秋祭1日目の10日(土)、θ館でSFC25周年記念式典が行われ、清家篤塾長のほか、藤沢市長、ハワイ大学長など塾外からも多くの来賓が臨席。SFCの25年間を振り返るとともに、地域とのさらなる協力・発展を確認し、「未来創造」への強い意志が示された。

にぎやかな秋祭を横目にθ館へ入場する来場者ら にぎやかな秋祭を横目にθ館へ入場する来場者ら

10日(土)は、この式典を皮切りにSFC25周年記念イベントが多数行われた。秋祭で学生や地域の方々で朝から賑わいをみせるキャンパスだが、α館横の受付から式典会場へ向かう正装に身をまとった出席者らの姿に、25年の節目という厳かな空気が感じられた。

開式前には結成20周年を迎えるアカペラシンガーズK.O.E.のミニコンサート 開式前には結成20周年を迎えるアカペラシンガーズK.O.E.のミニコンサート

来賓らが登壇。式典は厳かな雰囲気に包まれる。 来賓らが登壇。式典は厳かな雰囲気に包まれる。

「異端と言われ続けてきた」河添学部長 25年の成果を実感

SFC開設当初の写真がスクリーンに映し出されたのち、来賓が登壇。塾歌斉唱から始まり、河添健総合政策学部長が開会の辞を述べた。問題発見・解決型の教育を目指して1990年に開設され、「未来からの留学生」を集めてきたSFCの歴史を「常に異端と言われ続けてきた」という言葉とともに振り返る。初代総合政策学部長の故・加藤寛氏が当時、SFCを「ミネルヴァの森」にたとえ、卒業生を闇夜を導く「ミネルヴァのふくろう」として送り出したことに触れ、現在では卒業生が2万人を越え、1期生は40代半ばに達し、SFCで育った人材が次の世代を育てていくという循環が生まれていることに対して、「25年は一つの周期であり、大きな成果をあげることができている」と評価した。

SFCの地域貢献にも言及した河添健総合政策学部長 SFCの地域貢献にも言及した河添健総合政策学部長

「自らの頭で理解し考える人材育成を」清家塾長が祝辞

義塾を代表して祝福と感謝の意を表す清家篤塾長は、今日の世界が激動の時代であることを強調。環境問題、自然災害、少子高齢化、地域紛争など、社会そのものの持続可能性が問われるような時代では、先を見通すことが非常に難しい。こうした時代には、新しい状況を自らの頭で理解し、自らの頭で考えることが求められる。これは、同じく幕末の激動の時代を生きた福澤諭吉先生が大切にされた実学、特に「サイエンス(科学)」を重んじる精神と重なり合う。清家塾長は「問題発見・解決型の人材を育てるSFCがまさにその実学の精神を体現している」と述べ、次なる25年に向けてSFCが建設に力を入れる滞在型教育研究施設「未来創造塾」の意義を主張した。

清家篤塾長は塾内外からの多大なる支援に謝辞を述べた。 清家篤塾長は塾内外からの多大なる支援に謝辞を述べた。

鈴木市長「世界的視野のまちづくりを」協力関係を強調

地元藤沢市からは鈴木恒夫市長が登壇。鈴木市長は、市議会議員であったSFC開設当初からキャンパスを見守ってきた。25年間を振り返り、「慶應のみなさんと一緒にまちづくりをしてきた」と地域とSFCの良好な関係をアピール。SFC近くの竹林由来の素材でつくられたトンボの竹細工を取り出し、「SFCで育った優秀な人材が藤沢に『とんぼ返り』してほしい」と述べた上で、今後も世界的な視野をもったまちづくりに取り組むため、「慶應とのパートナーシップをより強くしていきたい」と意気込んだ。建設が発表された(仮称)湘南藤沢記念病院にも触れ、地域の医療福祉においても慶應SFCとの協力に期待を示した。

早稲田出身の鈴木恒夫市長は遠藤を「藤沢の西北」と表現して笑いを誘った。 早稲田出身の鈴木恒夫市長は遠藤を「藤沢の西北」と表現して笑いを誘った。

海外研究機関との連携も強化 ケネディ駐日大使からの祝電も

SFCでの教育や研究開発には、海外の大学・研究機関との連携も欠かせない。ハワイ大学のデイヴィット・ラスナー学長は、SFC開設当初から共同研究や交換留学プログラムなどを通してハワイ大学と良好な関係を築いてきたことを述べる。また、村井学部長が日本とアジア・太平洋地域を結ぶインターネット技術の研究開発に尽力してきたことにも触れ、「誰もが想像し得なかった大きなインパクトを世界にもたらした」と称賛した。SFCは、豊かな自然のなかに最先端の技術を取り入れ、既存の枠組みを打ち壊す理念を持ったキャンパスであり、今日私たちが直面している複雑な問題に取り組む学生を育んでいると評価。「さらなる25年を切り開くビジョンが慶應SFCから生まれることを楽しみにしている」と期待を寄せた。

ハワイ大学のラスナー学長 ハワイ大学のラスナー学長

また、アメリカ駐日大使のキャロライン・ケネディ氏の村井学部長に宛てた祝電が披露された。ケネディ氏からの祝電には、村井学部長から耳にするようなすばらしい学生が学ぶキャンパスに来られなかったことを残念に思いつつも、ぜひ別の機会にSFCを訪れたいとのメッセージが手書きで記されていた。

