今回の「Project CLIP」では、KLab(クラブ)株式会社の産学連携の研究開発拠点「湘南アドバンストラボ」を取り上げる。湘南アドバンストラボは、SFC生を中心に構成され、携帯コンテンツの企画、開発、運営を行っている。昨年の11月にオープンした携帯コンテンツ「福引ケータイ」は現在3万4千人の会員数を得ている。SFC CLIP編集部では、湘南アドバンストラボの小林慶太さん(総3)、KLab株式会社の取締役を務めている千葉功太郎さん(97年環卒)にインタビューを行った。

小林さん、千葉さん

湘南アドバンストラボの設立の経緯、目的などを教えてください。
千葉 KLab(クラブ)の創業当事から関わっていた役員に、社長の真田、技術CTOの仙石、そして僕の3人がいます。その役員が3人とも、学生のときにビジネスをやっていたんですよ。僕はCD-ROM制作会社をやっていた。真田はもっとすごくて、大学1年のときに関西で会社を作って、当時の関西では知らない人がいないくらいに有名な学生ベンチャー企業だった。仙石も大学生のときに、ソフトウェア会社に行って、色々なプロダクトの開発を社会人と一緒にやっていた。能力が高いからMacintosh上の「仮名漢字変換システムソフト」の開発をほとんど任されていたようです。
 3人とも学生時代から仕事をやってきたというバックグラウンドが重なっていて、その影響が強くあり、現在につながっていると思うんですよね。学生のときにいい影響があれば、その後の人生はぐっといい方向に行く。学生のときに、何となく将来どうしようかなと思って過ごしていくよりも、きちっと目標地点を置いたほうがいい。常に目標が見えていれば、軌道修正をしながら、目標に向かっていくことができる。目標のある人とない人では、全然人間の成長の仕方が違うし、能力の上がり方も違うだろうなと思います。学生のうちにいい経験や、いいきっかけがあることが重要だと思うんですよ。
 自分たちが学生のときに仕事をしてみて、非常に自分の人生のためになりました。それを今の学生にも教えてあげたいというのが、日本の各地方に大学前ラボを作ろうと思ったきっかけですね。大学前ラボでは、学生が携帯電話のコンテンツ、アプリケーションの企画・開発・運営を行っています。
 また、シリコンバレー型のモデルを日本でも真面目にやりたいなということがあります。シリコンバレー型というのは、うちの社長真田の定義では、理系の学生が自分たちの研究成果をもとに起業をすることができて、さらにそれを商売としてバックアップする環境があるということですね。日本は理系の学生が起業したりとか成功したりということがあまりない。それを支援する環境もなければ学生に発起させるような仕掛けも少ない。KLabは技術が強く、かつマーケティングの意識が強い会社として、全国の優秀な理系の学生さんたちに、大企業の研究所に行くだけじゃなくて、自分たちの力で稼ぐという道筋もあるんだよというのを教えたいというのが、一番大きな目標なんですね。
 あくまでもKLabでできるのは、きっかけ作りです。学生時代を規定路線で過ごすよりも、その間に社会を一緒に見て、自分の力がどれくらい通用するのか、しないのかというのを分かってもらう。分かった上で、大企業に行くのか、独立するのかということを考えてもらうきっかけを提供したいなというのが、気持ちとしてあります。だから採用をするためではなくて、どちらかというと社会貢献活動という感覚に近いです。そこからリターンを得ようというよりも、こういう活動で日本が活性化したらいいなと思っています。
 国は国で、予算をつけて全国でベンチャー支援活動をやっているわけですが、どれもうまくいってない。地域に仕事もないのにただ予算でベンチャーインキュベーション施設を作っても絶対うまくいくわけがないんですよ。一番重要なのは、情報の集積力とスピードです。情報ってすごく不思議で、インターネットの時代なのに東京と地方ではすごく格差があって、地方にいると情報が手に入らないんですよ。
 明らかに情報格差があるというのが、僕が日本全国の大学を回って実感したことの一つで、この情報格差は何だろうなと考えると、情報は、人と人の生のコミュニケーションでやり取りしているものが大きなウェイトを占めているということがある。
