「ヘボコン」というイベントをご存知だろうか。娯楽系ウェブメディア「デイリーポータルZ」(ニフティ株式会社運営)に始まる「技術力の低い人限定ロボットコンテスト」の通称だ。技術力の高さを競い合う通常のロボコンとは対照的に、技術力の低い者たちがどんぐりの背比べを行う。9日(水)、湘南藤沢メディアセンターではSFC生を対象とするヘボコン、題して「SFCヘボコン」が開催された。

メディアセンターではSFCヘボコンに向けて11月25日(水)にロボットの基礎部分を製作する「つくろう! ヘボベース」、12月3日(木)にステッカーを自作する「オリジナルステッカーを作ろう!」の2回のワークショップを開催。参加者はファブスペースを利用してロボット製作の基本を学んだ。

出場条件は「技術的に稚拙であること」 個性派ロボが集結!

SFCヘボコンに出場するロボットは、技術的に稚拙であること、大きさが50cm×50cm以下、重量1kg以下、ファブスペースでつくったアイテムが1つ以上使われていることが求められる。また金銭力にものを言わせないロボットであることが好ましい。コンテストを通して、優勝者をはじめ、審査員特別賞、投票による「最も技術力の低かった人」賞が選ばれる。

会場には個性的なロボットが集まった。木田雄貴さん(環1)製作のロボット「甘追」(あまつい)は出場ロボのなかでも最大級。親戚から譲り受けたというラジコンをベースに、上からダンボールをかぶせたものだ。ラジコンがあまりにも高性能だったため「ヘボコンの名にふさわしいようにパワーを下げるのに苦労した」とのこと。

木田さん製作の「甘追」。ラジコンにダンボールをかぶせている。

木田さん製作の「甘追」。ラジコンにダンボールをかぶせている。

「魔王」と名付けられたのは小笹祐紀さん(環1)製作のロボット。小笹さんは友だちが勝手に応募したため参加することになった。名前の由来は、「バッハの歌曲『魔王』を聴いているときにアイデアを思いついたから」だという。なお、『魔王』の作曲者はバッハではなくシューベルトであることは言うまでもない。

小笹さん製作の「魔王」。導線がむき出しだ。

小笹さん製作の「魔王」。導線がむき出しだ。

淺野義弘さん(環4)製作のロボットは「ルンバ」という名前だ。お掃除ロボットにちなみ、機体がたわしと歯ブラシで構成されている。先端には3Dプリンタで出力した淺野さん自身のフィギュアを装着。「相手をゴシゴシ綺麗にしてやるぞ」と意気込む淺野さんは、今回のSFCヘボコンの主催者でもある。

淺野さん製作の「ルンバ」。たわしと歯ブラシが特徴的。

淺野さん製作の「ルンバ」。たわしと歯ブラシが特徴的。

森川好美さん(総4)製作のロボットは「遠藤銀蠅」(えんどうぎんばえ)の名が付いている。トラックって強そう、光るって強そう、そんな考えからデザインされた。頭頂部には「卒論上等」と記された自作ステッカーが貼られている。電力の大半を光ファイバーが消費しているため、ロボット自身のパワーは大して強くないという。

森川さん製作の「遠藤銀蠅」。ステッカーからは製作者の怒りを感じる。

森川さん製作の「遠藤銀蠅」。ステッカーからは製作者の怒りを感じる。

後藤圭さん(環2)製作のロボットは「湘南の火薬庫」。特徴ともいえるクラッカーはモータを通じてマイコンに結びつけられているが、マイコンの性能を生かしきれていない。「運が良ければクラッカーが鳴るかもしれない」と後藤さん。この辺りのゆるさがヘボコンならではだ。

後藤さん製作の「湘南の火薬庫」。マイコンを生かしきれていない。

後藤さん製作の「湘南の火薬庫」。マイコンを生かしきれていない。

清水快さん(総1)製作のロボットは「ラブリボンちゃん」。今回のSFCヘボコンでは唯一、電力を使用していないロボットだ。ゼンマイ仕掛けで動くブリキのリスに可愛らしいリボンが結ばれている。高い女子力を感じさせる装飾で相手を惑わす。

