラインを作成しています。マスクの着用などを要請することになる予定です。オンキャンパスで授業をおこなう場合は、このガイドラインをご参照いただくようお願いいたします」
また、「SBC入門」など立地依存性が大きい授業も、オンラインでは行えないのではないかという疑問もあった。
窓口の回答
「SBC入門など一部の授業は合宿形式による授業が前提としています。しかし、社会情勢に鑑み宿泊を行わず通常授業形式、あるいは遠隔による授業に変更する可能性があります」
授業期間について
授業の開始が遅れ、春学期が12週間しかないことについても不安が寄せられた。
窓口の回答
「人命・健康を第一としながら、できるだけ学習効果が得られるように検討しています。ご存知の様に状況が刻一刻と変わっている状況です。できるだけ早く対応を決定し、連絡できるように努力していきます。
また、授業時間については、課題を多く出して評価を返すなど、十分な学習効果が得られるように模索していく予定です」
履修者選抜・クラス分けについて
新入生からは、履修言語やデータサイエンスのクラス分けについての質問があった。
窓口の回答
「履修希望言語の申請、英語のクラス分けについては新入生お知らせシステムをご確認ください。データサイエンスについても、自信のある人は今期に限りDS1から受講可能です。ただし、高校の数学に自信のない人はデータサイエンス基礎をまず受講することを推奨します」
シラバスについて
どの授業がオンラインでどの授業がオンキャンパスなのかわからない、オンライン授業とオンキャンパス授業が連続するとき移動時間の確保が問題になる、と言ったシラバスに関する不安も寄せられた。
窓口の回答
「現在、教員側でシラバスを再入力しています。公開時間に合わないものも多少あるかもしれませんが、できる限り「オンライン」「オンキャンパス」「最終回のみオンキャンパス(授業内試験を想定)」のマークが付く予定です。
シラバスは4/1公開予定です」
受講環境について
自宅の通信環境を心配し、仮に受講できなかった場合のためにアーカイブやキャンパスで受講する選択肢を求める声があった。
窓口の回答
「総合政策学部長、環境情報学部長、政策・メディア研究科委員長、湘南藤沢ITC所長名で3/25にお知らせしたとおり、オンライン授業の受講に向けた準備をお願いします。
ただし、通信環境が整備できない場合はキャンパスにきて、CNSに接続してからオンライン授業を受講することを妨げるものではありません。これまで通りPCの貸し出しも行います」
また、海外から授業を受けることを想定している学生もいた。
窓口の回答
「完全オンラインの授業については受講する場所は問いません。ただし、通信環境の悪い場所などは避けてください」
保護者からは、パソコンをいつまでに用意すればよいのかという不安が寄せられた。
窓口の回答
「オンラインの授業は4/30の授業開始初日から実施されます。また、それに先立って講習会などを実施していく予定です。4/30の前までに講習会などに参加するためには4月半ばくらいまでにはPCや通信環境などを整備していただく必要があります」
その他にもさまざまな質問が
ここからは寄せられた質問などと、それに対する個々の窓口からの回答を原文ママで紹介していく。
疑問
「私の周りに體育會生が複数人います。體育會は学校に行かない時間帯は練習や雑務に出なければいけない等の決まりがあります。もしオンライン授業になった場合、出欠をどのようなシステムで取るのか、または取らないのかは存じ上げないのですが、履修しているのにも拘らず練習に出なければいけない為結果的に欠席になってしまうのではないかという疑問がございます。個人的には出欠を取らないという事にしてしまうと配信を見なくなる可能性があると考える為、配信の最中にsfcsfsやその配信媒体のコメント欄で学籍何号を送信することが出来たら良いのかなあと思いました。安直な考えだったら申し訳ないです。。対面だからこそ面白い授業等もあるので残念ですが少しオンライン授業にワクワクしているのも正直あります。お体に気をつけてください。よろしくお願いします」
窓口からの回答
「オンラインといっても授業が中止になるわけではなく、多くの授業では決まった曜日時限に遠隔トレーニングシステムであるWebex Trainingを使って学生と教員が双方向でコミュニケーションを取りながら授業を進めることが想定されています。これはキャンパスの教室で授業を受けているのと同じことだと捉えてください。オンキャンパスでの授業とほぼ同じ様に参加姿勢などを評価できる予定です」
疑問
「授業が始まる前に履修申告がありますが、他学部の授業をとることはできないのでしょうか」
窓口からの回答
「通常通り、他学部の授業を履修することも可能です」
意見
「遠隔授業は賛成です。春学期にこだわることなく、遠隔授業を取り入れていくべきだと思います」
窓口からの回答