 六本木ヒルズにこれだけ競合会社が集まっているのは生のコミュニケーションがしやすいからですよね。同じようなことを目指している会社が、同じようなエリアにいるということは、直接会って話したりすることが多いので、インスパイアされることがたくさんある。それに、周りが常に頑張っているので、俺も頑張らないと追いつかない、追い越されるという危機感を持てます。それがスピード感につながっていると思いますね。
 そういった温度感を地方に転用したいと思っています。だから、大学ラボでやりたかったのは東京のスピード感、温度感をそのままダイレクトに地方の拠点に輸出することです。それは、例えば地方の拠点にいるけれども、東京と一緒に仕事をすることでバーチャルでコラボレーションをして温度感を味わえるとか、あるいは物理的に東京に来て研修を受けるといったものです。
 それによって地方では味わえないような感覚を身につけて、同じ目線で頑張って欲しい。地方の学生は、能力は低いわけではなくて、むしろ高いと思っています。そういう人たちにきっかけと情報だけ提供して、あとはどんどん成長していってください、というのが大学ラボでやりたかったことです。
 だから、場所を問わずいろいろなところに作ってきました。大学前ラボなので、コアな人間が卒業していくと消えたり、形を変えたりするので、昔と比べると数も少なくなっています。そのうち2つは非常に大きくなって、大阪の拠点はそのまま大阪支社という形で支社化していますし、福岡の拠点は福岡事業所という形で、1月末に福岡の駅のすぐ近くに拠点ができます。その2つの拠点は所属していた学生が、卒業してそのまま自分たちがやるという形で残っています。
 そういった感じで、大学ラボも一巡したのですが、一昨年末くらいに、もう1回学生ラボをやりたいなと思いました。自分の母校なので、第2期SFCの大学前ラボをやりたいなと思いスタートしたプロジェクトが湘南アドバンストラボです。
 第1期のSFC大学前ラボの代表を柴田さんという方が務めていて、彼と話していて第2期をやるときは第1期の引継ぎではなくて、全くまっさらに作り直して、新しい時代のラボをやったほうがいいということになりました。新しい人員を探していたところ、彼が(小林慶太さん)が良さそうじゃないんじゃないかというところから、現在の湘南アドバンストラボ始まっています。
小林 きっかけは前代表の柴田さんから話が来たということですね。第1期のSFC前ラボは、人はSFCの学生だけに限定をして集めて、本社から仕事をもらったり自分たちで開発をして、ビジネスをやっていました。
 僕の代では、SFC生を含めた湘南地域に住んでいる学生を集めて、サービスをプロデュースしていけるようなラボにしていきたいなということを、当初の目標として設定して始めました。湘南地域の実家から都内の大学に通っている学生も多いので、そういった学生も実家の近くで仕事ができれば、わざわざ都内に出て行く必要がないじゃないですか。僕の代では、SFC生以外の大学生も一緒に活動していきたいと思っています。だから、第1期ではSFCの傍の刈込にオフィスを置いていたのですが、現在は、湘南台駅西口から近いところにオフィスを置いています。こういったコンセプトで、新しいラボづくりを始めていったんですね。
 現状は学生は僕を含めて4人います。SFCの萩野研の開発者の方が2人、もう1人は僕の高校の友人で、立教大学の学生です。彼は、企画とコンテンツプロデュースを担当しています。僕はラボのマネージャーをやりつつ、コンテンツのプロデューサー的な役割を担っています。
どうして湘南アドバンストラボで働いてみようと思ったのですか?
小林 ガイアックスというインターネットのコミュニティーをつくる企業でインターンシップをしていたこともあり、元々ベンチャー企業への興味は強かったんです。柴田さんからそういう話をいただいたとき、非常に面白そうだなと感じました。また、ちょうどモバイルは僕らがよく使う年代層なので、もしかしたらいいサービスができるんじゃないかな、という動機があったので挑戦してみようかなと思いました。
湘南アドバンストラボで運営している携帯サイトに、福引ケータイとブランドランドがありますが、具体的な事業内容は?
小林 今、運営しているサイトは、その2つです。1月、2月の間にも新しいサイトをリリースしていきたいなと考えています。ケータイコインの子サイト群をどんどんラボで作っていきたいです。ケータイコインの中の一部のユーザ、特徴のあるユーザを刈り取って、ケータイコインだけでは出せないメディアとしての味付けを子サイトでやっていきたいなと思っています。

