SFC CLIP編集部は2015年10月9日-10月23日の期間、14学則が初めて適用された2014年度春入学の学生を対象に、単位取得状況に関するアンケートを実施した。TwitterやFacebookなどを利用し告知した結果、129件の回答を得ることができた。現段階で3年生への進級要件である必修単位を満たしている人と満たしていない人の割合はどうなっているのか。それはどの科目が原因なのか。結果を公開していく。

必修科目修了者:未修了者 = 4:6 やや未修了者が多数


「3年生進級に必要な必修科目(データサイエンス科目、言語コミュニケーション科目、情報技術基礎科目)の単位数は、2年生春学期終了時点で足りていますか?」という質問に対し、「はい」と回答したのが43%の55名、「いいえ」と回答をしたのが57%の74名であった。

編集部によるまとめ 
2年生春学期終了時点での必修科目修了者と未修了者の割合は約4:6と未修了者が若干多いという結果であった。当初は進級要件を満たしていない学生の声がSNSなどでは目立っていたが、14年度春入学生の大多数に原級の可能性があるとは言えないようだ。

DS2が多くの学生の進級を左右する 次点が言語科目

「3年生進級に必要な必修科目の単位数が、2年生春学期終了時点で足りていないと答えた方にお聞きします。現時点で足りていない科目を具体的に教えてください。」(複数選択可)と質問した結果、39.7%の29名が「言語コミュニケーション科目」、20.5%の15名が「データサイエンス1」、80.8%の59名が「データサイエンス2」、20.5%の15名が「情報技術基礎科目」の単位が足りていないと回答した。

編集部によるまとめ 

「必修単位が足りていない」と回答した人の約8割が「データサイエンス2」の単位を未取得であり、次に多いのが「言語コミュニケーション科目」で約3割の人が未取得であると回答した。「データサイエンス2」が多くの学生の進級の可否を決める要因になっているようだ。

またアンケート結果の内訳をみると、1科目の単位のみが足りていない人と複数以上の科目の単位が足りていない人との割合は4:3であった。必修科目すべてが未取得であるという人も5名と、若干名確認された。

難易度が高い? 内容がともなっていない? 必修科目授業への不満

「必修単位が取れていない理由があれば教えてください。」「その他に履修や進級条件に対する意見や要望があれば教えてください。」という質問に対しても多くの回答が寄せられた。必修科目の単位を満たしていない人の理由にはどのようなものがあるのか。以下、特徴的な理由にわけて整理する。

必修単位が取れていない理由(抜粋) 
・数学が苦手で、1秋でDS1を落としてしまったから。
・入学時から続いた数学テスト(DS基礎)に落ち続けてしまった。結果的にDS1を2年春学期、DS2を秋学期に履修することになった。
・数学を高校1年から勉強していなかったから。
・文系として入った自分にとって理系の人とのハンデが大きくそこに対してなにもしてくれないのに単位を取れと言われても難である。
・プロ英だったのですが、難しすぎてついていけず、切ってしまった。
・言語が苦手だから。

編集部によるまとめ 

必修科目を修了できていない理由として一番多く集まった回答が、「苦手であるから」というものだった。特にデータサイエンス科目が取れていない理由に対して、「苦手」という回答が目立った。データサイエンス科目認定試験になかなか合格できず学年が進んだ時期にDS1と2の履修時期がずれ込んでしまった人、1秋の段階でDS1を履修したが単位を落としてしまい2秋でDS2を履修している人など、一度の履修で単位を取得できていない人が多いようだ。逆に、言語コミュニケーション科目を取得していない学生の中で「苦手」を理由として挙げている学生は少なかった。

