夏休みで普段は人が少ないキャンパスだが、あちこちで活動しているカラフルな服を着た少年少女たちを見つけた。彼らは何をしにこのキャンパスを訪れたのだろう? 気になった人も多いはずだ。そこで今回の特捜CLIPでは、彼らに話を聞いてみた。

子どもたちのためのITの学び場

青い服を着たお兄さんに話を聞いてみましょう!


— 皆さんは何をされているんですか?

私たちはLife is Tech! といって、子供たちと一緒にITキャンプをしています。Life is Tech! は、小学生から高校生を対象としたプログラミング・ITのキャンプやスクールなどのプログラムを運営しています。

そう教えてくれたのは、ライフイズテック株式会社取締役副社長である小森勇太さん。カラフルな服を着た人はLife is Tech! 関係者とそのプログラムの参加者でした。Life is Tech! についてさらに小森さんに聞いてみましょう。


— ITについてどのようなこと教えているのですか?

例えば、iPhoneのアプリを開発するなど、最先端のITのことを子どもたちが学んでいます。現在は13のコースがあるんですが、iPhoneやAndroidアプリの開発、映像編集、あとはデジタルミュージックやメディアアートに取り組んでいます。


— たくさんの子どもたちが参加されていますね。

今回は約140人が参加しています。慶應SFCだけでなく東大や京大、九州大、東北大など、全国の大学で、一斉にやっています。全体では1400人ぐらいです。2011年に始まって、今年で4年目になります。3-8日のコースがあって、泊まり又は通いという形で集まっています。


— もとからプログラミングができる子どもたちばかりなんですか?

そんなことないんですよ、初めての子が8割くらいです。


楽しいと思える学び ー大学生による密着指導

— え!? 初めての子どもに教えるのは大変ではないですか?

もちろん大変なんですが、Life is Tech! では大学生が子どもたちにつきっきりでレクチャーしているんです。その大学生も、全員が最初からITに詳しいというわけではなく、これから勉強していきたいと考えている人もいます。ただし、コミュニケーション能力が高いかどうか、子供が好きかということを重視しています。SFCの人もいますよ。

— 子どもたちに教えるうえで、どのような姿勢を大切にしていますか?

ただ教えるだけではなくて、子どもたちが自発的に学べるように促すという感じですかね。勉強というのは、自発的に、自分でやろうと思わないと意味がないんですよね。例えば、受験勉強は家庭でも学校でも言われて、小さいころからやらされるものですよね。でもITは新しい技術で、義務教育としては学ばなくてもいいわけですよ。だから子どもたちが自ら学ぼうと思わないと意味がない。なのでそういう環境をどうやって作るかが重要になってきます。



 いまの時代、インターネットで検索したらある意味なんでも学べるわけですよね。昔は周りで一番日本史のことを知っているのは学校の日本史の先生だった。でも、今だったらWikipediaのほうが日本史について詳しかったりするわけですよ。つまり、教育における先生の価値や役割も変化しつつあるわけです。


— では、今求められている先生の役割は何でしょうか?

キュレーションという言葉がありますよね。これから必要になってくるのは、溢れている情報の中から良い情報を見分けられるような、ガイドのような役割なんです。そのような役割を僕たちやメンターの大学生たちも目指しています。どうやったら子どもたちが学びたくなるかという根本を作れるように僕らはやっています。そのような教育の新しい価値を実践できるように。

— 最後に、子どもたちに向けてメッセージをお願いします。

ITというのは、英語と同じぐらいこれから重要になってきていると僕らは考えています。英語が使えると、いろんな人とコミュニケーションがとれるし、視野も広がっていろんな可能性が広がりますよね。ITも使い方をちゃんと学べば、本人の可能性がとても広がるし、これからのどのビジネスにも必要な力で、みんなが学ぶ価値のあることだと思っています。


「自分で作る」喜び —参加者たちの声

女の子も多いのも特徴だ。

今回、Life is Tech! の参加者2人にも話を聞いてみました。

しゅうくん(小学5年生)

— Life is Tech!を知ったきっかけはなんですか。

お父さんの友達がLife is Tech! を知っていて、それで一日無料体験に行ったのがきっかけです。そのとき初めて自分の手でアプリを作って、動かすという体験をして、それがすごく楽しかったんです。今回で4回目の参加です。


— 何度も参加してみてどうでしたか?

どんどん内容が高度になっていきました。1回目はコードを書かないで時計アプリを作るということをやっていたんですが、今日は自分で一からオリジナルのアプリを作りました。同じ班の人たちと仲良くなって、たくさん友達もできました。

ありすさん(高校1年生)

— Life is Tech!を知ったきっかけはなんですか?

Life is Tech!で指定校だけの生徒が参加するキャンプがあって、そこに私の通っている学校も入っていたのでそこから知りました。


— Life is Tech! の活動の中で特におもしろかったのは何ですか?

泊まりでアクティビティをよくやるんですけど、その中で人狼ゲームとか謎解きをやるのがすごく楽しいです。また、一昨年のクリスマスキャンプも印象に残っています。まだ人数が少ない時期で、遠くのコテージを貸しきってコテージにみんなで泊まったことがあって、それが楽しかったです。



 小森さんは「自分から学ぶ」ということの大切さに強調していた。時代とともに変容していく学びのあり方や意義について考えることは、私たちSFC生にとっても重要だ。