小林さん

福引ケータイは11月14日にリリースをして、ブランドランドは12月16日のリリースです。スパンとしては1ヶ月程度で1サイトを作っています。会員数は、福引ケータイのほうは、現状で3万4千人を超えていまして、ブランドランドのほうも、まもなく2万人を超えるかなというところまで来ています。福引ケータイのほうは、1週間で1万ユーザを超えて、想像をしていた以上に会員数が伸びました。

編集部注
ケータイコイン:KLabで運営している携帯上のポイントサービス。2月10日現在で17万人の会員が登録している。利用ユーザは、企業からの広告を見ることなどによって、ポイントを貯めることができ、現金やEdy、コンテンツや商品に交換することが可能。福引ケータイ、ブランドランド、あたる!!グルメギフト、あたる!!リゾートギフトは、ケータイコインのコインが共通で使える姉妹サイト。http://kcoin.jp/

福引ケータイ:広告をクリックすると懸賞に参加でき、現金や景品を無料で獲得できる携帯上の懸賞サイト http://fkei.jp

ブランドランド:20-30代の女性をメインターゲットにした携帯上の懸賞サイト http:// brala.jp

あたる!!グルメギフト:1月20日にサービスを開始したグルメギフト券が当る懸賞サイト http:// agru.jp

あたる!!リゾートギフト:「あたる!!リゾートギフト」と同日の1月20日サービスを開始したリゾートギフト券が当る懸賞サイト http:// aret.jp

※URLはQRコードか、ケータイよりアクセスして下さい。

新規サービスを立ち上げるときに重要だなと思うことはありますか?
小林 一番気をつけているのは、自分が使って遊んでみたくなるようなサービスを作ることです。毎日アクセスしたり、メールが来たら、クリックをしてアクセスしたくなるようなサイトにすることを、いつも心がけてやっていきたいなと思っています。