よせられた意見・要望(抜粋) 
・データサイエンスにも、きちんとした未習者向けの講義を作ってほしい。
・秋学期のデータサイエンス2の科目の授業数がすくない。
・データサイエンス科目については自身の研究分野との関連性が薄く、履修する意味を感じない。仮にデータサイエンス科目を修了しても統計分析ができるようになるわけでもない。これはデータサイエンス科目の意図が全く実現されてないようにおもえる。
・入試科目を英語1本で入学している人間が一定数いる中で、入学後にいきなり数学関連の必修講義を課す今のカリキュラム設計は大いに問題があると感じる。
・EUの統計調査で「およそ3割の人間は、生来に数学関連を理解する能力が比較的弱く、むしろ言語的な脳の領域が発達している」といった研究結果がつい最近出ている。しかし、その中には言語領域(いわゆる文系)の能力に長けた人間も少なからずおり、結果的にそうした人間がいるからこそダイバーシティが保たれるのではないかと私は考える。その点で、SFCの理念とこのカリキュラムには乖離があって、一貫性に欠けているのではないか。
・DS教師が受けている生徒からの評価が悪くても、次学期も内容変更が行われないまま授業が開講されている。なんのための双方評価システムなのか全くもって理解不能。
・必修なら必修でもいいが、その割に授業に対し教授達の熱意が感じられない。

編集部によるまとめ 

必修科目への意見の中で目立ったのは、①未習者向けへの配慮が足りない②そもそもの必修科目のコマ数と選択できる数が少ない③データサイエンス科目必修化に意義を感じられない。といったものだった。

文系では、高校1年生以来、数学を一切学んでいないという学生もいる。このように数学が苦手であり、数年ぶりに数学を学ぶ学生が、2年間でデータサイエンス科目を修了し進級要件を満たせるのか疑問が生じてもおかしくないだろう。言語に関しても、一般入試で数学を選択した人には同様のことがいえる。履修選抜の影響で関心のあるデータサイエンス科目やその他の科目が取れず、学ぶ意欲をなくしてしまう学生も少なくないようである。

意欲がなくサボる学生がいるのも確かであるが、数学をはじめとした必修科目を苦手とする学生へのサポート・学習意欲を刺激するような環境づくりが求められる。

履修選抜に対して高まる不満 必修科目が履修できないことも

必修単位が取れていない理由(抜粋) 
・抽選に外れまくったため情報基礎2が受講できなかった。直談判にいってもダメだった。今、ラストチャンスで受講していますが、正直重圧がつらい。
・履修選抜に落ちた際、教授にメールをしたのにも関わらず無視された。
・履修選抜が厳しすぎる。特にデータサイエンス。必修科目なのに単位の判定の場にも達せないのはおかしい。
・希望の講義の選抜に落ち無理矢理履修を組んだ結果取得が難しかった。
・受講したいDS2の科目が春学期に無かったため。
・自身の行いたい研究分野の関連講義をとるとなかなか抽選があるデータサイエンス1、2だけのために時間割を作成するのが難しい。

編集部によるまとめ 

必修単位が取れていない理由として、「苦手」の次に多かった回答が「履修制度」、特に履修選抜に関するものである。必修科目の履修選抜の倍率は高く、そもそも授業を履修できないという人も多い。また、必修以外の科目においても履修選抜によって希望の時間割を組めず、結果的に必修科目も履修できなくなるというケースも少なくないようだ。

よせられた意見・要望(抜粋)
・履修選抜におけるシステム抽選制度を廃止してほしい。
・ただでさえ数学が苦手なのに、必修単位も履修選抜が厳しく、取りたい授業が取れない状況をなんとかして欲しい。
・必修科目に選抜制度を設けるのはやめてほしい。データサイエンスでありながら07学則では普通の科目としてあるものが多く、単位のためにとっている14生と、とりたくて取っている07生の差は大きいと思う。
・デーサイ1と2を3年進級必須にするのは厳しいと思う。学則改正の前は両方の単位をとるのに最低でも1年かかるからだ。
・グローバルキャンパスを謳うなら確実に第2外国語をとれるようにしてほしい。また、言語は学習コストがわりと高いと思うので、興味のある言語をきちんと選ばせて欲しい。
・SFCの履修に関する最大の難点は1学期にとれる単位数上限が20に制限されていることだと思う。この制限がなくなるだけで履修を組むのが容易になる。また、英語科目や情報基礎の履修登録が分離しているのも気になる。必修なのに受講の垣根が高く、利益がないと感じる。

