SFCにコラボレーションの場をつくる! カフェプロジェクト代表インタビュー
今年の春学期、SBC滞在棟とSBCセンターでカフェイベントがあったことを記憶している読者もいるかもしれない。伊達研究会が中心となってすすめている「カフェプロジェクト」の一環として行われたものだ。
カフェプロジェクトとは、伊達研とバイロンベイコーヒーが協働し、SFCにカフェを誘致するプロジェクトだ。前回のイベントから3ヶ月あまり、カフェプロジェクトの現状について代表の森川智貴さん(政メ1)に話を聞いた。
交流を通して「アイデアをカタチ」につなげる
—— このプロジェクトはどのようなきっかけから始まったのですか?
伊達研のミッションは、『誰もが健康状態を把握し、Life Designできる社会をつくる』ことです。「医療・ヘルスケアの分野へ非医療者としていかに介入できるか」に焦点を当てていて、最近では医療従事者や地域の高齢者といった方々と共に、地域包括ケアに取り組んでいます。
そんな中で、一つの問題を解決するためには、様々なステークホルダーと手を取りあい、お互いの強みをコラボレートさせ、社会システムをみんなで作り上げていくことが大事だと学びました。
そのような学びを深めていく中、研究会でディスカッションははずむ一方、理論的に考察することの限界や、まだまだ実社会でチャレンジするには参入障壁が高いフィールドだということを感じてきました。そこで、医療や福祉といったフィールドのみではなく、机上ではなく実社会にてより実学的に学んでいくプロジェクトとして自分たちのキャンパスにおける生活に着目し、SFCのコミュニティが個別化していることを課題として捉え、「人と人が共創する場を生み、アイデアにカタチを」というビジョンをもとに、SFCカフェというプロジェクトに取り組んできました。
—— コラボレーションという視点から見たとき、現在のSFCの状況についてどう感じていますか?
大学に通う中で、よく話す人たちは、研究会やサークルに限られてきてしまいますよね。そんな中でたまに自分の外のフィールドの人たちと話すと、刺激をもらえるな、と感じてきました。そんなふうにいつかコラボレーションしたいと思う人がいるのに、交流を深める場がない。
昔のSFCは、ムラ的なコミュニティだったと聞きます。誰が、どこで、どんなことをしているのか、どんな研究をしているのか、どんなサークルにはいっているのかを多くの人が知っていました。それも、今あるようなSNSがない社会でです。私たちは、"つながること"、"シェアすること"が大切だと思っています。だから、LINEを使っていつも友達とつながっている。今のSFC生たちは、先輩たちよりもつながれているはずなのに、なぜ交流が少ないのか? 私たちは、現代のSFCはオンラインでのコミュニケーションが主流となり、オフラインでのコミュニケーションが希薄化していると感じています。
もしキャンパスにカフェのような、フランクに交流できる場があったら、今までになかったオフラインでのコラボレーションが生まれるのではないか、そう考えたんです。そうしたコラボレーションができたら、今までには浮かばなかったようなアイデアが生まれるなど、個人にとっても有意義で、キャンパス全体の活性化にもつながると考えています。
カフェを「コラボレーションの循環」の場に
—— なるほど。交流の場ということを意識して、SFCにカフェをつくる試みは始まったのですね。
はい。去年の11月頃にカフェプロジェクトの構想ができあがりました。ほぼ1年前になりますね。カフェという場を介して、コラボレーションしてもらうわけです。
また、コラボレーションのきっかけとなる交流の場を提供することに加え、「生まれたコラボレーションを支援する」活動もしていきたいですね。カフェで知り合った人たちが、一緒に何かを取り組むことになったとき、カフェの売上をもとにマイクロファンディングという形で還元する。大掛かりなチャレンジではなくちょっとした取り組みのための、一案件につき数万円くらいまでの少額支援です。
さらに、そうしたコラボレーションの成果を発表するお披露目の場として使ってもらうことも考えています。このような、コラボレーションの「循環モデル」を実現することを掲げています。また、カフェを作り上げていく過程でも、多様な分野の人と協力できたらと思っています。「つくるところからコラボレーション」ですね。
カフェプロジェクトの道のり
—— 春学期にSFCでイベントが開かれましたが、その後プロジェクトはどのように展開していますか?