小林さん、千葉さん

千葉さんは?
千葉 ユーザ志向であることです。僕らがやっている携帯の仕事は、最終的にはコンシューマが使うものなので、自分が使いたくないサービスを作ってもしょうがないですよね。かつ、新しいことだと思うんですよ。新しくて、かつ自分が使いたいサービスというのが基本だと思います。ただ、それを実践するのはとても難しい。
ラボのサービスの企画、開発、運用はラボの人員でやっているのですか?
千葉 基本的にはそうですね。そのために昨年1年間、訓練してきました。
どのような訓練を?
小林 昨年の4月から、僕と開発者2名で始めました。最初にそれぞれのスキルを高めることが重要だなと感じていたので、始めの半年間は、各自でそれぞれの仕事をしていました。本社の方とお仕事をしつつ、それぞれの足りない部分を気づきながら、高めていくという作業を最初の半年間4月から9月くらいまで行っていました。
 その中で、個人としては、モバイルフェリカを使ったサービスなど、大きな案件に関わっていました。僕の場合は、企画、ディレクション、プロデュースの仕事だったんですけれど、そういった部分の能力を高めながら、仕事をしてきました。
 ケータイコインがちょうど8月に立ち上がって、9月から自分たちも子サイトという形で新しいメディアをつくっていけるんじゃないかということで、チームでまとまってラボで企画、開発を行うようになりました。12月にコンテンツ運用の方が入って来て、現在は4人体制です。4月からの半年は個人戦で、9月以降はチーム戦でやってきました。
訓練や企画開発をしていて良かったなと思うことは?
小林 自分の仕事をやっていく上で、色々な経験を積んだ方、千葉さんや僕の直属の上司の方など、自分よりも何歩も先に進んだ人を見ながら仕事をできるというのが大きな刺激になります。これは、学校だけでは得られないですね。社会人の方と一緒に働いてみて、自分の力がどれだけ足りないかということを分かっていくというのが一番大きな刺激になりますね。
苦労した点はありますか?
小林 8月、9月は、六本木ヒルズの本社でフルにコミットしていたので、仕事量も多くて大変でした。逆にそれがいい経験になって、今の仕事の効率化につながっています。
 ラボの運営という意味では、色々なメディアを作っていきたいので、企画者、開発者など、たくさんの人材を集めていきたいなと思っています。現状では、人数があまり多くないので、人集めは悩みどころではあります。
どのような学生に湘南アドバンストラボに来て欲しいですか?
小林 基本的にはやる気があれば、どんな学生にも来ていただきたい。あとは、モバイルに興味があるとか、新しいメディア、文化を作っていきたいなという熱い思いを持っている学生がいれば、学校、地域を問わず、どんどん集めていきたいなと思っています。
千葉さんもこんな学生に来て欲しいということはありますか?
千葉 いっぱい経験をしたい人。ベンチャー志向がある程度あって、それをいち早く経験してみたいなと思っている人にはどんどん入ってきて欲しいと思っています。学校では学べないことが、きっちり学べると思うので、絶対にプラスになると思います。
 実は今、研究開発で作りたいテーマに「携帯電話サイト向け高機能検索エンジン」があります。全ての携帯電話対応サイトをクロール(収集)して、効率的に検索結果を表示し、そのコンテンツに適した広告が自動マッチングされるシステムです。日本最高、世界最高の品質を作りたいと思っているのですが、こういったテーマを一緒に取り組んで頂ける学生の方も、ぜひいらして欲しいですね。
千葉さんから見て、湘南アドバンストラボの学生さんの活躍ぶりはどうですか?
千葉 非常に優秀ですね。最初はどうなることかと心配なところもあったのですが(笑)。めげることもなく、弱音を吐くこともなく、研修の個人戦も終わり、団体戦になってもきちんと成果を出していて、やると言ってきたことを、きちんとやってきているんですよ。大枠スケジュールも守りながらやってきていて、そういうことから本気度は伝わってくる。

