6月22日(金)、SFC研究所イスラーム研究・ラボと奥田敦研究会が主催する断食明けの夕食会「ラマダーンナイト」が開催された。会場では「共生社会の構築に向けて」とのタイトルでパネルディスカッションを行った後、生協食堂へ移動しハラール料理が振る舞われた。

ラマダーンはイスラーム歴における9月の意味で、この期間、ムスリムは日の出前から日没まで断食を行う。断食と聞くと「苦行」のようなものを連想してしまう人も多いかもしれないが、実際は祭りのようなもので、自分で決めたことを守り通す大切さを学び、とてつもない空腹の後の食事を楽しむイベント的側面もあるという。

「共生社会構築に向けて」 パネルディスカッション

パネルディスカションの様子。 パネルディスカションの様子。

モロッコ出身ハサン・ボーアマルさん(政メ博士課程1年)のクルアーン独唱が行われ、会場は厳粛な雰囲気に包まれた。

その後、イスラーム圏における地域ごとのラマダーンの違いについて、インドネシア出身のアフマド・フスニ・タムリンSFC研究所上席所員、モロッコ出身のハサン・ボーアマルさん、スリランカ出身のサムスッディーン・ムハンマド・イムティヤーズさん(ヒラール学院代表)が、出身地でのラマダーンの様子について報告した。また、断食の義務のない子供達にもラマダーンを楽しんでもらえるよう、大人たちは様々な工夫や配慮をしているという。

続いて、「シリア、アレッポ復興プロジェクト」について、植村さおり非常勤講師とアフマド・アルマンスール訪問講師が説明した。シリアの内戦や、現地の過酷な生活の状況が報告され、その中でも、アレッポ大学との交流を続けていることや教育事業を支援していることを話した。「今後のシリア復興を担っていく子供達が、最低限の教育さえも受けられないのは、後々大きな問題となる」と植村講師は語り、活動への募金を呼びかけた。その後、齋藤夏海さん(総3)が「アラブ人留学生歓迎プログラム(ASP)」の活動について報告した。

第2部ではハサンさんなどが日本に来たムスリムが困っていることなどを話し合った。最後に「SFCにできること」をテーマに奥田敦総合政策学部教授が話し、「見ることはあることを知ること。そして信じること」と「目に見えるものの裏にあるものを考えること」の重要性を説いた。また、クルアーンに書いてあることは決して特別なものではなく、人間誰しもが実践する価値があることを語った。

パネルディスカッションのあと、断食明けの夕食会のために、生協食堂(サウスウィング)に移動した。

イスラーム文化にふれる、断食明けの夕食会

参加者は着席し、談笑しながら19時の日没を待った。

日没後、参加者は机の上に用意されたタムル(ナツメヤシ تمر)を口にする。最初にタムルを口にするのは、断食明けの胃が荒れないようにする意図のほかに、イスラームの預言者ムハンマドの教えによるという。

ナツメヤシのドライフルーツ、タムル(تمر)。アラビヤ語インテンシブ履修者の間では、授業の導入段階にアラビア文字を学ぶ際の「ت」(/t/の音価をもつ文字)で始まる単語の例としてお馴染み。 ナツメヤシのドライフルーツ、タムル(تمر)。アラビヤ語インテンシブ履修者の間では、授業の導入段階にアラビア文字を学ぶ際の「ت」(/t/の音価をもつ文字)で始まる単語の例としてお馴染み。

各種ハラール料理が振る舞われ、会場は賑わいをみせた。 各種ハラール料理が振る舞われ、会場は賑わいをみせた。

会場では、ハラール料理の提供の他に、奥田研による映像作品の上映や、株式会社伝と文教大学笠岡ゼミによる「ハラールレシピ開発プロジェクト」の紹介、協賛企業からのハラール関係物品の配布、またSFC研究所イスラーム・ラボと空港総合研究所の共同研究「アッサラームアクション」の紹介も行われた。

奥田教授による「アッサラームアクション」の紹介の様子。 奥田教授による「アッサラームアクション」の紹介の様子。

アラブ人のムスリムと日本人の参加者が談笑し交流する様子が見られ、ムスリムでない参加者にとっては、ムスリムと交流し、イスラーム文化にふれる貴重な機会となった。

盛況のうちに幕を下ろした「ラマダーンナイト」。全体を通して、平和(サラーム)のためのメッセージが込められているように感じられた。異文化に触れ、相手を知ることが、争いを生まないための第一歩となるのではないだろうか。

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