ORF2015初日の20日(金)、セッション「ファブ地球社会のビジョン2025―インターネット×バイオ×デザイン×ファブ―」が開催された。前半では虫に関わるバイオテクノロジーが発表され、後半では今後のデジタルファブリケーションのあり方が広く議論された。

■パネリスト

  • 関山和秀 Spiber株式会社取締代表執行役
  • 小檜山賢二 政策・メディア研究科名誉教授
  • 村井純 環境情報学部長
  • 田中浩也 環境情報学部准教授
  • 水野大二郎 環境情報学部准教授
  • 佐野ひとみ 環境情報学部専任講師

未来を見据えたバイオテクノロジー

セッションの前半では、各パネリストがバイオテクノロジーに関する活動を紹介した。

最初は世界で初めてクモ糸の人工合成・量産に成功しSpiber社を運営する関山氏。「土、金属、プラスチックと、人類は新たな素材を発明してきた」と振り返り、「次に基幹素材となるのはタンパク質」だと切り出す。「38億年の歴史を持つ生き物の技術は優れているに決まっている。バイオの技術を使いこなさない手はない」と強く訴えた。

同様に「昆虫の体は1億年かけて築きあげられており、デザインとして完成されている」と話すのは小檜山名誉教授。虫の写真撮影に長年取り組んでおり、現在では3Dモデルの生成も手がけている。表皮の突起まで鮮明に捉えた写真が映し出されると、あまりの精密さに会場からは感嘆の息が漏れた。小檜山名誉教授は「現在の3Dプリンタは形しか再現できないが、将来はテクスチャ(表面の質感・手触り)も表現できるようになるはずだ。そのときにこの写真を活かしたい」と展望を語った。

「綺麗でしょう」笑顔の小檜山名誉教授

「綺麗でしょう」笑顔の小檜山名誉教授

佐野講師は「昆虫食プロジェクト」を進めるメンバーの一人だ。これはあらゆる分野から「虫を食べる」ことについて考えるプロジェクトである。佐野講師は昆虫の栄養価に着目し、食料不足問題を昆虫食によって解決できないかと考えている。「昆虫食プロジェクト」はすでに始動しており、SFCで開催された「秋の虫会」では実際に調理した昆虫食の試食が行われた。

データから昆虫食にアプローチ 佐野ひとみ講師

データから昆虫食にアプローチ 佐野ひとみ講師

虫料理の一例。虫をミンチにして混ぜ込むことで食べやすさを実現。

虫料理の一例。虫をミンチにして混ぜ込むことで食べやすさを実現。

ファブ地球社会とは夢に挑戦できる世界

セッション後半はバイオテクノロジーの観点からファブがもたらす未来について議論された。

熱く語る関山氏。クモの糸製のパーカー「MOON PARKA」の製品化準備を進めている。

熱く語る関山氏。クモの糸製のパーカー「MOON PARKA」の製品化準備を進めている。

特に印象的だったのは、関山氏の農林水産省とのエピソードだ。クモ糸をつくるにはクモの餌となる穀物が必要だが、国内の穀物を使用してしまうと日本の食糧自給バランスが崩れてしまう。そこで海外から穀物を輸入しようとしたところ、「日本の穀物を守るため、海外から穀物を輸入してはいけない」と農林水産省に止められた、という話だ。最終的に関山氏は説得に成功したのだが、これはファブ×バイオという新しいモノが社会の流れを変えた一例だと言えるだろう。

村井学部長「『ビジョン』が結びついた人間ってカッコイイよね」

村井学部長「『ビジョン』が結びついた人間ってカッコイイよね」

村井学部長は、関山氏・小檜山名誉教授・佐野講師らを「自然から学ぶという『科学の眼』だけではなく、それを何と結び付けるかという『ビジョン』を持ったすばらしい人たち」と評価する。「こうした人間のビジョン・夢・情熱を実現する手助けとなるのがデジタル技術だ。デジタル技術が普及することで人々が夢へ挑戦できる世界が、ファブ地球社会なのだろう」と述べ、セッションを締めくくった。

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