「研究会ってシラバスだけじゃなくて見てみないとわからない!」という声をSFCではよく耳にする。そこでSFC CLIP編集部があの研究会に突撃取材を敢行。名付けて「CLIP流研究会シラバス」。記念すべき1回目は田中浩也研究会を特集する。

 ファブラボにて日々ものづくりに励む田中浩也研究会。ファブラボとは3次元プリンタやレーザーカッター、3Dスキャナなどを備えた、ものづくりのための実験工房とネットワークのことだ。田中浩也環境情報学部准教授、広瀬悠一さん(政・メ1)と金崎俊治さん(政・メ1)に研究会の活動内容についてお話を伺った。

何をしている研究会?

 田中浩也研究会(以下田中研)はいわゆるものづくりをする研究会である。研究室はテニスコート横のZ館だ。この研究室には3次元プリンタやレーザーカッター3Dスキャナなどものづくりのための最新機器がある。また、鎌倉には田中准教授の事務所であるファブラボ鎌倉があり、学生はここでも、ものづくりに励む。ここは市民に開放されており、SFCの学生以外にも様々な人が利用している。

 ただし、田中研の目的はただ「もの」をつくることではない。ものづくりはむしろ手段だ。例えばファブラボには地域の人々が集う。地域活性化とものづくりを結びつけているのだ。

 田中准教授は「ファブラボはインターネットと同様に捉えて欲しい。インターネットで何でもできるように、ファブラボでもなんでもつくれる。何がつくれる? とよく聞かれるが、それはインターネットで何ができる? と聞くようなもの」と語る。

 ファブラボはこれから学生がつくりあげていく、まったく新しい分野だ。田中准教授も日々模索しながら、ファブラボを進めているという。

研究活動

 シラバス上の研究会は毎週火曜日と金曜日。研究会の時間に講義を受けたり議論したりするだけではなく、田中研の学生はそれ以外の時間でもものづくりを進める。研究会に入った初学期は特訓コースと銘打って毎週何かをつくる。これはいわば道具の使い方などを学ぶ準備期間だ。毎週火曜日の講義で学び(run)、それをもとに実際にものづくりを行い(make)、みんなで分かち合う(share)という3つのサイクルを基本としているという。このサイクルを13週繰り返すことで発想にブレーキをかけず、「つくりたいものが能力不足によりつくれない」という制限から自由になるためのスキルを身につけるのだ。

 田中研の大きな特徴と言えばファブラボ鎌倉だ。Z館にほぼ同じ設備があるにも関わらず、学生は何故わざわざ鎌倉まで足を運ぶのだろうか。田中研の履修生である広瀬悠一さん(政・メ1)と金崎俊治さん(政・メ1)に話を聞くと、「ファブラボ鎌倉には地域の職人などがいる。様々な人に触れ合うことで、新しいアイディアが生まれたりする。だから、とりあえずファブラボ鎌倉に行きますね」と語る。地域のコミュニティという強力なサポートも田中研は有している。

雰囲気

 研究会をどのようなものだと考えているか、という質問に対して田中准教授は「SFCにとっての研究会とは深い意味がある。時間割に組み込まれ授業の一環として行われている研究会もあれば、所属として授業以外は研究会で活動をするところもある。田中研は後者の研究会であり、だからこそファブラボ鎌倉にて活動を行っている」と語った。田中研は学生生活の核をつくる研究会のようだ。

 田中研の学生に、田中准教授との心的な距離を伺った。広瀬悠一さん(政・メ1)、金崎俊治さん(政・メ1)は、「他の研究会と比べてもとても近い存在だと思います。研究会に入った最初から、1人1人を見てサポートしてくれます。心的な距離はとても近く、 ファブラボでは田中准教授の奥様に会います」と語った。この研究会のあり方は田中准教授がアメリカに留学していた時の影響があると言う。アメリカでは研究室を拡大した1つの家族という考え方があり、田中研もそれを取り入れている。プライベート、研究という隔たりを持った考え方そのものが田中研にはなく、まさに生活そのものなのだ。

卒業後の進路

 どのような進路を学生に期待するか、という問いに対して田中准教授は驚きの答えを返した。「新しい職業を自分でつくって欲しいと思います。例えば、先日渋谷にオープンしたファブカフェというファブラボとカフェを融合させた場は、卒業生が開きました」と語る。

 田中研はただ「もの」をつくるためだけの研究会ではない。ものづくりを基盤として、その先に目的を持った、一歩先のクリエイティビティを感じた。