清水さん製作の「ラブリボンちゃん」。ゼンマイ仕掛けで動く。

清水さん製作の「ラブリボンちゃん」。ゼンマイ仕掛けで動く。

小山峻(総3)さん製作のロボットは「学問よすゝめ」。全体として慶應義塾をイメージとし、側面には着想元である『学問のすゝめ』の序文が刻まれている。加えて頭部には1万円札と3Dプリンタで出力した福澤諭吉像が自転運動をする。『福翁自伝』にちなみ「福翁自転」という寸法だ。恐れを知らぬデザインに会場は畏敬の念に包まれた。

小山さん製作の「学問よすゝめ」。恐れ多い。

小山さん製作の「学問よすゝめ」。恐れ多い。

長谷川貴広(環3)さん製作のロボットは「とりにく号」。クリスマスを意識して、プレゼントボックス型の機体側面にローストチキンをあしらっている。必殺技はその場の思いつきで考えた「もも肉プレス」。

長谷川さん製作の「とりにく号」。季節のイメージを取り入れている。

長谷川さん製作の「とりにく号」。季節のイメージを取り入れている。

激しいバトル 王者の座は誰の手に!?

ロボット同士の対戦は、1対1の相撲によるトーナメント形式で行われる。1分間の試合で転倒したり場外へ出たりしたロボットはその時点で敗退。そのほか、センサー類による自動操縦機能など技術力の高い実装がなされていると判断された場合はペナルティが課される。技術的に稚拙であることが求められるヘボコンだからこそのルールだ。今回のSFCヘボコンには、特別審査員として本家ヘボコンを主催するデイリーポータルZ編集者の石川大樹さんが招かれた。

試合はトーナメント形式で行われる。

試合はトーナメント形式で行われる。

第1戦は「魔王」と「ルンバ」の対決。「魔王」製作者の小笹さんは授業に出席しているため、代理の友人がロボットを操縦した。試合開始後、威風堂々とその場を動かない「魔王」に「ルンバ」が接近する。「魔王」前面に取り付けられたドリルに「ルンバ」はなすすべがないと思われた。しかし試合終盤、「ルンバ」のタイヤが「魔王」の電源からのびる導線を巻き込み、そのまま切断。相手の動力を奪う意外な形での勝利となった。

「魔王」に歩み寄る「ルンバ」

「魔王」に歩み寄る「ルンバ」

導線を断ち切られ、「魔王」は動作不能となった。

導線を断ち切られ、「魔王」は動作不能となった。

続く第2戦は「遠藤銀蠅」と「とりにく号」の対決。互いのロボットを象徴するイルミネーションとローストチキンが季節感を漂わせる勝負となった。両者ともに歩を進め、相手との距離を縮めていく。正面から衝突しそうになったところ、「遠藤銀蠅」は「とりにく号」の脇をすり抜け、そのまま場外へ。「遠藤銀蠅」の判定負けとなった。

敗北してしまった「遠藤銀蠅」。しかし輝きは失っていない。

敗北してしまった「遠藤銀蠅」。しかし輝きは失っていない。

第3戦は「ラブリボンちゃん」と「湘南の火薬庫」が対戦フィールドへ。「ラブリボンちゃん」はテンポよく歩を進める。対する「湘南の火薬庫」はクラッカーをゆっくりと回転させるのみで微動だにしない。「ラブリボンちゃん」が「湘南の火薬庫」の側まで身を寄せ攻撃に入ると思いきや、そこでゼンマイが止まってしまった。そのまま試合時間が終了し、ルールにもとづき移動距離の長い「ラブリボンちゃん」の勝利となった。「湘南の火薬庫」自慢のクラッカーは不発に終わった。

