前回の特集から、2ヶ月が過ぎた。春休みの期間中であること、寒い時期であることなどが幸いし、大方の人は、あの「SFCの臭い」を嗅がなくて済んでいる。その中、SFC CLIPの取材班は、先回の特集で取り上げた、豚や牛などの糞以外にも臭いの原因が存在することを確かめるため、第二回目の取材を行った。先回とも今回とも、この特集の趣旨は、SFCのあの臭いは「豚か牛の臭い」であるという憶測を排除し、正しい理解をしてもらうところにある。今回も先回と同様に菊池浩さん(総合4年)にご協力いただき、新たな臭いの発生地点に向かった。


※お知らせ:「第3回 SFCのあの臭いを解明!」で第二回目では、臭いがSFCに到達するメカニズムをデータを用いて詳細にレポートすると書きましたが、諸般の事情により、sのデータを掲載することができなくなりました。若干内容に変更が生じましたことをご了承願います。

野菜を堆肥化?

腐りかけている野菜。臭いが強烈
 前回の特集では、主に畜産業者を取材し、その実態を解明した。菊池さんの調査によれば、臭いの発生源になっているのはSFCの西側と南側であるというデータが得られている。西側からの臭いは、風向とは無関係で、夜間に発生するという。先回は南側の臭いの発生源の取材を行ったが、今回、取材班は西側を取材した。そこには畜産業以外にも、臭いの原因となっている場所が存在し、そこでは野菜を堆肥化しているという。さっそく我々取材班は、現場に向かった。SFCのすぐ裏手、ちょうど大学院棟やクラブハウス棟のすぐ裏手に宇都母知神社という神社がある。そのすぐそばで、野菜の堆肥化は実際に行われていた。SFCに残留した経験がある方なら、一度や二度、生ゴミ臭いと感じたことがあるのではないだろうか?いつもの臭い(糞を堆肥化する際に生じる臭い)とは違う生ゴミのような臭いである。この臭いは、ほぼここからやってくるようである。実際、筆者はこの前を通った時に、前回の牛の糞の発酵過程を見学した時と同様、吐き気を催さずにはいられなかった。ただ、先回の教訓を踏まえ、今回はマスクを持参したため、幾分か、負担は軽減された。
 野菜を堆肥化するとは、どういうことか。取材班が調べたかぎりでは、くず野菜を堆肥にしているようである。堆肥化する際は野晒しが基本なのかどうなのかはわからないが、野菜くずは屋外に放置されている。堆肥化されているくず野菜は、確認した限りでは、玉葱、キャベツ、大根である。やさいくずは屋外に放置されているため、無数のカラスがそれらをついばみにやってくる。辺り一帯は、無人でカラスの存在だけが目立ち不気味な雰囲気が漂っている。

なぜ夜に生ゴミの臭いがするのか?

堆肥化される大量のたまねぎ
 我々がこの場所を訪れたのは午後3時頃だった。おそらく攪拌用と思われるショベルカーやブルドーザーなどの重機は野菜くずの山の近くにとめてあるが、作業に従事している人は誰もいない。完全な無人地帯になっている。なぜ、昼間に作業をしないのだろうか。藤沢市の農業振興課の二宮氏によれば、行政側として、藤沢市では堆肥を攪拌する作業はそれに付随し強烈な臭いが発生するため、昼間の作業を自粛してもらうように農家や業者に呼びかけているのだという。
 我々がそこに行った時には作業は行われておらず、業者の配慮を感じた。発酵過程において、堆肥化しつつある野菜を攪拌する際にはものすごい臭いがすることは、以前の取材から類推すれば明らかだ。ここにある重機を用いて、昼間にくず野菜の山を攪拌したらどういう臭気がSFCに漂ってくるのかは想像に難くない。菊池さんの調査によれば、早いときで午後6時頃に西の方から強烈な臭いがしたことがあるという。おそらく、この臭いは攪拌作業を開始した時刻と一致するはずだ。
 菊池さんによれば、平成12年のSFC周辺の航空写真を分析すると、SFCの西には、畑しかなかったという。しかし、今日では、養鶏場や豚の糞を肥料にするため天日乾燥させている施設、また、肥料にするため大量のたまねぎを放置し、腐らせている場所、腐敗したくず野菜の山など強烈な悪臭を放している施設が次々と設置されてきているという。これら処理施設のほとんどが昨年に出てきたということを踏まえると、SFCにおいては悪臭がなくなるどころか、ますます、悪臭漂うキャンパスとなることが予想されるという。

対策の可能性はあるのか?

無数のカラスが堆肥の山にやってくる
 現時点で有効な対策と呼べるものはないだろう。行政側からは夜間に作業してもらうように農家、業者によびかけている。ではどうすれば、不快な臭いから解放されるのであろうか。根本的な解決策は堆肥化するプロセスを屋内ですすめること。あるいは、高温で処理してしまうという方法であろう。今年の6月からは屋外での堆肥化が法律により禁止されるというが、壁を設けないで屋根をつければいいという。実質、ザル法といわざるを得ない。前回の特集で我々が取材した打戻種豚組合のように、熱を利用した処理施設を用い、屋外に晒さずにすめば、臭いを減らすことは可能であるが、その導入するコストは誰が負担するのかという問題もあり、解決への道は遠い。ただ、前回の特集でも書いたように、SFC周辺で生成される堆肥は周辺の有機野菜を栽培し、出荷している農家に購入されているのだ。化学肥料を使わない有機野菜に対する需要は年々上がってきていることは間違いない。少々価格が高くとも有機野菜を購入する消費者が多いことは事実だ。このような点を踏まえると、少々臭くても、地域と共存をはかっていけるような取り組みがSFCで行われることが望ましいだろう。