大学で働いているのは教員だけではない。教員以外の大学で働く人に焦点をあてる新連載「SFCではたらく人」。第1回は、入試から入学までを支える学事アドミッションズ・オフィス担当の方に話を聞いた。

入試の多いSFC 年中無休のアドミッションズ・オフィス

—— 「アドミッションズ・オフィス」では、どんなお仕事をしているのですか?

まずは広報をすることによって受験生の皆さんにSFCに関心を持ってもらいます。そして、入試を受けてもらい、合格した人に入学手続書類を送ったり、学生証を発行したりするなど、皆さんがSFCに入学するまでが私たちの主な仕事です。
 広報関連では、オープンキャンパスや受験生向けのイベントの準備・運営を行います。入試関連では、大学・大学院の募集要項をつくることから始まり、出願を受け付けて審査ができる体制を整え、試験を実施するという、一連の入試実務の裏方をやっています。
 つまり、皆さんのSFC受験・入学における「入学式まで」の仕事をやっているということですね。皆さんが入学したあとの履修などについての業務は、別部署の「教務」の担当です。

—— 広報イベントを企画して、入試の準備をして、入学の手続きをして……一年中忙しそうですね。

そうですね。SFCは、AO入試が年に3回あって、大学院入試も年に2回、さらに英語で実施するAO入試(グローバル)もあります。SFCは入試がとても多いので、私たちが入試に関わっていない期間は、1年のうち1ヶ月あるかないかです。何かしらの入試がいつも動いているという感じですね。

—— 1年のなかで、特に忙しい時期はいつですか?

まさに今(7月上旬)……ですかね(笑)。9月入学の入試と来年の4月入学のAO入試の業務をやりつつ、オープンキャンパスやそのほか受験生向けイベントの準備など、いろんなものを同時並行でやらなければいけないという意味で、今の時期が一番忙しいです。仕事量だけでいえば、8月から9月にかけて4月入学Ⅰ期のAO入試を出願してもらう時期が一番多いですね。ただ、それは単純に仕事の量が多いということなので、慌ただしいという意味では、やはり今です。

入試業務の基本は「トラブルなく出願・審査・通知」

—— 仕事のなかで、うれしいのはどんなときですか?

皆さんに迷惑をかけず、トラブルなく入試が進み、無事に合格発表までたどり着いたときが一番安心します。「トラブルなく」ということが入試業務では本当に大事なのです。

—— トラブルなく入試が進む、とは具体的にどういうことでしょうか?

「ちゃんと出願した」という方が「ちゃんと審査」された上で結果が出て、その結果が受験者に「ちゃんと伝わる」ということです。正しく手続きされた出願に対して、きちんと審査をして、結果をお返しする、ということがすべてなのです。
 特に最近は海外からの受験も増えており、様々なバックグラウンドの方が受験されるので、できる限り事前に募集要項で明記するなどのあらゆる防止策を設け、トラブルが起こらないよう努めています。

—— 海外からの受験となると、仕事で英語を使う機会は多いですか?

そうですね。大学院入試は随分前から日英両方でおこなっていますし、AO入試(グローバル)は完全に英語だけで実施しています。私も日常的に英語でメールのやり取りをしています。アドミッションズ・オフィスに限らず、SFCで働いていると英語を使う機会は大変多いです。SFC自体が多言語・多文化圏の学生を受け入れる体制でやっているので、事務側も当然やるべきこととして、あらゆるものを日英併記にして日本語がわからない人が困らないような体制を整えられるように動いています。

「入ってよかった」学生の成長が仕事のやりがい

—— 仕事のなかでやりがいを感じるのはどんなときですか?

うれしいのは、広報イベントに参加してもらい、実際に入学してもらい、学生の皆さんから「入ってよかった!」と言ってもらえることです。受験生とSFCの間を取り持つことで、少しは皆さんのお役に立てたかなと思えます。
 あとは、学生の皆さんが元気に過ごしている姿を見ると、「あぁ、やってよかったなぁ」と感じます。「あのときのあの子が、こうなったんだなぁ」という時間の経過を見られるのは、やっぱりうれしいですね。例えば、オープンキャンパスに来てくれた受験生が、入学後に学生ガイド(アドミッションズ・オフィス直属の学生広報スタッフ)をやってくれるということもあります。1年生、2年生……と学年を経ていくうちに、だんだん成長する姿を見ると、大きなやりがいを感じます。

ネットや口コミにあふれる「SFC情報」へのジレンマ

—— 反対に、学生のこういう行動が困る! ということがあれば教えてください。

難しい質問ですね。トラブルが起これば困るのは当然ですが……しいていえば、入試広報という立場からすると、SFCについての思い込みや間違った情報を語られてしまうことでしょうか。
 もちろん、SFCに対する批判や改善すべき点を語るのは問題ありません。しかし、なかには個人の思い込みだけで、例えば「AO入試はこうだ」などと語られてしまうことがあり、「本当はそんなことないのに」と残念に思うことも少なくありません。勝手な思い込みが受験生に広まってしまうのが、最も恐れていることです。
 私たち大学側がやる広報には限界があります。広告と一緒で「いいことしか言わないでしょ」と思われて当たり前ですから。受験生やご家族の方々は、学生の皆さんが話していることが最も実態に近いと感じられているのではないでしょうか。
 幸いにもたくさんの受験生がSFCの入学を希望してくださいます。だからこそ、例えばツイッターで、皆さんは“ひとりごと”をつぶやいているつもりでも、「SFC生がこういうことを言っている」と思って見ている方もいるのです。入試を広報する立場からの理想をいえば、学生の皆さんにはそういうことも意識してつぶやいたりしゃべったりしてもらえるとうれしいなぁ、と思います。
 誤解してほしくありませんが、批判をしないでほしいということではないのです。当然、SFCにはよいところも悪いところもあるし、それはもう率直に語っていただいて構いません。ただ、自分の発言に無責任にならないようにだけ考えてもらえると助かります。とはいえ、皆さんも広報しているつもりで話しているわけではないでしょうから、難しいことですよね。

「SFCのリアルを語れるのは皆さんです」

—— 最後に学生に伝えたいことがあれば教えてください。

アドミッションズ・オフィスは、私たちなりにSFCの魅力を伝えているつもりですが、どうしても私たち大学側がやると宣伝っぽくなってしまう部分は否めません。SFCのリアルを語れるのは学生の皆さん一人ひとりです。自分の言葉が一番外に響いていると思って、良いこともそうでないことも含めて、将来の後輩たちに伝えてもらえたらいいな、と思います。「SFCが楽しい」という皆さんの気持ちを少しでも後輩たちに語ってもらうことが、一番の広報だと思うので! そういうところで協力してもらえれば、私たちとしては一番ありがたいですね。

毎年、当たり前のように開催されるオープンキャンパスなど数々の受験生向けイベント。出願すると当たり前のように届く受験票、入学が決まって当たり前のように受け取る入学資料。そんな数々の「当たり前の裏」で働いている人々の存在に気づかされるインタビューだった。
 大学というクリエイティブな場だからこそ、「組織として回す」ということがどれだけ難しいかを想像できるだろう。SFC CLIP編集部は、今後も「SFCで働く」を追っていく。