5月に噴火した口永良部島(鹿児島県屋久島町)を支援しようと、以前から島おこしのプロジェクトに取り組んでいた研究会が中心となり、新たに「口永良部島ふるさと支援プロジェクト」を立ち上げた。3つの研究会が協力し、支援金だけではなく応援メッセージやアイデアを届けるという様々な形の支援を行う。

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噴火直後に決まった支援プロジェクト

5月29日、口永良部島の新岳が爆発的に噴火し、火砕流が発生するなどの大きな被害をもたらした。気象庁は噴火警戒レベルを最高の「5」に引き上げ、島民全員が島外への避難を余儀なくされた。そこで、口永良部島で2011年から教育や建築をテーマに島おこしプロジェクトを続けている長谷部葉子研究会・池田靖史研究会と、村井純研究会 NECO Lab.が手を組み、島外に避難している島民を少しでも元気づけようと「口永良部島ふるさと支援プロジェクト」が発足した。

「とにかく今まで関わってきた島の方々が無事かどうかとても心配した」と池田研の檜木慎一郎さん(環3)は当時の心境を語る。檜木さんは口永良部島での合宿型教育プロジェクトのなかで建築の視点から関わってきた。2014年8月の噴火時も口永良部島に滞在しており、実際に火山灰をかぶりながら島民とともに避難したこともあるという。
建築の視点で島と深く関わってきた檜木さん 建築の視点で島と深く関わってきた檜木さん

島とのつながりを5年以上持ち続けてきた長谷部研でも口永良部島噴火のニュースで衝撃が走った。島民のためにとにかく何かしたいという研究会メンバーの気持ちは強く、「噴火の次の日にはお金を集めようという話になっていた」と支援プロジェクト代表で長谷部研の松村拓哉さん(総2)。こうして以前から口永良部島で活動していた長谷部研と池田研によって口永良部島への支援が始まった。
「とにかく何かしたいという思いでいっぱいだった」と松村さん 「とにかく何かしたいという思いでいっぱいだった」と松村さん

ウェブで研究会を超えたプロジェクトを

この支援プロジェクトは、これまで口永良部島に関わってきた2つの研究会だけではなく、「インターネットと社会」をテーマに活動する村井純研究会 NECO Lab.も協力している。インターネットで幅広い人の関心と支援を集めることが必要だと考え、長谷部研と池田研から村井研NECO Lab.に共同研究の依頼を持ちかけた。NECOとはネットワーク&コラボレーションの略で、ひとつの研究会内でプロジェクトを完結させるのではなく、ほかの研究会、さらにはSFCの外部とも協働し、コラボしながら研究プロジェクトを進めていくことを目指している。「研究会を超えたつながりを、ウェブを通してつくりたい」と話すNECO Lab.代表の塚越広彬さん(環4)は、研究会同士でのコラボレーションによって広がる可能性について触れ、今回を皮切りに今後もコラボレーションを生み出していきたいとも述べた。

お金だけではない支援を

塚越さんは「単純なウェブ制作だけなら、業者にお金を払えばできる」とも言う。ウェブ制作自体ではなくウェブを使ってどのようなコミュニュケーションを生み出すのかを大事にしているそうだ。

「ウェブをどう使うかか大事」と塚越さん 「ウェブをどう使うかか大事」と塚越さん

そのため、プロジェクトのウェブサイトでは単に金銭的支援を求めるだけではなく、「エール」や「アイデア」も募集している。「エール」として受け取った応援メッセージは、避難所で壁新聞などといった媒体を用いて島民に伝える予定だ。Twitterのハッシュタグ #elove_yellも利用して応援メッセージを集めている。また、寄せられた島の復興・活性化についての「アイデア」は、島民の方々とも相談をしながら、実際の活動に組み込むことも考えている。さらに、支援者に対して島についての情報をメールマガジンで送ることも検討しているという。
 「魅力ある島のありかた、コミュニュケーションをなんとしても残していきたい」と松村さんは強調する。今後は島民の目線に立ち、島民のメッセージを発信することで、SFC生を介して島民と応援してくれる人をつなぎたいという。

屋久島町役場で就業体験中のプロジェクトメンバー(上段中央)と口永良部島の子どもたち、山海留学生(松村拓哉さん提供) 屋久島町役場で就業体験中のプロジェクトメンバー(上段中央)と口永良部島の子どもたち、山海留学生(松村拓哉さん提供)

地域へ寄り添うプロジェクトが多いSFCにおいて、いかにそれぞれの研究会がコラボレーションするのか、ひとつの先進的事例として注目すべきプロジェクトだろう。

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