全塾協議会事務局長選挙を行う選挙管理委員会(以下選管)は18日(月)、公式Twitterアカウントで「全塾協議会事務局選挙に於ける不正についての報告書」を公開した。伊藤陣営による不正があったことを調査団が認定したにも関わらず、開票は通常通り行われ、伊藤・諸田ペアが当選した。

公式Twitterアカウントでの発表


 全塾協議会事務局長の選挙では、不正投票疑惑があり、弊部でもその情報を伝えてきた。


 18日(月)、選管は公式Twitterアカウントを通じて、調査団の報告を含んだ「全塾協議会事務局選挙に於ける不正についての報告書」を公開した。この報告書は全塾協議会で配布された資料を抜粋、関係者の名前等を伏せるなどした資料だ。
 なお、この報告書は公式Webサイトでは2月22日現在、まだ公開されていない。

事情聴取に対し、事務局員は不正投票を否認


 報告書によると、調査団は1月18日、疑惑の録音音声に含まれていた事務局員3人に事情聴取を行った。3人とも不正投票については否定。うち1人は、投票用紙への記入を行ったと証言したが、残る2人は記入も否定しており、事実ははっきりしない。

 事務局員の1人は、投票箱を開ける事ができ、かつ投票用紙を所持していた。この事務局員が他2人の事務局員に対し、投票用紙の伊藤氏の欄へ丸印を記入するよう指示している様子が、録音音声に残っていた。以下は、録音音声から聞き取ることができる発言の抜粋である。

「紙追加お願いしまーす」
「やばい。この黙々とした暇つぶし見てるとなんか笑えてくるわ。恐ろしい暇つぶしだわー」
「ブラック企業、完全にブラック企業」
「数えたら400枚ぴったりあるか見て」
「何票入れ替えたっけ」
「三田で100足してるわ」


 記入を指示した理由について、この事務局員は「未記入の投票用紙が、白票と間違って混入することを防ぐ目的だった」と話す。その中で「遊び」として、400枚ほどの投票用紙に伊藤氏側へ記入するよう指示したという。この400枚はその後自宅のシュレッダーで処分したという。

投票されていないだけで、白票だと間違って混入した時分からなくなる。なので(※別の二人に)適当に丸つけさせて徐々に処理を。もう切って余っているもの(※投票用紙)を処分するために何か記入して処理をする。その一つとして、遊びとしてうちの陣営(※伊藤陣営)に丸つけた。…(中略)…足そうと思えば足せた状態だが、本当に足したという事実は、たぶん、というか僕はない。
(事情聴取での編集部員の証言より。※は編集部注釈)


 指示されたという事務局員の1人は、投票用紙に記入したことを否定した。五目並べのようなゲームをしていたなど、投票用紙ではない別の紙を使って暇つぶしを行っていたと証言した。
 さらに、もう1人の事務局員も、投票用紙への記入を否認。散らばっていた白票があったため、集めて何枚程度あるかの確認のみを行ったと発言した。

筆跡が酷似した票、同一インクによる票


 報告書は、調査団が1月21日に実施した三田キャンパスにおける開票済み票調査についても言及している。不正疑惑の情報が入る以前の12月7日の開票時、筆跡が酷似した票が重なっていた場面も確認していたという。
 調査の結果、同一のインクで書かれた上、筆跡の酷似した票が2組、計78票確認され、いずれも伊藤陣営への投票だったという。
 しかしながら、調査は視認によるものにとどまっている。調査団は、票の調査について補助的な証拠として扱うとも付記しており、事実関係がはっきりしないままだ。
…(中略)…筆跡鑑定やインクの鑑定等を行なっておらず、明確な証拠とは言い難い。しかしながら、音声ファイルや内部告発者の証言、調査団のヒアリングに対しての不正疑惑のある事務局員の返答の曖昧さ等の各種証拠を補助するものとして有効であると考えられる。
(選挙管理委員会の報告書より)


不正認定されるも、そのまま開票…伊藤氏の当選決定


 これら2つの調査結果を踏まえ、調査団は1月22日の全塾協議会で不正の認定を上部7団体に報告。事務局員への事情聴取での曖昧な発言や音声ファイル、酷似した票の発見によって、不正が存在したと判断した。上部7団体はこれを追認し、事務局員の不正が認定された。
 伊藤氏は、「不正は認定されたが、自身が不正の指示を行ったと立証することはできない。よって立候補の取り消しにはならない」と主張した。
 しかし、上部団体の中から「自身が任命した事務局員が不正を行ったのだから、伊藤事務局長には道義的に責任がある。選挙を自ら辞退するのが筋なのではないか」という発言があった。そこで上部7団体は、1週間後の1月29日を回答期限とする伊藤候補への選挙辞退勧告を採択した。

 しかし伊藤候補は、立候補辞退勧告を拒否。これを受けて上部7団体は、伊藤氏の立候補取り消し議案と、不正投票分を除いて開票を行う議案の両方を否決した。
 不正に対する処置が決定・実施されぬまま開票が再開されることとなった結果、伊藤・諸田ペアが2294票、岸・辻上ペアが1814票の得票数で、伊藤・諸田ペアの当選が確定した。

塾生の福利厚生の促進、コンプライアンスに注力したい…伊藤氏


 この結果について、伊藤氏はSFC CLIP編集部の取材に対し「塾生のみなさまに、選挙管理委員会の暴走や局員の疑惑でご迷惑をかけて、非常に申し訳なく思っております。かかる責任をせおって、塾生の福利厚生の促進、特にコンプライアンスに関して一層注力していきたいと思っています」と述べた。
 また、辞退勧告を拒否した理由については、「証拠が不十分であったことと、上部7団体のうち(審議会当日欠席していた)団体の1つが、審議後に異議を述べていたということを鑑みて、辞退勧告を受け入れませんでした」と説明した。

不正があったとされたのに何故…中途半端な審議、残る違和感


 12月に不正の疑惑が告発されてから、選挙の中止、調査団の結成を経て約2ヶ月後の開票再開。調査団によって様々な調査が行われ、不正が「認定された」にも関わらず、処置が取られることはなかった。
 今回の調査で、確たる証拠は見つからなかった。しかし、当該事務局員たちの曖昧な発言、残っている録音音声、筆跡が酷似した何組かの投票用紙などから、不正が調査団によって「認定」されたことは事実である。
 また、全塾協議会規則第29条の3では、選挙に関する違反の行為が調査団の調査により事実であると判明した場合、全塾協議会は「当該候補者の立候補を取り消すことができる」とある。なぜ、伊藤氏の立候補は取り消されなかったのだろうか。「証拠が不十分だから」という理由だけで、何故勧告を拒否し、さらに受理することができたのだろうか。

 全塾協議会の内部が、どのような人間関係で構成されているのか、塾生にはあまり知られていない。しかし、塾生の中から公平に選ばれた事務局長を任命するべきである以上、透明性を持った調査、審議を最後まで行うべきではないだろうか。
 不正の真偽が分からないのであれば最後まで調査を行い、事実が判明した時点で、しかるべき人物が潔く責任を負うべきだろう。今後、伊藤事務局長によって、規約・運営の改善がなされ、選挙に関する透明性が確保されることを切に願う。