3月1日-12日に、オンラインで「SFC Open Research Forum 2020 」(以下、ORF)が開催された。今回は、3月12日19時よりYouTubeにて生配信されたORFの一企画であるLIVEイベント「超鴨池祭」に着目した。

自宅から楽しめる4つのORF研究発表企画

従来のORFといえば多くの人々が六本木・東京ミッドタウンに集まり、SFCの研究活動発表を見に会場へ訪れる。毎年、大きな賑わいを見せてきたORFだが、今年は例年とはひと味違う形で盛り上がりを見せた。

25回目の開催となる「超融合」をテーマとした今年度のORFは、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン開催となってしまったが、昨年度まで実施された3つの企画「展示」「セッション」「Pitch(ピッチ)」に加え、LIVEイベントの「OPEN EXPERIMENTS」と「超鴨池祭」が実施された。新しく加えられたLIVEイベントは、オンラインならではの企画となっており、コロナ禍で外出を控えている卒業生や現役生だけではなく、受験生やそのご家族等、誰でもどこからでも楽しめるように工夫されている。

写真で振り返るLIVEイベント「OPEN EXPERIMENTS」

LIVEイベント「OPEN EXPERIMENTS」では、「ディープフェイク」時代の新たな学問を追求する8つの"実験的対話" がライブ配信で実施された。

新スタイル! ORFでは初めての配信型の対談スタイル 新スタイル! ORFでは初めての配信型の対談スタイル

ライブ配信の裏側を特別に公開! ライブ配信の裏側を特別に公開!

中継も取り入れたオンラインならではの形式 中継も取り入れたオンラインならではの形式

豪華すぎる!? 同窓生企画「超鴨池祭」の詳細

「超鴨池祭」大盛況!

3月12日19時よりYouTubeにて、卒業生有志主催によるORF2020同窓生企画「超鴨池祭」が開催された。このイベントでは、経営者、マスコミ、医療従事者、ミュージシャンなどさまざまな分野の第一線で活躍する卒業生たちが配信番組に出演し、イベントを盛り上げた。当日はなんと、最大同時接続数2,400件以上に加え、ユニーク視聴者数は約10,000人という大盛況を見せた。

スタジオでトークを繰り広げた出演者の方々(左から一青窈さん、KREVAさん、山崎怜奈さん、古市憲寿さん、田中大貴さん) スタジオでトークを繰り広げた出演者の方々(左から一青窈さん、KREVAさん、山崎怜奈さん、古市憲寿さん、田中大貴さん)

特別ゲストとして緊急参戦した鈴木愛理さん 特別ゲストとして緊急参戦した鈴木愛理さん

超鴨池祭とは

ORF2020の一企画である「超鴨池祭」は、SFC30周年を機に、卒業生がもう一度あの鴨池に集まり、現役生や教員と繋がり、SFCの次の30年を切り拓いてゆく、そんなコンセプトで開発がスタートしたSFC生限定のオンラインコミュニティ「鴨池オンライン」の立ち上げを宣言するための企画だということが、番組内で案内された。

「鴨池オンライン」の開発責任者として登壇した張惺(Tehu)さんは、「SFCの生みの親のひとりである加藤寛初代総合政策学部長がおっしゃっていた『ミネルバの森』を、大学が作るのではなく、僕らが自分たちの手で作るんだ」と力強く語った。

「鴨池オンライン」について説明する張惺(Tehu)さん 「鴨池オンライン」について説明する張惺(Tehu)さん

スタジオでのトークに参戦した印南隼毅さん スタジオでのトークに参戦した印南隼毅さん

SFCスピリッツを継承する多様なSFC生が集う「鴨池オンライン」のイメージ図 SFCスピリッツを継承する多様なSFC生が集う「鴨池オンライン」のイメージ図

「鴨池オンライン」の正式な立ち上げは10月を予定しているとのことであったが、事前会員登録は番組放送終了後より開始している。是非、末尾に記載のURLをご確認いただきたい。

今回は、当日の数々の名シーンを「SFCから爆誕! 超鴨池ビト!」「キャンパスビジット」「湘南台グルメ探訪」「KREVAさん&一青窈さんらによる音楽セッション」の4つのパートに分けながら振り返っていく。

①SFCから爆誕! 超鴨池ビト!

