6月19日(月)-23日(金)と7月11日(火)-13日(木)の2回にわたり、かまぼこハウスにて半自炊形式で食事を提供する「おかわり食堂」が開店した。SFC CLIP編集部はその様子を取材し、主催者の1人である吉岡太郎さん(総2)に話を聞いた。

半自炊形式の食堂「おかわり食堂」とは

「おかわり食堂」は、参加者が料理を作る=「自炊」することが特徴の食堂だ。日ごとにメインメニューが決められており、それを作るための食材も用意されている。参加者は他の参加者やサポート役として会場にいる「おかん」と一緒に料理をし、それをいただく。参加費は1人500円だ。

取材当日のメインメニューは餃子。参加者は会場となったかまぼこハウスに来ると、それぞれ一緒に来た人やその場で出会った他の参加者と協力して餃子を作っていた。

メインメニュー用の材料以外にも、オプションの材料が用意されている。取材当日はSFCの地元である遠藤で作られた野菜が用意されていた。主催者の吉岡さんによると、開催当日に農家の方からいただいたのだそうだ。参加者はこれを自由に使って好きな料理を作ることができる。

そして、メインメニューや自分たちで作った料理に加え、「おかん」手作りの副菜も楽しめるのが「おかわり食堂」のもう一つの特徴だ。完全自炊ではなく半自炊形式の食堂なため、料理が苦手な人でも気軽に参加することができる。取材当日は、お味噌汁・ご飯・ポテトサラダ・甘唐辛子の和え物などが用意されていた。

目指したのは「第2、第3のホームづくり」

主催者の吉岡太郎さん(総2・写真右)と小川賢人さん(環2・写真左) 主催者の吉岡太郎さん(総2・写真右)と小川賢人さん(環2・写真左)

—— 「おかわり食堂」を始めたきっかけは何ですか?

僕らが「おかわり食堂」を通じて最初にやりたいと思ったのは、「第2、第3のホームづくり」でした。家族でもなくて、でもいつも活動している場所でもない、2つ目、3つ目の居場所のようなものを作りたいと思ったのが最初でしたね。

僕の両親は共働きで、小学生の頃はいつも家にいませんでした。学校もなんかちょっと面白くないなと思っていて、悩んでいる時期がありました。隣に90歳のおばあちゃんと7、8人の家族が住んでいたんですが、ちょうどそのタイミングで野球を教えてもらうついでに一緒にご飯を食べるようになって、毎日通うようになったんです。小学生って学校が1つの居場所ですけど、他の居場所の選択肢って少ないですよね。その中で「小学校での自分」というイメージもあるし、演じなくちゃいけない部分があります。でも隣のおばあちゃんの家は、小学校でもないし家族でもないから行かなくなったら切れちゃう関係だったんですが、すごく居心地が良くて、一番自分が自分でいれたんです。大学に入った時、今度は自分がそういう場所を作りたいと思って、それが「おかわり食堂」を始めるきっかけになりました。

—— もう1人の主催者である小川さんと活動を始めたのはなぜですか?

都内で塾のようなものに一緒に通っていて、その帰りに「実はこういうことを考えている」と話したらすごく共感してくれたんです。最初はお互い別のプロジェクトをやっていたのですぐには着手できなかったんですが、何回か会って関わっていくうちに、気も合ったし、やっぱり一緒にやりたいなと思う気持ちが高まったんですよね。そのタイミングでちょうど一緒に飲む機会があったので、そこで思いきって誘ってみました。

「おかわり食堂」が半自炊形式になるまで

—— 「おかわり食堂」を始めたのは、前回(6月19日(月)-23日(金))が初めてですか?

前回が初めてでした。以前は家みたいな場所を提供したかったわけではなくて、変な話、「家」と「キッチン」みたいに食卓を家から切り分けたかったんです。シェアハウスまではいかないけれども、シェアキッチンみたいなある程度固定された定期的に通える場所を作りたいと思っていました。その場所に行ったら、ご飯が出てきて、いつものやつらがいる、そしてご飯を食べて自分の生活に戻っていく…といった場所です。それで、ずっと会員制の食堂をやりたいなと思っていました。最初は外国人向けにやろうと思っていて、実際に1回おせちパーティーをやったりもしましたね。

—— 「おかわり食堂」の形式はそれと正反対のものともいえますが、どうしてですか?

正反対ですよね。でも、とあるシェアハウスでゆるーくご飯会みたいなのをやっているところに行ったことがあったんですが、そこでは「おかわり食堂」みたいにみんながゆるく集まって、食材もあってご飯を作って、ゆるく揃ったら食べる、といった感じでした。「後から来た人はできることをやる」という雰囲気でやっていて、最初その会に参加した時は初対面同士だけど、食卓に対してちょっと自分なりに貢献して、というような感じでした。

サークルとかってあまりコミットできていないといづらくなりますよね。僕自身も以前にサークル入ってそれを実感してて。初対面だけど、より居心地よく、自分の場所だとしてもらうためにはどうしたらいいかなと考えた時、こういうゆるいスタイルでやったらいいんじゃないかなと思ったんです。それで、半自炊の形式で試してみようってなりました。

「おかわり食堂」を開店してみて

「はじめまして」の人と一緒に食卓を囲む 「はじめまして」の人と一緒に食卓を囲む

—— この形式で開店してみて、いかがでしたか?

最初は広報が遅れちゃったというのもあってあまりお客さんが来なかったんですが、SFC生はすごく優しくて、初対面の人が「私もツイートします!」って言ってくれたり、「拡散するので早くSNSに投稿してください!」って言われたり(笑) 6月に開店したときは1週間で60-70人が来てくれて、その中でもリピートしてくれた人が10人くらいいました。2回来てくれた人とか、3日連続で来てくれた人もいて、作りたかった感じの雰囲気が作れてきたかなと思いました。

—— 「おかわり食堂」はこれからも継続的に開店していく予定ですか?

最終的には常時オープンできたらいいなと思っています。半自炊形式の食堂を開くのは初めてだったので正直どうなるのかなって思ってたんですが、やってみてよかったなって思ったところがあったんです。

初対面の人同士って、席に着いて「お名前は?」「サークルはどこに入ってますか…?」という話から始まったりするじゃないですか。それはそれでいいんですが、勇気がいりますよね。でもこの半自炊形式だと最初に一緒に料理をするので、先にコミュニケーションを取ってしまうんです。だから、食卓での会話を「醤油いりますか?」から始めることができます。最初料理を始めた時は「一緒にどうぞ…」「え?」みたいによそよそしかった人たちが、食卓に着く頃には打ち解けている。そして食べ終わるまで一緒にいる、みたいなものが生まれて、それがとてもよかったです。

—— ありがとうございました。

具体的な日程は未定だが、「おかわり食堂」は秋学期も開店予定とのこと。次回の開店の際にはぜひ参加してみてはいかがだろうか。最新情報は、公式Twitter公式Facebookでチェックしよう。

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