ケネディ駐日大使からの祝電に会場からは驚きの声があがった。 ケネディ駐日大使からの祝電に会場からは驚きの声があがった。

未来創造塾SBCから中継 「未完のキャンパス」を学生の手で

SFCの25年の歩みを振り返る映像に続いて、テーマは未来創造塾へ。学生が主体となって未来創造塾(EAST街区・滞在型教育研究棟)の設計・使い方を考え、自らの手でつくるプロジェクト「SFC-SBC(Students Build Campus)」の活動を紹介する映像が流されたあと、実際の建設現場と中継が繋がれ、4Kの鮮明な映像がθ館の大画面に映し出された。

EAST街区との中継はテレビ番組さながらのクオリティ。
(画面左から小林教授、土肥さん) EAST街区との中継はテレビ番組さながらのクオリティ。
(画面左から小林教授、土肥さん)

現場は上棟式(関連記事参照)を直前に控えて盛り上がりをみせており、地元遠藤の方々による太鼓の演奏とともに、SBC中心メンバーとして小林博人環境情報学部教授と土肥梨恵子さん(総4)がリポート。「失敗を恐れない、試行錯誤を繰り返す、どんどん新陳代謝できる『未完のキャンパス』を目指す」という小林教授に、「日本中、世界中から多くの人が訪れ、多くの先導者が生まれてほしい」と土肥さんが続いた。

未来創造宣言 SFCの多様性を生かして国際社会の光に

常に「未来からの留学生」を受け入れ続けてきたSFC。現在のSFCの学生は、さらなる未来へ向けてどんな夢をもっているのだろうか。学生を代表して、陣内萌さん(総4)とサウジアラビアからの留学生アルマズヤッド・オスマンさん(政メ・博士1)が未来創造宣言をおこなった。

陣内萌さんはSFCでの出会いに救われることが多いという。 陣内萌さんはSFCでの出会いに救われることが多いという。

陣内さんは、自らの経験から病気で入院を続ける子どもたちの学びの場が不十分である問題に着目。「医療だけではなく、教育や政策など複数の視点から問題を受け止め解決したい」と考え、現在、インターネットを用いた教育支援という形での研究に取り組んでいる。そんな多角的な知見が必要となる研究において、SFCの多様な人的ネットワークが何度も研究の支えになったという。一人ひとりが専門分野を一生懸命頑張ることで、互いにカバーし合い、「誰もが笑顔で豊かに生きる世界をつくりたい」と目を輝かせて強く語った。

流暢な日本語でSFCの環境の魅力を語るオスマンさん 流暢な日本語でSFCの環境の魅力を語るオスマンさん

ファミリービジネスを研究するオスマンさんは、学問の境界を越えて多様な視点に立ち、個々の自由な発想を尊重する環境に感銘を受け、サウジアラビアからSFCを学びの場に選んだという。「サウジアラビアと日本の友好の架け橋になりたい」という想いで相互理解の促進に意欲的な姿勢をみせる。「知識は光である」というアラビヤ語のことわざを示し、「SFCが国際社会の光となり、多くの挑戦者たちのみちしるべであり続けてほしい」と呼びかけた。

村井学部長 25年の節目に「自律・分散・協調」を再認識

“SFCらしくない”ビシっと厳かな雰囲気で進んだ式典。閉式の辞には、「最後に私がハラハラさせて終わらせよう」と会場の空気を緩ませながら村井純環境情報学部長が登壇。SFC開設当初は工事続きで実は不安げな気持ちだったというが、一変して現在は「胸を張って『こんな綺麗なキャンパスはないだろう』と言えるようになってよかった」とその表情は明るい。キャンパスが駅から遠いからこそ「みんなで仲良くするしかなかった」と多彩な人的ネットワークが育まれてきた理由を笑いとともに語り、SFCのキーワードのひとつである「自律・分散・協調」を改めて強調。みんながそれぞれ好きなことをやりつつ、学生や教員に関係なくみんなが横に繋がることができる。「この雰囲気こそが、分野を越えて新しい学問を切り開くというSFCの使命を果たすために欠かせない」と強く訴え、式典を締めくくった。

最後は軽快な“村井節”で締めくくり。 最後は軽快な“村井節”で締めくくり。

登壇者(慶應義塾)

慶應義塾長 清家篤
評議員会議長 西室泰三
常任理事(国際・SFC担当) 國領二郎
総合政策学部長 河添健
環境情報学部長 村井純
看護医療学部長 小松浩子
政策・メディア研究科委員長 清木康
健康マネジメント研究科委員長 武林亨
SFC研究所長 飯盛義徳
湘南藤沢中等部・高等部長 会田一雄

登壇者(来賓)

藤沢市長 鈴木恒夫
ハワイ大学学長 デイヴィット・ラスナー
北京外国語大学日本語学部長 邵建国
タンペレ工科大学教授 ハンヌ・ヤーコラ

司会進行

総合政策学部准教授 神保謙(96年総卒)
総合政策学部准教授 中室牧子(98年総卒)

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