「SFCでは継続してオンライン講義を含めた新たな教授法の開発に努めていく所存です」
意見
「I think remote learning is a very great idea. It would be better if all the classes can keep doing remote learning even the on-campus learning is available for the whole next semester, since the situation of the Coronavirus remains unstable and the Olympics may be held in July.」
窓口からの回答
「SFC will continue to evaluate and consider the effects of holding classes online.」
疑問
「看護医療学部ではオンライン授業は行わないのでしょうか?」
窓口からの回答
「オンラインやオンデマンドでの授業開講も現在検討しています」
不安
「体育に授業に関して、その年度の受講に必須となる学生健康診断が中止になっていますが、健康診断の実施までは体育は受講できないのでしょうか?SFC生の留年に一番直結しやすい問題かと思います。
もし受講できるような措置になるのであれば、早めに告知しないと、保健センターとしては「必要な人は個別に病院で行う」よう案内しているため、感染リスクの高い病院へ学生を誘導することに繋がりかねません」
窓口からの回答
「対応を現在検討中です。
なお保健管理センターWebサイトに掲載している内容は、かかりつけ医の指示等で健康診断を受ける必要がある学生への案内で、体育への授業参加のために外部機関での健康診断受診を推奨するものでは一切ありません。 」
不安
「通信制限や、建築の授業の質、教授との相談や個別の時間の取れなさ 絶対に感染したくない」
窓口からの回答
「今回のオンライン授業化の目的は、キャンパスに来る人数を減らし、交通機関やキャンパスで人が密集しない環境をつくることです。ご理解をお願いします。授業については科目毎に創意工夫を凝らしていく予定です」
疑問
「授業オンライン化とは関係がないが、奨学金の結果の張り出しがオンラインでできないか気になる。3/25現在、僕の持つ情報では奨学金申請は従来通りの日程で行うため、申請書類を提出するために学校に行く必要がある。書類についてはしょうがないとして、授業等の用事がないにも関わらず、結果を見るためだけに学校に向かわせるのは、学生の外出を促しているようにも捉えられかねない。
多くの人は関係がないことかもしれないが、少なからず苦労する人はいるだろう。
これを機にアナログな掲示板は撤廃して全てオンライン上で行うようにできないだろうか(ついでに印鑑の廃止も)」
窓口からの回答
「今後、奨学金の選考結果は合格者に対してのみkeio.jpのメッセージ機能を用いて通知する予定です」
提案
「学内の飲食店等の施設(学食、購買、ローソン、サブウェイ等)は原則授業がオンライン化することに伴って甚大な被害を受けることが考えられる。そこで、特設科目/研究会/キャンパス等で、学内の諸施設に対して「経済対策」をしてみてはどうか。実在の店舗を通じた対策は学生としても学びが大きい上、キャンパスに対して「政策」を試せるのは面白いと思うのだが、、如何だろうか」
窓口からの回答
「学内の飲食店等の施設の経営状態はキャンパスでは把握していません。
現在のところ授業で取り上げる予定はありませんが、学生が自主的にキャンパスのために活動することを妨げるものではありません」
担当者「団結してSFCらしく乗り越えていきたい」
今回取材に応じた窓口の担当者は、寄せられた意見・疑問を見て次のようにコメントした。
「アンケート結果をみて、改めて学生の不安を認識するとともに、前向きな意見をみて心強くを感じました。
現在、キャンパス全体が手探りで準備を進めている状態です。春学期に良い教育プログラムを実施するためには学生諸君の協力が不可欠になります。こういう時だからこそ、団結してSFCらしく乗り越えていきたいと思います。
オンライン授業支援窓口では、引き続き学生諸君の不安を取り除くために、あらゆる準備を講じていく予定です。よい提案があれば遠慮なくお伝え下さい。
また今回、学生団体であるSFC CLIPがこのようなアンケートを実施し、学生の不安や意見・質問を取りまとめてくれたことはオンライン授業支援窓口にとっては非常にありがたいものでした。この場を借りてお礼を申し上げます」
今後、オンライン授業に関するサポートはサポートページで受けられるほか、必要であれば窓口([email protected])まで直接問い合わせることもできる。
SFC CLIP編集部では、今後も授業のオンライン化をはじめとしたSFCでの取り組みについて取材を続けていく。