SFC Open Research Forum 2006の2日目、23日(木)15:00-16:30、三菱ビル10階グランドにてパネルディスカッション「進む宇宙利用と宇宙活動法」が開催された。


メンバー
基調講演:
河村建一氏(衆議院議員河村建夫公設第一秘書 慶應SFC研究所上席所員)
パネリスト:
池本多賀史氏(News Lab Inc.取締役会長 初代三菱電機(株)宇宙開発事業部長)
神山洋一氏(三菱商事(株)宇宙システムユニットマネージャー)
佐藤雅彦氏(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 総務部 法務課長)
司会:
青木節子(慶應義塾大学総合政策学部教授)

ORF2006

宇宙基本法とは、日本が何を目的として、どのような宇宙開発を行うべきかという指針を明らかにし、その活動の中で政府や自治体がどういった責任を負うのかを定めることを意図した法律のことである。現在、与党では本法案の策定に向けたプロジェクトチームが結成され、議員立法に法案提出が目指されている。
 日本のこれまでの宇宙開発は、最先端の技術開発のみに傾注し、「何のための宇宙開発なのか?」という肝心な部分が曖昧にされてきた。他の宇宙活動国を見れば、必ずしも宇宙先進国といえないような国も、防衛・外交・経済など、一定の指針の下で国家の戦略ツールとして宇宙開発を行っている。
 セッションはまず、河村健一氏の基調講演にはじまり、宇宙基本法の概要説明のあと、池本多賀史氏、神山洋一氏、佐藤雅彦氏の順に各パネリストが「日本が平和国家としてどのように宇宙開発を行うべきか」について法制度の限界もふまえて、意見を述べた。ディスカッションは白熱したものとなり、その後の質疑応答は終了予定時間を30分以上も延長して行われ、最後は青木節子教授の感謝の言葉でセッションは終幕となった。
【各パネリストの発言内容要旨】
「河村建一氏」
●日本の宇宙開発が目的を見失っている。ミッションが無いまま宇宙開発の意義がなくなってきているのではないか。
●宇宙基本法は基本法としては珍しく議員立法である。(議員立法での成立は全体の約2割)まさしく政治の要求として出された法案といえる。
●基本理念として、ハヤブサに代表される最先端技術はそのまま推し進める。また、技術安全保障の観点からも危険な状況にある宇宙開発産業を守ること。国民の利益に資する開発であること。中国に代表される外交ツールとしての宇宙開発という認識が大切。
●SFCの上席所員としての発表、公的な立場での発表ではない。しかし、大枠としては正しい方向性であるはず。今後、マスコミなどの情報を参照する際に、センセーショナルなものに惑わされないように、日本が名誉ある平和国家としてどのような宇宙開発を行っていくのかという方向性を示すべく、できる限り早い国会
への法案提出を。
「池本多賀史氏」
●法律はその時代の声を反映するものであり、そうした視点から、対処法という色合いを濃くするのか、基本法として人類への貢献を考えるべきか。今の時代の声は安全・安心な世界の実現という要請、産業界からの人材に対する要請、科学技術の振興。特に前2者の必要性が高い。問題点への対処に力点を置いた法律を目指す。
●基本的には、基本法の内容はどこかの官庁に内容を頼る。しかし今回は議員だけで作ることを決意、役所はまったく入っていない。
●国防だけではなく、すべての分野で宇宙を利用できるようにするため、今後の宇宙活動法の基盤として宇宙基本法が必要。
「神山洋一氏」
●民間から見た宇宙ビジネスとは、宇宙資源開発ビジネスなのではないか。日本は手段の開発段階にとどまっており、方向感覚を 失った開発を国として修正することが必要である。
●日本の宇宙産業界がマーケットに衛星、ロケットを出して行くためには、開発の部分に解して国が援助を行うことが不可欠。
●宇宙を科学技術政策の束縛から解くためにも、宇宙基本法は必要である。
「佐藤雅彦氏」
●基本法の成立は宇宙関係者の悲願であり、今までのように、宇宙政策の成果が国益に反映されない状況を改善できるはず。
●研究開発衛星でないことの立証責任が日本側にあるとなれば、詳細な解説が必要で、研究開発内容の漏洩も危惧される。
●報道ではハードパワー的側面が書かれることが多いが、国際社会で信頼される国を作るべきで、むしろソフトパワー的側面を重視すべき。たとえば、防災などへの衛星の利用など。
 最後に、青木節子教授が「宇宙法が平和国家としての日本、そして世界の繁栄のためになることを祈っています」とコメントしてセッションは終了。その後もゲスト、聴衆者同士での談話が行われ、訪れた人々の関心の高さがうかがえた。