新連載「ボクらの就活青写真」では、SFC生の就職活動を様々な角度から取り上げる。これから就活に臨むSFC生の参考となることはもちろん、既に就活を終えた4年生や卒業生にとっても、改めて就活のあり方について考え直す機会となれば幸いである。

 第1回目は、学事CDP(進路・就職)担当主任の越浦朗氏より、就活の現状について話を聞いた。


 4日(水)、2016年卒業予定の学生を対象とした「就活準備のためのスタートアップガイダンス」がSFCで開催された。依然多くの4年生、修士2年生が就活を続けている中ではあるが、2016年卒の就活が事実上始まった。

 終身雇用は既に過去の話。生涯を通じて、新卒として入った会社に勤め続ける人は、いまや少数派である。一方で、転職が一般化した現在でも、転職活動は自らの職歴の中で身につけたスキルを踏まえて行われる。それを考慮すると、やはり就活が仕事人としての自分の一生を大きく左右すると考えて間違いないだろう。

 SFCは就職市場において実に多様な評価を下されてきた。「未来を創る大学」から「プータロー製造工場」まで、メディアから数々の異名を頂いた。もっとも、近年では落ち着いてきているように感じられるが、SFCに対する様々な噂に惑わされた方も多いのではないだろうか。(弊部記事参照: https://sfcclip.net/series2010040901)

 そこで、今回は学事CDP担当主任の越浦朗氏に、昨今のSFC生の就活事情、及び納得のいく就活をするための心構えについて話を聞いた。

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IT企業に強み SFC生の就職状況は例年通り


 昨年12月から始まった2015年卒の就活ですが、現時点での内定率は昨年度とほぼ同程度でしょう。具体的な数字はまだ出ていませんが、体感値では昨年度と大きな差はないように感じられます。例年義塾全体で、卒業までに就職先が決定した学生のうち、8割程度は6月までに進路が決まる傾向があり、今年度も同程度になるかと思われます。
 近年のSFCの就職状況は、安定していると感じます。景気の波にもそれほど左右されず、飛び抜けて良い年も、悪い年もないという印象です。
 就職先業界に目を向けると、IT系に強い傾向があります。三田の各学部は、金融系に進む学生が比較的多いですね。それに対して、SFCでは情報通信関連の企業に進む学生が最も多く、キャンパスの個性が出ていると感じます。
 SFCで学んでいると日常的にPCに触れる機会が多いのはもちろん、簡単なプログラミングをこなせる学生も多いと感じます。授業中に学生がPowerPointを使って発表するのはSFCでは良く見られる光景ですが、PowerPointはむしろ社会に出てから活用するツールで、このスキルを先取りできるのは大きな利点です。そうした環境のため、基礎的なITリテラシーを自然と身につけることができています。それが、この就職状況に繋がっていると考えられます。

高いコミュニケーション能力と、高すぎる上昇志向


 ITリテラシーに加え、コミュニケーション能力も、就活で活きるSFC生の強みだと思います。グループワークなどで他の学生と協働する機会が多いため、周囲を巻き込むのがとても上手く、チームで仕事をすることが得意な人が多い。また、多くの授業において、学生の側から発信する機会が設けられているためか、話を簡潔にまとめて伝えるのも非常に上手い。このような能力は、企業で仕事をする上でとても重要です。
 そして、研究会の活動が活発なため、研究熱心な学生が多いのも特徴的です。企業は、学生の現時点での能力よりも、成長への可能性に期待を寄せています。ですから、学びに貪欲であることは高く評価されます。その学びの具体例が、SFC生の「問題発見解決力」だと思います。企業訪問の際、人事担当者から求める人材として「問題発見解決力を持った人」ということをよく伺います。このSFCの理念と企業・社会のニーズが一致していることも、SFCの強みのひとつだと感じます。
 これらのSFC生の特性に目をつけ、毎年SFCから多くの学生を採用する企業もあります。その一方で、SFC生の積極性が裏目に出てしまうことも考えられます。つまり、能力は高いものの、上昇志向が強すぎて、会社の器に収まらない、と。車に例えると、スーパーカーは乗用車よりも高性能ですが、日常的に乗り回す分には使い勝手が悪いですよね。能力が十分でも、場合によっては強すぎる上昇志向や自己主張は、敬遠されることもあるかもしれません。
 また、SFCは外から見るとやっていることがわかりにくい学部です。「文学部出身」や「経済学部出身」なら、その人が学生時代に勉強したことも想像しやすいですが、「総合政策学部出身」「環境情報学部出身」と言われても、外部の人にとってはいま一歩ピンと来ません。だからこそ、自分の研究内容についてわかりやすく説明できることは、とても重要でしょうね。
 

学生のココに着目! 「気づきを与える」サポートを


 CDPオフィスでは、就職支援の一環としてESの添削や個別模擬面接を行っています。2-3月の繁忙期で1日に5件ほどの個別相談予約がありますが、もっと多くの学生に利用してもらいたいと思っています。自分の本音を伝えることの恥ずかしさは当然理解できますが、やはり客観的な意見を聴くことは欠かせません。
 学生の相談に乗る際は、「気づきを与える」ことを目的としており、具体的に面接で話す内容を手取り足取り教えることはありません。自分たちの役割は問題点に気づかせる事で、その問題をどう解決するかは、ぜひとも学生自身で考えてほしいところです。
 その際、特に注視するのは、「自分の強み」と「志望企業の特徴」を理解した上で、「自分の強みを生かして企業でどう活躍するのか」をアピールできているかという点です。面接では、「相手に自分を採用するメリットを感じさせることができるか」が合否を分けるひとつの大きな要因です。そのため、自分と企業の双方を良く理解し、適性があることを伝える必要があるのです。
 また、話の内容以外にも、姿勢や表情、話し方など、その学生の第一印象に繋がることに対してもアドバイスしています。短時間の面接では、パッと見のイメージも大切なのです。

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いろんな人と接する充実した学生生活を


 これから就活に臨むSFC生のみなさんには、ぜひとも充実した学生生活を送ってほしいと願っています。卒業生へのアンケートの結果からも、「充実した学生生活を送れた」と考えている学生の方が、就活でも満足のいく結果を出せた人の割合が多いことがわかっています。
 具体的に言えば、とにかく色々な人と接してほしい。学内の友人や先輩後輩はもちろん、年の離れた方とも多く語り合う機会を持つことで、仕事をする上で大切な人間関係の機微を学んでください。また、興味・引き出しを多く持ち、たくさんの人から様々なことを学びましょう。
 最近では海外に行く学生も多いですが、海外に行ったら、ぜひ客観的に日本を見てみてください。そうすることで、日本の社会や企業への理解もより深まると思います。

 越浦氏の「企業が期待するのは、学生の能力よりも成長可能性」という言葉が胸に刺さった。学生のうちに様々なスキルを身につけることは、当然重要である。一方で、能力を高めるだけではなく、人間性などの自分が生まれ持った個性に目を向けることも必要だ。その意味で、就活はいままでの人生で最も深く、自分と向き合う機会なのかもしれない。