サリー楓さん (政策・メディア研究科卒 建築デザイナー)

「君は建築も生き方も全部ボーターレスだから、それを強みにしたら良い」と先生に言われたSFCでの学生時代。この言葉は、サリーさんの人生を大きく変えた。サリーさんはSFCで大学院生だった当時、トランスジェンダーはまだまだマイノリティだと認識されていたが、研究室でカミングアウトをしたサリーさんの周りの人々は受け入れてくれたという。理解して、そして受け入れてくれる環境はSFCであったから当たり前に感じられたが、SFCから一歩でも外に出れば、異なった現実が待っていたかもしれない。このように気づいたサリーさんは、SFCの外の世界でも多様性や個性を大切できる世の中にしたいと考え、トランスジェンダーの建築デザイナーの傍ら、モデルやメディアへの出演などを通して情報発信をおこなっている。

~SFCで学んだ「経営戦略」x「建築設計」~

小学校2年生の時に夢見た建築家への道を追い続け、そして叶えたサリーさん。大学卒業後、海外の設計事務所で働いていたのだが、その時に「ブランディング」という仕事に出会った。そしてサリーさんは、建築設計の分野だけではなく、「経営戦略」にも領域横断した研究ができる場所、SFCにたどり着いた。

—— サリー楓さんからのメッセージ

「SFC生のみなさん ボーダーをこえよう!!」

ボーダーを越えるには勇気が必要である。しかし、サリーさんがボーダーを越えることは怖いことでもなく、悪いことでもないと発信をし続けるには意味があるはずだ。周りに合わせることだけが正しいと思うのではなく、自身が歩みたい道を正直に歩むことこそが人生なのではないだろうか。

新宮良平さん (環境情報学部卒 映像監督)

「若い頃は地獄」、「人間の「死」」というインパクトのあるテロップとともに登場した映像監督の新宮良平さん。欅坂46の「不協和音」や「黒い羊」など、数々のMV/PVを手掛けたということもあり、新宮さんの名前を耳にしたことがある人は多いのではないだろうか。新宮さんは、これまでにない作品を次々と作り出した新進気鋭の映像監督である。

SFCでの学生時代、映画を作るサークルに入部後、SFCのメディアセンターでDVX2000(※現在、メディアセンターでの取り扱いはない)をはじめとした映像制作機材を借り、映像作成に没頭していたと語っていたが、SFCでCGと映像の2本柱で映像を作成し続けていた結果、映像を作る楽しさを感じたそうだ。これは、新宮さんが映像制作と出会ったきっかけとなった。

~ 欅坂46との出会い ~

自身が手掛けたMVはロックバンドが多かったと映像の中で話していたが、欅坂46は女性アイドルであった。そのため、女性アイドルのMVを手掛けることは新しい領域への踏み込みだったに違いない。女性アイドルのMVといえば「華やか」で「明るくて」「可愛い」印象があると思うが、このようなMVの雰囲気は新宮さんにとっては未知の分野であった。しかし、ここで新宮さんは女性アイドル特有の雰囲気に合わせるのではなく、自身の世界観を欅坂46のMVで作り上げた。一見、新宮さんの世界観と女性アイドルの世界観は真逆に感じられるが、実際は驚くほどマッチングした。このように、新しい領域を切り開いていく姿はまさにSFC生らしいといえるのではないだろうか。

—— 新宮良平さんからのメッセージ

「SFC生へ 自分に嘘をつかない」

他人に合わせる必要はない。たとえ、100作ったうちの99を捨てることになったとしても、残った1が嘘のないものであればいいのではないか。SFC生はきっと、この1を見極めることができるはずだ。

吉浦寛仁さん (総合政策学部、政策・メディア研究科卒 共同通信社政治部首相官邸キャップ)

「安倍元首相にあの質問をした政治記者」

安倍元首相の退任記者会見で、実際はひとり一つの質問しかできない中、吉浦さんは2つの質問をした。この時、会場はざわついたそうだ。ここまでして吉浦さんが安倍元首相に聞きたかったこととは何だったのだろうか。それは、「最後の退任記者会見でプロンプターを使わない理由は?」であった。政治に直接的に関連する質問ではないが、これは事前に確認できるものではない上に、その場で気づいた人しか聞けない質問である。この日はあえて使わなかった理由を聞くチャンスがあるのだとすれば、誰もが聞きたいと思うだろう。しかし、行動に移すことができる人は少ないのではないか。ひとり1問と言われてもその枠をはみ出してまで聞く価値があると判断した吉浦さんは勇気のある行動に出たと思う。

—— 吉浦寛仁さんからのメッセージ

「SFCのみなさん ワクワク生きよう!」

正しい道を進むことは大事ではあるが、すでに世の中に存在する枠にとらわれすぎるのは面白くないのではないか。枠にはめられがちな私たちが勇気を出すことで変われることはきっと多いはずだ。

