まもなく始まる就職活動。自分は将来、何をやったらいいのか、何がしたいのか、不安な3年生も多いことだろう。新コーナー[就職のススメ]では、SFCの学生が直面する就職活動の現場をレポートする。第1回は、来年から三菱商事に入社する4年生男子の場合。数ある業界のなかでなぜ「構造不況業種」とも言われる総合商社を選んだのか、そしてその魅力について語ってもらった。


就職活動を振り返ってみてどうですか?
 社風に関しては、想像していたのと、面接を受けて感じた雰囲気は違いますね。また、やりたいことと自分の適性とは違っていて、最初は、自分の得意分野もよく分かっていなかった。それに気づくのに時間がかかりました。就職先の三菱商事には、4月28日に内定をもらって活動を終えましたが、受けたのはエントリーも含めると13社。うち2社から内定をもらいました。あと1社は広告代理店です。
  ぼくは、与えられた仕事をきっちりとこなすような仕事のスタイルは好きではなくて、ゼロから何かを企画し、実行するまでぜんぶ自分でやりたい。その点、広告と商社は近いのですが、仕事が短期間で成功と失敗が繰り返される広告に対し、商社では、新聞に載るような大きなインパクトを世の中に与え、業界構造を変えることができると思った。そこで商社にしました。
面接ではどんなことをPRしましたか?
 年生のときにSFC受験生向けの通信添削の商売を立ち上げて、それを続けています。塾講師のバイトもやっていたのですが、報酬が少ないし、塾の方針と違えば教えたいように教えられない。だから、自己実現にならないんです。
 そこで、塾に見切りをつけて、SFC受験生向けの通信添削を始めた。ビラ作りから教材作成、配送まで、全部自分達でやった。おかげで、毎年100~200万円のお小遣いを稼ぐことが出来ました。
 面接では、自分の知識を切り売りする塾講師がコンサルだとすれば、知識を利用してビジネスのしくみを作るのが商社だから、実行力を御社で生かしたい、とPRしました。
 それと、モバイル広告のベンチャーで働いていたことも役立ちましたね。企画書の書き方や、他企業とのアライアンスの組み方など、技術的な話以上に、商社・銀行・広告・雑誌・ITコンサルなどあらゆる業界から転職してきた人たちの仕事のやり方を見たり、話を聞いたりすることで、業界本より深い知識が得られました。
SFC生の就職活動について、どのように見ていますか?
  SFC生の就職活動を見ていると、キャリア志向が強くて、仕事のやりがいはどうでもいいのかな?、と感じてしまう。学生時代に、達成感のあることをやってきていないなのでは?と思います。キャリア派、やりがい派と言われると、僕は後者。商社の営業マンは、スペシャリストを束ねる仕事だから、自分はスペシャリストにはなれないかもしれないですが、それは仕方ないと思います。市場価値、とかは今はあまり気にしていません。
 必須ではないのは、OB訪問です。商社ではOB訪問は必須だと聞いていましたが、最後まで僕はやらなかった。しかし会社のこと、業界のことを知りたいのだったら、下心なしにむしろ30~35歳の人に会うといい。彼らは仕事のおもしろさを知っているから、長期的な話を聞けます。また、就職活動全般に関しては、時間がたっぷりあり、記憶も新しい内定者に聞くとよいと思います。
巷にあふれている就職情報について、どう思いますか?
 どの企業で買いで、どの業界が売り、のようなのは、僕は信じていない。たとえば、企業の役員経営者から最も読まれていると言われる「日経ビジネス」でも、去年まではベンチャー企業志向だったのが、今年になったら大企業志向の風潮です。マスコミでは、商社中抜きの時代だと言われていますが、なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、を見極めた方がいいですね。特にSFC生はリアルビジネスを知らず、論理で考えてしまうから「インターネットで中抜き!」とか単純に考えてしまう。
大学の就職課は利用しましたか?
 まったく利用しませんでした。むしろ外資系コンサルや就職媒体の第一線で働いている人たちをSFCへ招き、自ら就職セミナーを開きました。就職だといって引きこもるのではなく、忙しいからこそ自分から動いていったほうがいいと思います。  
SFCの学生は、入社してからすぐに会社を辞めてしまうといいますが。
 僕は、投資銀行や戦略コンサルなどの高給はとても羨ましいけど、それ以上に大きな仕事をゼロから起こしたいんです。利権を自ら作り出していくのが商社で、海外のネットワークもある。今回のテロ事件で、防衛庁が流している情報も、実は商社が集めたりしています。学生の時点でもっともチャンスがあるのが商社だと考えた。なんといっても、会社のリソースが使えますしね。やりたいことまずありきなので、現時点では、キャリアアップや転職を考えて仕事しようとは思っていません。
就職が決まってからは?
 映像コンペの企画をやっています。ショートフィルムに限定した映像コンペを、来年の2月に東京の映画館で開こうと思っています。6大学30人ほどの学生スタッフがいるんですが、どれもこれもが初めての試みなので、毎日が新鮮です。海外旅行も行けない日々ですが、それ以上の達成感をもとめて新鮮な毎日を送っています。
最後に、これから始める就職活動を始める3年生に向けてどうぞ。
ビクビクしたり、自分の見栄を捨ててまで会社に迎合するのはやめたほうがいい。最後まで自分を変えずに「このオレを採る会社は採れ」くらいの方がきっとうまくいくと思います。大変だと思いますが、がんばってください。
ありがとうございました。
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