湘南アドバンストラボの様子

11月と12月に2つアウトプットを出していますけれども、さくっとできたわけじゃなく、下積みがあったからこそ、機動性を持って早く作れたと思っています。そういう意味では研修も身についているんだなと思います。
 あと、本社との関わりもうまくできていて、小林さんがうまく社会人と学生の難しいコラボレーションを調整する役をうまくやれたおかげだと思っています。それらをを含めて僕は満足のいく途中成果が出ていると思います。
 あとは、これをどう展開していくかです。ユーザが集まって企業が広告を打ちたいようなメディアに育っていくかどうかということが一番大事。そのためには色々な人の力が必要なので、マーケティング、企画、開発、もしかしたら営業も必要かもしれなくて、そういった色々なことに興味のある人たちが集まって自由にやって欲しいなと思っています。
湘南アドバンストラボに対する千葉さんの仕事の関わり方はどんなものですか?
千葉 湘南アドバンストラボは僕の管轄で運営をしているんです。ときには叱り、ときには褒め、ときには予算をつけ、暖かく見守るのが僕の仕事です。
 目標は非常にシンプルで、まず第1ステップは自活することです。自分でつくったサービスで収益を上げて、自分たちの給料を稼ぐ。これは、1つのミニベンチャー企業だと僕は思っています。湘南アドバンストラボという1つのベンチャー企業があって、そこがビジネスをやっている過程として見ているつもりです。なので、自分の直轄でありながら、ある意味で藤沢市の小林社長さんを見ているような感覚に近いです。1つの小さな学生ベンチャー企業と取引をしている感覚を心の中で持っています。
 ベンチャーとして成り立つためには、彼らはまず自活することが大事です。自活するために、よちよち歩きから立つところまでは全面的に応援するつもりです。立ち始めたら、うまく回って欲しいなと思います。回った先には、この間彼にも話したんですけれど、本当に面白いなと思ったらこれを持って独立するもよし、分社化するもよし、手はいくらでもあるわけで、うまく使って欲しいなと思っています。そこまで一緒にやっていきたいなと思っています。
湘南アドバンストラボは、産学連携の部類に入ると思うのですが、産学連携でうまくいっている部分、うまいっていない部分があれば教えてください。
小林 うまくいっていない部分というか、これまで挑戦できていなかった部分ということになるんですが、大学の研究機関、SIVなど直接組んで何かサービスを作っていくという部分がまだ挑戦できていなかったので、まだそこは足りないかなと思います。当然、今後、挑戦していきたいなと思っている部分ですね。
 良かったなと思う部分は、仕事で学んだことが学校にもいかせるし、学校で学んだことを仕事でもいかしていけるというような相乗効果を生んでいける点です。あとは、大学のコミュニティーを使って、面白そうな人材を集めていけることが大きなところかなと思います。
 SFCであれば研究会の人たちをたくさん集めて、今、会社でやっていることを研究プロジェクトのテーマに、逆に研究プロジェクトでやっている成果を仕事にいかしていくというようなことができたりということがあるので、そういう部分はすごく大きいかなと感じています。
千葉さんは?
千葉 うまくいっている部分は、彼が言った部分と同じです。学生個人にとって、どんな事業、どんな研究でも絶対絡められるんですよ。例えば、技術者であれば、自分が考えた仕組みを何万人も使うサービスで動かしてみることができたりする。こういうことは、なかなか学生のレポートの研究の範囲ではできない。もちろんサービスをする責任があるので適当なものは出せないんですけれど、緊張感を持ってできる場がある。これはマーケティングでもそうですし、企画でもそうです。仮説と実証実験が実際のサービスを通してできるというのは絶対武器だと思います。
 一方で、産学連携という意味では、学校とのコラボレーションをしきれていないなという反省点があります。そこはSFCと一緒にできないものかなと考えています。
 企業対学校のコラボレーションでは、学校と一口に言っても、学校にはたくさんの教授がいるので、どの教授と一緒にやるかによって結果が全く違ってきます。企業から見ると、出身者でもない限り、どの先生と一緒にやったらいいか全く分からない。そういったことも産学連携を難しさの1つだと思います。
 企業がお金を出して、設備や研究資金を提供して、1年に1回報告してくださいというものは大企業と大学のやり方なんですよ。お金もある、時間もある、だからうまくやってくれ、1年後出してくれ、これが今までのエスタブリッシュな世界だと思うんです。
 ですがベンチャーはお金もあまりない、スピードが早い、今成果が欲しい、こういう感覚じゃないですか。アイデアとやる気はある。こちらも体を出すから、あなたも体を出そうよというコラボレーションは今まで実はうまくいってないんです。せっかくSFCなんだから、もうちょっと何かできるといいなと思っていますね。うちの反省点として、そういったことを思っています。
SFCの環境と起業について、何か感じることがあれば教えてください。
千葉 環境としてはとてもいいと思いますよ。なぜかというと2つ理由があります。先輩がいっぱい起業しているということ。2つ目は、学校自体がそういう風土があるところ。特に先輩です。この六本木ヒルズだけでも、数人SFC卒のベンチャーの幹部の人間がいるわけですし、その人たちをうまく使えば、こんなに大きな武器はないと僕は思っています。
 デメリットとして、そのネットワークが機能していないなという感覚もあります。1対1で現役の学生さんとOBの人が会えば、気があって何かやろうかという話になるかもしれないのですが、出会う場所がないんですよ。この間のORFでパーティーがありましたけど、あそこで出会うかといえば、出会うようで出会わなかったりします。どうしたらいいのかなと少し考えています。
 特に卒業生でログイン名で言うところの90から95くらいまでの人たちは、ちょうど10年目くらいに差し掛かってくるので、色々な企業の中でいい感じのポジションについているんですよ。大体、新規事業企画とか経営企画とかIT系とかそういう部署にいる確率が高いです。そういう部署にいると、大企業だったら大企業の中でも新しいことをやる部署、投資する部署だったり、僕みたいにベンチャー企業だったら、ベンチャーの上のほうにいたりすることが多い。うちの会社にも僕以外でもう1人取締役でSFCの3期生の五十嵐洋介さんがいます。こういった卒業生が、どこにいるのかということをSFCネットワークとしてあまり把握できていません。
 例えば、現役の学生がベンチャー志向で色々なベンチャーを回ってみたいなといったときに、SFC卒のベンチャー役員リストがないから、OB訪問ができないじゃないですか。人づてで紹介してもらうしかない。僕なんかはSFCに育てられたという感覚が非常に強いので、現役の子たちがそういう志向を持って来る分には、全く知らなくても時間を作りたいと思っているし、応援したいと思っているんですね。けれども、そもそもそういうつながりがないから、言われることもない(笑)というのがあります。もったいないと思います。
SFCの環境と起業について、小林さんは?
小林 いい点は、先ほども千葉さんが言っていたように先輩が非常に多くベンチャー企業で活躍しているというのがあります。
 
