シラバスだけではわからない研究会の実情を、SFC CLIP編集部が実際に研究会に赴いて調査する「CLIP流研究会シラバス」。第14回は、「医食農同源社会の実現」に取り組む渡辺賢治研究会(以下、渡辺研)を取材した。


 「病気を治療するのも、日常の食事も、ともに健康に生活していくには欠かせないもので、源は同じである」。このような考え方を、漢方医学では「医食同源」と呼んでいる。その「医」と「食」を支えているのが農業であり、生薬や食材を栽培する「農」も同じ源であるという考え方を、「医食農同源」と呼ぶ。

 漢方は全世界から注目されており、近年急速に需要が延びている。そのため、生薬資源の枯渇が懸念されている。高齢化社会を迎えた日本も例外ではなく、漢方の需要は多い。しかし、日本の生薬資源の9割は海外からの輸入に頼っているのが現状である。こうした状況の中、いかにして医食農同源の社会を実現するのかを渡辺研では考えている。

研究会5渡辺賢治環境情報学部教授



 授業では渡辺研が担っているプロジェクトに関して、講義を聞くほか、グループワークをしたり、プロジェクトの企画案をまとめたりする。

 渡辺研では、現在神奈川県から委託されている県西地域開発推進プロジェクトを実行している。県西地域開発推進プロジェクトとは、神奈川県西部地域の多彩な地域資源を生かしながら、未病を治し、地域を活性化するプロジェクトのこと。この日は、プロジェクトに関係する問題、高齢化社会や介護、医療の現状についての講義が行われた。

 漢方に親しんでもらい、知名度を上げようというプロジェクトも同時に行われている。まずはSFC生に漢方に親しんでもらうべく、レディバードカフェとコラボし、薬膳丼の提供を企画している。この日は、薬膳丼のメニューについて取り決めていた。

研究会2グループワークでプロジェクトの企画を練る



 「学生は、いろいろな可能性を秘めている。また学生にイベントやプロジェクトを企画させると、とても成長する」と渡辺賢治環境情報学部教授は語る。1つの研究会で2つものプロジェクトを同時に進める理由は、ここにある。

研究会4取材に答えてくださった渡辺真子さん



 渡辺教授の印象について、履修者の渡辺真子さん(総2)は、「SFCの教授であり、漢方医の先生であり、とても偉い方にも関わらず、気取っていない、おおらかな教授です」と語る。

 授業中も、渡辺教授は笑顔を見せながらプロジェクトの企画を、学生と一緒に考えていた。研究会も明るく、アットホームな雰囲気だった。

研究会1笑顔で企画を考える渡辺教授



 学生想いの言葉を多く語ってくださった渡辺教授。「日本の将来は、とても暗い。これから超超高齢化の時代が日本にやってくるだろう。この問題を解決し、社会を良くするには、長い時間を要する。だからこそ、学生には今からこの問題について考えて、取り組んで欲しい」と語った。

研究会3取材を受けてくださった渡辺研のみなさま