多彩な研究発表が見られるORF2015。そのなかの一つ、ヘルスケアの分野を研究する秋山美紀研究会のブース(A04)を取材した。個人研究をまとめた冊子や、学生たちが普段学んでいることの紹介、人がなにを幸福だと思うのかを可視化する試みなど、さまざまな展示を楽しめる。

ポスターなどを多く使い、視覚的な展示にこだわった

ポスターなどを多く使い、視覚的な展示にこだわった

多種多様なテーマ 不妊症から農業の後継者問題まで!?

秋山研は2つに分かれており、研究会1ではヘルスコミュニケーション、研究会2ではヘルスプロモーションの研究に取り組んでいる。研究会1では2人のファシリテーターを中心にディスカッションを通して特定の概念などに関して理解を深める。研究会2では上級生の書いた論文を批判的に吟味していく。

メンバー個人がテーマにしているものは、不妊症治療やスポーツ障害といったものから、農業従事者の後継者問題といったものまで、実に幅広い。今回の展示では、一人ひとりの研究内容をそれぞれA4サイズの用紙にまとめたものがカタログスタンドに用意されており、自由に手に取り、持ち帰ることもできる。

十人十色 様々な研究がある

十人十色 様々な研究がある

モニターを使った説明も

モニターを使った説明も

「ナラエビ」で学ぶナラティブ・ベースド・メディスン

現代医療では、より客観的・科学的なエビデンス(証拠・根拠)にもとづく治療が行われてきた。しかし近年では、エビデンスだけではなく、患者との対話によって病気を取り巻くあらゆる要素を踏まえて治療を行うナラティブ・ベースド・メディスン(Narrative-Based Medicine)という考え方も重要視されている。患者が語る「病気になった理由」「経緯」「症状」「病気についてどのように考えているか」といった物語(ナラティブ)を聞き、患者が抱える問題を、身体面だけではなく精神状態や心理状態、社会的立場などを含めた広い視野で把握し、それらに合わせた治療方法を模索する。病気をただ治すだけのエビデンス医療ではカバーできない、患者と医師の信頼関係の構築や、医療の質の向上が期待され、結果として治療の促進につながるとされている。

今学期の研究会1では斎藤清二著(2011年)『ナラエビ医療学講座―物語と科学の統合を目指して』(北大路書房)という医学書を使って、ナラティブ・ベースド・メディスンの考え方を学んでいる。この展示では、この「ナラエビ」を来場者に実際に見てもらい、自分たちが何を学んでいるのか、ナラティブ・ベースド・メディスンとはどういったものなのかを紹介する。

表紙はライト 中身は充実

表紙はライト 中身は充実

あなたの人生を豊かに 何度でも読み返したくなるハンドアウト

ブースではハンドアウトも配られてる。選択肢を選んでいったり絵を使ったりする幸福度チェック、秋山研の授業風景、ほかにも人生を豊かにする名言集などが盛り込まれている。ハンドアウトをつくるにあたり、受け取った来場者に喜んでもらえるように意識したという。その場で見たらもうおしまい、家に帰ったら捨てられてしまうようなものではなく、ずっと持っていてもらい、たまに取り出して見てもらえる。そんな意図が込められたハンドアウトだ。

こだわりのハンドアウトだ

こだわりのハンドアウトだ

幸せってなんだろう? 冬に幸福の花火を打ち上げる

より視覚に訴える展示が目に留まる。それは「幸福の花火」だ。来場者に現在どのくらい幸福なのかを10段階から選んでもらい、その幸福度で色分けされた付箋に、自分の年代と自分が幸福だと思うことを書いてもらう。その付箋を家計、健康、自由時間、精神的ゆとり、人間関係、その他の6つの分野のどれに当てはまるかを、来場者自身に考えて貼ってもらう。

幸福度が高くなるほど、暖かい色に

幸福度が高くなるほど、暖かい色に

幸福度 年代 幸せだと思うことを書いていく

幸福度 年代 幸せだと思うことを書いていく

多くの人が選んだ分野はどんどん大きくなっていく。つまり、人が何を幸福と考えているのかが可視化された「幸福の花火」が打ち上がるのだ。

幸福が可視化! 綺麗な花火が打ち上がった

幸福が可視化! 綺麗な花火が打ち上がった

なぜ今回、秋山研は幸福をテーマにした展示を出しているのか。実は、健康と幸福が深く関わっていることは証明されているものの、いったい人が何を幸福と感じるのかということは分かりづらいままなのだ。捉えどころのない幸福というものをいろいろ面から探っていくということが今回の展示のねらいだという。

健康を広く捉える―SFCでヘルスケアをやる意味とは?


なぜSFCでヘルスケアを研究するのか。その問いの答えを秋山准教授に聞いた。

来場者に説明をする秋山准教授

来場者に説明をする秋山准教授

— SFCでヘルスケアを学び、研究する強みとはなんでしょうか?

専門家ではない立場だからこそできる広いアプローチが強みだと思います。健康はいろんな要素と結びついています。ITツールを健康に活かすのは身近になりつつありますよね。ほかにも、例えば健康と町の結びつき。歩きたくなるような町をつくることは非常にホットな話題ですし、人を健康にする家づくりといった建築に関することも注目されています。SFCでは、このようなIT、町づくり、建築といったことはもちろん、さまざまな分野が研究されています。ミクロからマクロまで広いアプローチをとることができるのが、SFCでヘルスケアを研究する意味ではないでしょうか。

ぜひとも秋山研へ!

ぜひとも秋山研へ!

健康は生まれてから死ぬまで、だれにとっても切り離せない重要なもの。しかし健康はあまりにも多くの要素と結びついているため、そもそも健康とはどういうことなのか、なにが健康に関係しているのかということを普段から意識するのは難しい。秋山研のブースでは、そんな健康とはなにかという問いに対して、なにかしらのヒントを与えてくれるはずだ。あす21日(土)まで続くORF2015で、秋山研のブース(A04)を訪れ、健康を考えてみるのはいかがだろうか。

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