 悪い点は、先輩につながりにくいのもそうですし、学生自身が自分でビジネスをやってみようと思ったときに、スムーズにベンチャー企業につながるというような、自分でベンチャーを始めようと思う人のための環境整備が弱いかなと感じますね。
 あと、この間CDPオフィスで、SFC生は就活になると大企業志向で大企業に行ってしまう学生が9割以上というような話を聞きました。そういったところが何でなのかなというのをもう少し掘り下げて考えてみたいなと思っています。
 学内にはビジネス系の授業があったり、SIVという団体があったり、先生の中にもコンサルティングをやっている方などもいるので、ビジネスに向いた環境があると思います。学内でも色々な接点をもっと持てるだろうし、そういうところから、色々な先輩につながるということもできると思います。そういったつながりをもう少し増やせないかなと思っています。
将来的に湘南アドバンストラボがこうなっていければいいなというようなビジョンなどがあれば教えてください。
小林 僕自身はあと1年間で大学を卒業する予定ではあるので、その後、どうしていくかという話は当然あるんですけれど。少なくともこの1年間は、ラボ単体でメディアを作り、かつ収入も得られるようにすることと、それができる体制つくりに力を入れていきたいなと思います。面白くてきちんとビジネスとして成り立つメディアを作っていけるような組織体制を作り、きちんと自活したいですね。
 あとは、今年の目標なんですが、ケータイコインよりも会員数が集まり、ビジネスとしても面白いサイトを作りたいなと思います。ケータイコインに追いつけ、追い越せということを目標にこの1年間、頑張っていきたいなと思っています。
 ゆくゆくは、組織としても大阪支社などのいずれの事業所にも負けないような独立体にしていきたいと思います。
千葉さんは?
千葉 いいネタを見つけて、小林さんにはぜひ独立して欲しいなと思っています。
このインタビューを読んで湘南アドバンストラボに参加したいと思った学生はどうすればいいですか?
小林 僕のところまでぜひメールを下さい。やる気のある人、モバイルに興味のある人など、学校、地域を問わず募集しています。少し興味があるだけでも全然かまわないので、話を聞きに来て下さい。むしろ、こちらから話をさせて頂きたいくらいなので(笑)、興味のある人はぜひ連絡をください。いつでも参加者待ってます。

湘南アドバンストラボの様子

メール:小林慶太 kobayashi-k(at)klab.org まで
((at)を@に変えてください。)