12(日)、慶應義塾大学佛教青年会館(日吉キャンパス)で「『わ』―和食と日本酒を楽しむ会―」が開かれた。家庭の食卓から薄れつつある和食を好きになり、日常に和食を取り入れてもらいたい、と玉村雅敏研究会のプロジェクトチーム山田真輝さん(総3)が主催。40人を超える学生が和食料理や日本酒に舌鼓を打った。

テーブルにおいしそうな和食が並ぶ。 テーブルにおいしそうな和食が並ぶ。

和食をもっと誇りに 参加者がワークショップ

「和食は、いただきます・ごちそうさまといった礼儀作法や、お祭や正月といった伝統的な行事も含めて『和食文化』としてユネスコ無形文化遺産登録されました。しかし、『和食』自体の具体的な定義はされていません」と話す山田さん。イベントの序盤では「和食とは何か?」というところに焦点を当てたワークショップを開いた。

山田さんは「天ぷらも、ポルトガルから入ってきたからこそ天ぷらという日本文化ができた。一概にどの時代から和食というのかは様々な議論がある」と言う。

4~5人で一組に分かれ「各々が考える和食とはなにか」についてのブレインストーミングがなされ、参加者は「和食」への考えを深めた。

ワークショップで「和食」について考えを深める参加者。 ワークショップで「和食」について考えを深める参加者。

おばあちゃんの味を再現 日本酒も並ぶ立食パーティー

ワークショップに続けて、立食パーティーが開かれた。テーブルに色とりどりの和食が並び、参加者は日本酒を片手にパーティーを楽しんだ。このパーティーでは体全体を使って和食を「美味しい」や「もっと日常の中でも食べたい」と無意識的に感じてほしいと山田さんは言う。「WSでは頭を使って知的に和食との向き合い方を感じてもらった。そのあとのパーティーでは頭・心・体を使っていろんな人と和食を楽しむことで美味しいと感じてほしい」。

約40人の学生が和食を通して交流を深めた。 約40人の学生が和食を通して交流を深めた。

コンセプトは「おばあちゃんの味」。和食と言っても料亭で出されるような「懐石料理」ではなく、筑前煮やほうれん草のおひたしなど、どこか親しみを感じる和の要素を取り入れた家庭料理が並んだ。おばあちゃんの味なら日常でも身近に取り入れることができる。

また、日本酒にもこだわった。今回は生産地や、材料、価格帯の異なる日本酒を7種類準備。食とのマッチングや、日本酒同士の違いを味わい、話し合いながら、和をもっと身近に楽しんでほしいと工夫した。

「おばあちゃんの味」にこだわった和食。 「おばあちゃんの味」にこだわった和食。

五感で和を感じられる空間に

中心メンバーの一人である熊谷文音さん(環2)はパーティの空間作りを重視し、見た目や音にも工夫をこらした。「日常っぽさ」から外れないようにシンプルな食器を選び、和な感じを前面に出さないジブリジャズなど、和風モダンを意識したBGMも用意。季節感を出せるようにあじさいを飾った。「大学生がすっと入れるような空間を目指した」という。

参加者による「和を取り入れたファッション」も今回のイベントの特徴だ。参加者は和服や下駄など思い思いのファッションで参加。参加者の福元明美さん(総1)は「いろんな人と和食を食べたり、和服を楽しんだりすることで会話が弾み、食も楽しむことができた」と満足げに語った。

当日の様子を撮影したコンセプトムービー(山田さんより提供)

和に関する行動意識を調査

イベントを開いた玉村研はソーシャルマーケティングを研究している。今回は日本に根付いている和食の継承に着目した。どうしたら若者が和食を好きになるのか。メンバーの永松萌美さん(総4)は今回のワークショップや料理などのコンテンツの中でどれが一番参加者を和食に惹きつけたのか、アンケート調査しているという。「このイベントを通じて進んで和食を取り入れるようになったか、参加者の意識の変化を調査したい」と意気込みを見せた。

本イベントを主催した山田さん 本イベントを主催した山田さん

もっと和が選択できるように

「和食が家庭の中から減っていると言われても人は共感しづらい。楽しいという感情があることで、もっと食べたい・作りたいなどのポジティブな感情が作り出される」と山田さん。

和食文化の保護や継承は社会的にも注目されているが、具体的で有効的な手法が確立しづらい。今後も和が自然に選択できるような感情を作り出し、生活に馴染んだ形の和食のあり方を探求していく必要がある。まずは、和食を美味しそうに食べているイメージムービーを作成し、ポジティブなイメージをつけることで和食を選択するきっかけを提供したいと考えている。

玉村研究会のみなさん 玉村研究会のみなさん

和の要素を取り入れたイベントは増えてきているが、今回のイベントでは日常に根付いた気取らない和に注目した。普段から接しているように思えても、実は和に触れる機会は少なくなっているのが現実だ。参加者にとっても新しい発見を多く感じられる良い機会となったに違いない。