伏見幸弘さん (看護医療学部卒 慶應義塾大学病院看護師・チャイルドライフスペシャリスト)

「日本初! 男性のチャイルドライフスペシャリスト」

このキャッチフレーズを聞いて、チャイルドライフスペシャリストとは何かと疑問に思った人が多いのではないだろうか。私自身も今回、このLIVEイベントの配信で初めて耳にした。日本にたった40人ほどしかいない専門職でありながら、日本で初めての男性のチャイルドライフスペシャリストになったのが伏見さんである。

~ チャイルドライフスペシャリストとは ~

具体的には、子供に医療現場で向き合う職業であり、向き合う子供は大きく分けて2パターンある。1つ目は「子供自身が病気を患っているケース」であり、2つ目は「親が病気を患っているケース」である。伏見さんは、子供と向き合う上で「子供の目線」を大切にしながら、二つのケースにある子供のサポートに取り組んでいる。

医療の知識を子供にも理解してもらえるように説明をすることは簡単なことではないはずだ。大人でも理解できない医療用語は多いからである。そのような中、少しでも助けを必要としている子供のために、誰もが歩いたことのない道を歩き、そして大きな勇気と努力で医療現場のイノベーターとなった伏見さんの姿は、SFCの後輩である私がまさに見習いたいと思う姿である。

—— 伏見幸弘さんからのメッセージ

「SFCの皆さん 毎日楽しく」

SFC生としての一瞬一瞬を楽しみながらさまざまな経験を重ねることで自身が歩みたいと思う道は切り開けるはずだ。伏見さんの姿を見ていると本当にそのように感じられる。コロナ禍で思うように活動ができない学生は多いと思うが、この状況の中でも小さな楽しみを見つけることから始めるのもいいかもしれない。

佐瀬真人さん (環境情報学部卒 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 代表執行役社長)

「新卒で入社した会社で42歳で代表執行役社長に就任」

SFCの卒業生はどこまですごい人がいるのだろうか。次々と登場する超鴨池ビト!に開いた口が塞がらない。

映像を見ながら、佐瀬さんはきっと「ザ・真面目なSFC生」だったに違いないと勝手に想像をしていたら、急に大きなバイクに乗った佐野さんの学生時代の姿が映し出された。想像していた姿と真逆の姿が画面に映し出され、思わず「えっ」と声が出てしまった。バイクが好きだという。しかし、それでも驚きを隠せなかった。

~ SFCでの学びとコンサルタントとしての仕事 ~

佐瀬さんはSFCでさまざまな分野の勉強ができたそうだ。このSFCでの学び方は実はコンサルタントに求められるものと非常に近いという。SFCでは、1つの分野に集中して取り組むこともできるが、自由にさまざまな分野をまたいで学ぶこともできる。そして、経営コンサルティングという仕事は一定の学問的な裏付けが必要な分野はあるが、幅広い分野のことを取り扱っているという意味ではSFCでの学び方と似ている部分があるのだと佐瀬さんは語る。

—— 佐瀬真人さんからのメッセージ

「SFCの皆様 今を全力で駆け抜けよう!」

今、何を学んだらいいのかわからないという人も多いかもしれない。しかし、将来役に立つかどうかということや、自分がその分野に興味があるかどうかということは学ぶ前から考える必要はないと考える。今できる学びを全力で取り組むことがまずは大切だということを佐瀬さんのメッセージから理解できるのではないだろうか。

②キャンパスビジット

続いて、KREVAさんと一青窈さんによるキャンパスビジットを紹介していく。お二人の知られざるキャンパスライフはどのようなものだったのか、SFC生なら共感できる部分がたくさんあるはずだ。映像を見ながら、私自身が個人的に共感できたり、興味深いと感じたりしたエピソードをピックアップしたため、ぜひSFCを想像しながら読んでほしい。

KREVA編

  • 階段歩幅合わない問題

SFCの正面階段を「侵入者を防ぐトラップなのか!?」と語るKREVAさん。確かにここは歩きにくいと口をそろえるSFC生は多くいるのではないか。慣れれば気にしなくなるが、私自身はこれまで何度もこの階段をのぼりながら躓きそうになったことがある。しかし、このデザインの意味を考えたことのある人は少ないと思う。実は、この幅には意味があるのだそうだ。この階段はなんと、「馬の歩幅」に合わせてデザインされたのだという。私が1年生だった頃、初めて耳にした時は驚いたが、これまたSFCらしいと思った覚えがある。

  • ジャンボ鶴田さんやセルジオ越後さんが体育の先生!?