春学期にSBCで配布会を行ったあと、7月から10月まで稲村ヶ崎(鎌倉市)にお店を出したり、ヨガフェスタ(横浜市)というイベントに出店したりしました。実際に出店するなかでノウハウを蓄積することができました。天候リスクだったり、財務計画、交渉だったりですね。最初は3人から始まったプロジェクトなんですが、今は学部一年生も加わってくれて、仕事を分担して取り組んでいます。
今夏は学外での出店が行われた (カフェプロジェクト資料より)
「コラボレーションのためのカフェ」を実現するためには、やはりカフェを運営する上でのノウハウが必要です。カフェとして衛生面に注意することはもちろんですが、マイクロファンディングのためには利益を上げなければいけませんから、経営面も重要です。そういったオペレーションの部分をしっかりやっていきたいですね。
現在は自治体からの営業許可証がとれている段階で、藤沢市、鎌倉市、横浜市から喫茶店としての許可を取得しています。SFC内で営業する場合は、藤沢市からの許可が関係してきますね。
私たちが構想しているキャンパス内での営業の場合、大学側からも許可が必要なので、現在話し合いを進めているところです。大学としても、学生の食環境や食育といったことには関心を持っているようです。このカフェプロジェクトを通して、学生のみなさんの食への関心も高められたらと思っています。僕たちヘルスケアの研究会なので!(笑)
学外とのより広いつながりを視野に入れて
—— 将来的に食べ物も提供する予定はありますか?
現時点で取得できている喫茶店としての営業許可だと、フードメニューも包装されたものなら販売することができます。地域の人たちが生産したフードメニューを提供するなど、地域の人たちを巻き込んでいけたらいいですね。また飲食店としての営業許可が取得できれば、その場で調理したものを提供できるようになります。
またOB/OGの方々にも、在学生との交流を望んでいる方がいらっしゃいます。ゲストスピーカーとしてキャンパスに来ている方が、一コマの授業ではとても伝えきれない、とおっしゃっていました。そういった方々にもカフェを利用してもらえれば、学生とより近い距離で交流してもらうことができますし、授業をとっている学生以外とも交流できます。こういったところから学外ともコラボレーションが生まれるかもしれません。
当初は学生どうしの交流を促進する場として構想していましたが、キャンパス周辺の方々や卒業生のみなさんとも交流のできる、そんなWIN-WINの関係が築けたらいいですね。
「ただのカフェ」をこえたコラボレーションを促進する場に
—— 以前のインタビューでは、営業許可などの申請前で、そういった手続きの部分をきっちりしなければならない大変さがあると伺いました。現在取り組んでいて大変に感じる部分はありますか?
現時点では、期間限定での出店を通してノウハウもある程度蓄積され、それにともなって実績もできてきている状態です。今は、大学側や利用者のみなさんに、どのようにこのコンセプトを理解してもらえるか、という段階に入っています。
そういう意味では、このカフェが「ただのカフェ」として認識されてしまうことが一番のリスクだと思っています。「コラボレーションからアイデアが生まれ、カタチになる」ことが一番の価値だと思っているので、そういった部分は大切にしていきたいですね。私たちとしても、コラボレーションを促進するための具体的なアイデアを検討しているところです。例えば、コーヒーのスリーブで自分の特徴を可視化する、などですね。「この人デザイナーなんだ、話しかけてみよう」みたいに。そうした仕掛けが、一言目を話すきっかけになって、新たな交流が生まれてほしいと思っています。
—— 確かに、コーヒーを飲むだけだったら、サブウェイやタブリエがありますものね。だからこそ、気軽に話しかけられる仕組みづくりは素敵だと思います。
仕組みづくりは難しいこともありますが楽しいです。ぜひみなさんにこのカフェの仕組みを知ってもらい、応援してもらえるような取り組みを進めていきたいです。ぜひこのプロジェクトに興味のある他の研究会の人とも一緒にやりたいので、ふらっと伊達研にも遊びに来てください。月曜日の4, 5限にε18にて行っています。
—— ありがとうございました。
きょう18日(金)始まったORF2016の2日目19(土)に行われる「SBC X プレミアムセッション」には、カフェプロジェクトに関する内容も含まれるという。関心のある方はぜひ会場に足を運んでみてはいかがだろうか。