「J-フォンはボーダフォンと一つに」。今年の5月21日、携帯電話会社が一堂に出展する東京・お台場の「ビジネスショウ」で、J-フォンのブースにはこのようなコピーが印刷されていた。


 最近、J-フォンの広告やCMに出てくる同社のロゴの下に、ボーダフォンのマークがくっ付いているのに気づいた人もいるかもしれない。これは、世界最大の携帯電話運営会社、ボーダフォンの対日戦略の現れだ。英国に本社を置くボーダフォン・グループは、1990年以降世界戦略を積極的に進め、現在では世界約30ヶ国でサービスを展開する。
 そのボーダフォンが、J-フォンの経営権をほぼ掌握したのは昨年の10月頃である。ボーダフォンは、昨年8月の時点でJ-フォンの株式を約40%、日本テレコムの株式を約45%保有していた。さらにJ-フォンは、元々親会社である日本テレコムに約45%の株式を保有されていたため、この時、ボーダフォンのJ-フォンへの直接間接出資比率は60%強。
 ボーダフォンはさらに、同年9月下旬から10月にかけて、、日本テレコムに対しTOBを実施、株式保有率を66.7%まで引き上げた。企業の重要事項の決定に際しては、3割以上の株式を保有している株主が拒否権を持つ。つまり、日本テレコムではボーダフォン以外に拒否権を持つ株主が事実上存在しなくなっため、日本テレコムの経営権はもとより、J-フォンの経営権もこれでJ-フォンへの直接・間接出資比率が約70%弱に及んだボーダフォンに握られることになった。
 一方で、採算性の低い固定電話事業の日本テレコムはボーダフォンの傘下になった日から、常に売却・解体の対象である。
 日本テレコムが消え、J-フォンがボーダフォンの名にとってかわる日は、現実となりつつあるかもしれない。
TOB(=Take Over Bit)
株式の公開買付。経営権を獲得するために、一般の株主に対して買付期間と時価以上の価格で一定株数を買うことを公開し、市場外で株を買い集めること。