建築家として「紙の建築」などで世界的に著名な坂茂環境情報学部教授の研究会が、2019年度秋学期に設立された。SFC CLIP編集部では、坂教授とすでに研究会メンバーとなっているSFC生に研究会の活動内容などについてお話をうかがった。

さまざまなことができる研究会

—— どんなことをやっている研究会なのでしょうか?

坂茂教授

僕は建築家なので、建築の設計を教えています。それとともに、僕は昔から「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク」という災害時に住環境を改善するボランティア活動をしているのですが、それを学生に手伝ってもらっています。それはやっぱり学生にとってトレーニングになりますし、新しいリーダーを生み出すことにつながっていると思っています。災害時に自分たちができることはたくさんありますから、それを建築にとどまらずさまざまな視点から解決できるように日々活動しています。

活動内容を語る坂教授 活動内容を語る坂教授

—— 所属している学生の研究内容はどのようなものなのでしょうか?

坂茂教授

建築にまつわることであればさまざまですね、建築史をやってる子やデザインをやってる子もいますし。その中でも災害支援は大きなテーマです。それにまつわる活動というのは、事務面など含め多岐にわたりますが、そういった活動は今後社会に出て建築関連で生きていく上ではとても大切なことですので、いろいろなことをやってもらっています。建築を仕事にして生きていくということは自分でPRしたり、営業したりということも自分でしていかないといけません。建築家としてやっていく上では建築以外の分野もやっていく必要があるわけです。

建築と遠い分野で言えば、被災地に有名なアーティストを呼んで被災者を元気付けるといったことをしてもらうこともありますね。被災者といえば自分とは無関係に思えるのかもしれません。しかし昔は大災害といえば地震でしたが、最近は台風だけでも大変なことになりますからね。これは誰にとっても、大きな問題だと受け止めて僕と学生たちは活動してます。

日々成長できる研究会

実際に研究会に所属する、小原寛史さん(総3)、圓谷武大さん(環2)、藤間愛さん(環2)、新井理久さん(環2)の4名に研究会に入った経緯や普段の坂教授について伺った。

高校時代からの憧れで

—— どうして研究会に入ろうと思ったのでしょうか?

小原さん

高校時代から坂先生の作品が大好きだったので、入学して出会ったときから事務所に出入りさせてもらってプロジェクトも手伝わせてもらってました。入学まではまさかSFCにいらっしゃることは知らなかったんですが(笑)。なので研究会発足と同時に即決で入りましたね。

坂教授との出会いを語る小原さん(総3) 坂教授との出会いを語る小原さん(総3)

圓谷さん

高校時代はフワッとデザイン系をやりたいなとしか思ってなかったのですが、入学後に新井と「デザインスタジオ」という坂先生の授業を受けました。そこで建築の難しさや魅力に気づかせてもらったので、やってみようと思い立ち研究会に入りました。

—— 研究会に入るのに必要な知識とかありますでしょうか?

新井さん

僕らも高校時代から建築の詳しい知識があったわけではないです。それこそこの研究会で、もまれながら知識を得ていったといった感じですね。最初は正直、専門用語とかも多くて全然わからないんですけど、プロジェクトを一緒に進めていく過程で覚えていきましたね。予備知識がなくても入れる研究会だと思います。

入ったばかりの頃を語る新井さん(環2) 入ったばかりの頃を語る新井さん(環2)

小原さん

それに建築は難しい一方で、実際の組み立てなどの作業自体は比較的簡単にできるようにできていて、そういったものは予備知識がない1年生でも役に立てると思いますよ。プロジェクトだったり坂先生の展示会だったりなどのお手伝いでそういったことは結構あるので。

—— どんなプロジェクトや活動をしているのでしょうか?

圓谷さん

この(取材場所の)ドームももちろんですが、イタリアのルッカでペーパー・アート、ペーパー・デザイン、ペーパー・アーキテクチャの分野における世界最大級イベント「ペーパー・ビエンナーレ」っていうのがあります。その主催者から日本のSFCの坂先生にぜひ来てほしいと依頼が来ました。その依頼で僕たちは、紙の中でも特殊な、果物の緩衝材などに使われるものを使って紙の建築に活かせないかということなどを現在やっています。

プロジェクトについて語る圓谷さん(環2) プロジェクトについて語る圓谷さん(環2)

—— 紙の建築って実際どのような良さがあるのでしょうか?

新井さん

普通の建築というと、職人さんがヘルメットを被って、大変そうな作業をしている印象があると思います。しかし、紙は軽量で扱いやすく建築ができてしまうということが強みの一つだと思います。もちろんちゃんと素材を理解しないとただの紙なのでダメですけどね(笑)。

藤間さん

私は災害関連を中心に活動しているのですが、被災地という悲惨な場所でも紙からは温かみを感じることができると思っています。これも紙の建築の強みの一つですね。

紙の魅力について語る藤間さん(環2) 紙の魅力について語る藤間さん(環2)

—— みなさんの坂先生への印象を教えてください。

新井さん

有名な方なのはみんな知っていたので、お堅い感じの人なのかなと思っていたら、生徒思いで「プロジェクトもまずはお金とか気にせずやりたいことをやりなよ」と背中を押してくれる優しい人です。

藤間さん

よくご飯に一緒に連れてってくれる先生なのですが、その時にしてくださるお話がとっても面白くて、楽しい人だなって印象がありますね。

小原さん

あと、これは研究会の特徴でもあるのかもしれませんが、プロジェクトで海外にいくことが多いものの、その渡航費を負担してくださることがあります。

圓谷さん

確かに、そういう意味では海外旅行が好きな人にはおすすめかもしれません(笑)。

アクティブな人におすすめの研究会

インタビューでは終始楽しい雰囲気だった。坂教授と過ごす日々が楽しいということが取材を通して感じられた。そして最後に坂教授が求めるSFC生を伺った。

坂茂教授

建築家に限らず、ものづくりをしてみたい、社会貢献をしてみたい人にはおすすめです。社会貢献だっていずれはビジネスになるかもしれませんしね。建築っていうのはオールマイティーで、政治家になる人もいるしデザイナーになる人もいる。だからどんな人でも自分からアクションを起こしたい!という意思のある新入生なら会ってみたいと思います。机の上での研究が好きな人よりは、ものをつくったり実際に現地に行って活動できたりするアクティブな人がいいですね。そして積極性、自分で問題を見つけて解決していく気概のある人と活動していきたいなと思っています。あと、災害支援をテーマにいろいろ活動したいって人なら誰でもって気持ちはあります。興味がある人はぜひ一度会いに来てください。

学生がつくった作品と坂教授 学生がつくった作品と坂教授

取材は滞在棟側のドーム内にて行われたが、内部では災害時の住環境を改善する坂研究会のチャレンジが進んでいた。学生や教授がお互いに意見を交わしながら挑戦している様子が印象的だった。そんな坂研究会の今後の動向からは目が離せない。また、建築だけでなく災害支援に興味があるSFC生なら話を聞くだけでも楽しめるはずだ。ぜひ一度研究室を訪れてみてほしい。

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