「ラブリボンちゃん」の動きが停止する。ゼンマイの巻きが足りなかったか。

「ラブリボンちゃん」の動きが停止する。ゼンマイの巻きが足りなかったか。

第4戦は「学問よすゝめ」と「甘追」の対決。開始直後、「学問よすゝめ」が転倒する。しかし、それも計算のうちと言わんばかりに「学問よすゝめ」は前進を続け、「甘追」に迫った。負けじと「甘追」も「学問よすゝめ」をフィールドの端へ押し出そうとする。そして試合時間が終了し、移動距離の長い「甘追」の勝利となった。小山さんは「敗因は愛塾心が足りなかったことにある」と悔しさに顔を曇らせた。

試合開始そうそうに転倒する「学問よすゝめ」

試合開始そうそうに転倒する「学問よすゝめ」

早くも準決勝、第5戦は「ルンバ」と「とりにく号」が向かい合う。かつての対戦相手「遠藤銀蝿」から光ファイバーを受け継いだ「とりにく号」は重くなった自重に耐えきれず、わずかに機体を揺らすのみで動くことができない。立ち往生する「とりにく号」に身のこなしが軽い「ルンバ」が突進。「とりにく号」を端へと追いやり「ルンバ」は決勝へと勝ち進んだ。「とりにく号」の必殺技、もも肉プレスは最後まで見ることはできなかった。

しのぎを削る「ルンバ」と「とりにく号」の対決

しのぎを削る「ルンバ」と「とりにく号」の対決

続く準決勝、第6戦は「ラブリボンちゃん」と「甘追」の対決。せまりくる巨大な「甘追」を前に「ラブリボンちゃん」は逃げ回る。追い詰められた「ラブリボンちゃん」は小回りの良さを生かして回り込もうとするが、もう少しのところで場外へ片足を踏み出してしまった。「甘追」が決勝へと勝ち進んだ。

惜しいところで場外に出てしまった「ラブリボンちゃん」

いよいよ決勝の第7戦は「ルンバ」と「甘追」の対決。ここまで勝ち残ってしまった淺野さんは主催者という立場上、どことなく気まずそうな雰囲気を漂わせている。数々のロボットを葬ってきた自慢の巨体で着々と相手の足場を侵略する「甘追」を前に「ルンバ」は逃げるほかない。そして最後には「甘追」にはじかれ方向を失った「ルンバ」が自ら場外へと進み自滅してしまった。負けてしまったことに対して淺野さんからは安堵のため息が漏れた。

場外に飛び出してしまった「ルンバ」

場外に飛び出してしまった「ルンバ」

激しいバトルの末、グランプリは「甘追」の木田さんに決まった。本家ヘボコンの優勝者は申し訳ない気分でいたたまれなくなることが多いというが、木田さんの顔には勝者の笑みが溢れている。何事にも全身全霊で取り組むSFC生たる精神がそこには感じられた。

SFCヘボコンの試合結果は以下のとおり。

試合 勝者
第1戦 魔王 対 ルンバ ルンバ
第2戦 遠藤銀蠅 対 とりにく号 とりにく号
第3戦 ラブリボンちゃん 対 湘南の火薬庫 ラブリボンちゃん
第4戦 学問よすゝめ 対 甘追 甘追
第5戦(準決勝) ルンバ 対 とりにく号 ルンバ
第6戦(準決勝) ラブリボンちゃん 対 甘追 甘追
第7戦(決勝) ルンバ 対 甘追 甘追

また、審査員特別賞には小山さんの「学問よすゝめ」、「最も技術力の低かった人」賞には後藤さんの「湘南の火薬庫」が選ばれた。

つわものどもが夢のあと

盛況のうちに幕を閉じたSFCヘボコン。参加者からは「よくもこれだけゴミが集まった」という“褒め言葉”もあがった。主催者の淺野さんは「次回があるかどうかは未定だが機会があればまた開きたい」と第2回SFCヘボコンへの可能性をうかがわせた。

熱狂に包まれたSFCヘボコンは幕を閉じた。

熱狂に包まれたSFCヘボコンは幕を閉じた。

個性的なロボットたちに会場からは笑いが絶えなかった。メディアセンター公式ページではSFCヘボコンの様子を収めた記録映像を公開している。SFCヘボコンを見逃してしまった方はぜひともヘボいロボットたちの勇姿をご覧になってはいかがだろうか。

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