編集部によるまとめ 

「履修選抜」の問題は、「言語コミュニケーション科目」「データサイエンス科目」「情報技術科目」のすべての必修科目に通ずるものだ。意欲や研究との関係は全く考慮せず、運だけで履修の可否が決まるシステム抽選制度の見直しを求める声は多い。必修科目に限らず、履修選抜にことごとく落ちた人が履修選抜なしの授業にやむなく集まる、というケースも少なくない。その結果、自分の興味関心のある授業や研究会の履修が阻害されることもある。

教員の増員といった講義の質を担保するための費用が足りないという大学側の事情もあるが、14学則をきちんと機能させるにはSAの活用や授業数の増加といった早めの環境整備が重要だろう。

学則の理解が難しい!? 

よせられた意見・要望(抜粋)
・学事の記載が分かりにくく、不十分であると感じた。
・「言語コミュニケーション科目 8単位以上。ただし、同一語種で4単位以上修得すること。」と履修ガイドには記載されていたが、私は一つの言語のみで4単位以上とれば残りの4単位は2単位ずつ異なる言語でも良いと長く誤解していた。私の確認不足もあるが、より分かりやすい説明があったほうがいいと思う。
・1春にデータサイエンスに関して何も分からないままいきなりデーサイ2を登録し、当然履修不可とされて半学期分を無駄にしたため。
・DS1を取っていないとDS2が取れないというシステムを忘れていた。

編集部によるまとめ 

学則に関する情報を十分に理解していたなかったために、必修単位の取得に苦戦している学生も一定数いる。単純な学生の失念というケースも多いようだが、塾生ページやSFC-SFSでもう少し分かりやすい学則の説明を追加したり、履修登録の際にアラートを表示したりするなど、大学側にも改善の余地はあるだろう。
 
2014年度春入学の学生は14学則を十分理解している先輩も少なく、まず学則の理解に苦戦した学生がいたのも頷ける。SFCの学生が自主的に作成したSFCのシステムや学則を説明したウェブページやTwitterを参考にしていた学生も多いようだ。

必修単位修了済みの人の声 学生に甘いとの指摘も

よせられた意見・要望(抜粋)
・DS1,2を同時履修できるって14学則の良さを壊している気がする。データの扱い方の基礎がDS1で、その(社会的or学術的な)応用がDS2で学べる。それを(自然言語科目と同様)最低1年間学ぶことによって数学的視点を学べるようにするものなんじゃないんですかね?
・データサイエンス科目の重要性を高めた理由があるはずだ。一度決めたことを簡単に覆す(データサイエンス1を取得していなくても2を履修できる)ことはしないで欲しい。努力して単位を落とす人もおりそういう友人もいるため力になりたいと思うが、努力もせず不満をこぼす生徒がいることも事実だ。そういう生徒のために進級条件のハードルを低くするのは無意味だ。進級条件を満たさない生徒がどれだけいるのかを知りたい。予想にはなるが、データサイエンス取得できない生徒が目立つだけで努力してして取得した生徒も多くいるはずだ。人数が増えたとしても留年させればいいと思う。
・できないのではなく、やらないのではないか。

編集部によるまとめ 

すでに必修単位を履修済みの学生にとっては、2015年度秋学期前にDS1とDS2が同時履修可能になるといった制度変更が行われたことに否定的な人も多いようだ。「努力もせず不満をこぼす生徒がいることも事実だ。そういう生徒のために進級条件のハードルを低くするのは無意味」「できないのではなく、やらないのではないか」といった学生の甘さを指摘する声もある。

“学生のため”の学則を

学則改正の長期的な効果はまだわからないことも多いが、学生への良い影響も確実にあるはずだ。データサイエンス1と2の同時履修が可能になったように、今後も制度の改正が行われていく可能性もあるだろう。ただし、学生の自由を制限し、学びたいものが学べない、「SFCらしさ」がなくなった学則となってしまっては本末転倒だ。純粋に学びたい学生の声を反映する"学生のため"の学則へのより良い環境づくりが求められる。


 本アンケートに回答してくださった皆様、誠にありがとうございました。

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