SFCはさまざまな人が集まっている場所だと聞くことが多いが、まさかKREVAさんの学生時代もこんなに豪華な講師陣だったとは驚きだ。KREVAさんは自身を「ジャンボ鶴田にバックドロップされた男」だと話していたが、これはSFCにいなければ経験できなかったことに違いない。また、サッカーの世界的フェイント術である「エラシコ」を直接発案者から学ぶ機会なんてあるだろうか。想像しなかったことすら起きてしまう場所、それがSFCなのであるのかもしれない。

最後にKREVAさんは、自身が作詞・作曲を手掛けた曲「アグレッシ部」をこのLIVEイベントの特別バージョンで歌った。SFCでMVを撮っているのかと思わせるほど、ワンカットで撮られた映像は見応えのあるものであった。

一青窈編

  • SFCの「匂い」

SFCの匂いと聞いて、1番最初に浮かぶ匂いといえば、あの牧場の匂いを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。特に雨の日の後は匂いがキャンパス中を充満するため記憶に残るだろう。
さらに、一青窈さんが話していたメディアセンターの匂いもSFCの匂いの1つといえるのと思う。長期休み後、久しぶりにキャンパスに登校しメディアセンターに入ると「SFCだ」と思うことが何度かあったため、個人的にはすごく共感できた話の1つである。

最後に一青窈さんは、自身が作詞を手掛けた曲「ハナミズキ」をΩ館で歌った。あの広い教室で歌った人が今までいただろうか。私自身もあそこで歌ってみたいと思ったのと同時に、あの場で間近で一青窈さんの歌声を聴きたいとも思った。SFCバージョンの「ハナミズキ」は「またキャンパスに通いたいなあ」と思わせてくれる、美しいものであった。

③湘南台グルメ探訪

湘南台グルメ1「ニューオリンズ」

100種類以上のメニューが存在するパスタ専門店のニューオリンズ。湘南台駅から歩いて2分ほどのところにあるため、一度は訪れたことのあるSFC生も多いのではないだろうか。ここは、「ニューオリ!」と多くのSFC生に呼ばれるほど、親しまれているお店である。しかし、そんなニューオリンズもコロナ禍で、来店客数は10分の1にまで減ったそうだ。

店主はニューオリンズの人気メニューは、にんにくと鷹の爪のパスタだと話す。SFCを訪れる際には、自分好みのパスタを「ニューオリンズ」で見つけてみるのはいかがだろうか。

湘南台グルメ2「YASSAI MOSSAI」

SFCの卒業生が営むお店として有名なYASSAI MOSSAI。新歓時期にはSFC生が延べ1,500人来店するほど多くのSFC生に親しまれているお店である。YASSAI MOSSAIは、地元の野菜やSFCの裏で育ったみやじ豚を使用したメニューをご用意している。

キャンパスの近くで育った野菜や豚肉をぜひ食べてみてはいかがだろうか。

④KREVAさん&一青窈さんらによる音楽セッション

今回、初コラボを果たしたKREVAさんと一青窈さん。このLIVEイベントの音楽セッションでは、松田聖子さんの「瑠璃色の地球」を歌った。一青窈さんがこの曲をカバーしたことがあることを以前から知っていたKREVAさんは、この曲にラップをつけることができるのではないかと考え、この曲を歌うことを一青窈さんに提案したのだそうだ。

最初は、どのように仕上がるのか全く想像ができなかったが、一青窈さんの心に刺さる歌声とKREVAさんのラップを加えた曲のアレンジは素晴らしいケミストリーを見せた。

おわりに

卒業生と現役生(開催当時)合同の「超鴨池祭」幹事チーム 卒業生と現役生(開催当時)合同の「超鴨池祭」幹事チーム

「超鴨池祭」の名場面を中心に紹介してきたが、いかがだっただろうか。夜な夜な仕事後、3か月にわたりオンラインでミーティングを重ねた15名の幹事チームは、映像、テレビ、コンサル、広告、ゲーム、飲食店経営など多岐に渡るSFCらしい卒業生で構成されていた。この時代だからこそできる最高のコンテンツを、卒業生だけではなく現役生にも見てもらいたいと真剣に作ったそうだ。今回の記事には含めきれなかった数多くの名場面がまだまだ残っているため、ぜひ下記の配信URLより、フルの映像を見てほしい。

配信&事前会員登録URL: https://kamoike.online/

※完全版の公開は1ヶ月間のみ(4/15まで)。それ以降も編集を加えた映像が配信予定。

【4月23日 更新】
編集が加えられた「超鴨池祭」のアーカイブ動画が配信された。鴨池オンラインの公式YouTubeアカウント(鴨池オンライン【公式】)より確認することができる。

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