今回のProject CLIPでは、最近「デザインミュージアム構想」などで顕著な活躍をされている坂茂研究会(以下、坂研)を訪れ、和田菜穂子さん(政・メ)にお話を聞かせていただきました。


坂研はどんな研究室ですか?
坂研はSFCでは有名だと思われる紙のスタジオにあって、大体50から60人の学部生が所属している建築デザイン系の研究室です。坂研所属者は4つあるプロジェクトのうち1つのプロジェクトに参加します。昨年までは一人で複数のプロジェクトの掛け持ちができたのですが、現在は原則として一人1つの参加となっています。今のところ希望者は全員参加できますが、履修者が増えていますので、今後何らかの制限を設けるかもしれません。
—-4つのプロジェクトには何があるのでしょうか?
[1]デザインミュージアム構想
[2]VAN(Voluntary Architects Network)
[3]スタジオの環境整備
[4]家具つくり
の4つです。この4つのプロジェクトの進め方などは、主に坂先生が考えて決められているものです。        
【デザインミュージアム構想について】
「デザインミュージアム」とは何ですか?
 アートのミュージアムではなく、ファッションからインダストリアルなどの戦前から戦後までのデザインを展示する場です。日本にはまだこういったものがないので、首都である東京、お台場に造ることが必要だと思います。実際に他の国には、ロンドンデザインミュージアムなどの、デザインミュージアムとしての定義を満たしたものが、多数あります。
どうしてお台場なのですか?
 都心に近いながらも十分な立地が確保できるからです。お台場という土地は、法律的に10年しか建物を建てておけません。デザインミュージアムを実際運営できるかなどを実験的に試すうえでもこの土地が適していると考えています。現在、幕張メッセくらいの広さの土地がお台場にはまだ残っていて、そこに建設しようと、東京都知事と話をしようとしているところです。お台場という土地は、観光地としても発展してきているので、来館者が多いなどのメリットも考えられます。
現在、どのくらいデザインミュージアム構想の話は進展していますか?
 半年以上、都知事と話をしようとしてはいるんですけど、なかなか双方御忙しい方なので時間が合わなくて、まだお台場でやることについての許可が取れているわけではありません。そういった意味では話はまだあまり進んではいません。日本で、東京がダメなら横浜や関西などの違う土地でやるということも考えています。
そういった大きな構想に対して、学生としては何ができますか?
 デザインって言うのは難しくて、陽の目を見ないデザインの中にも面白いのはいっぱいあります。実際に実現の話が盛り上がったときに、どういうものを展示するのかを考えるじゃないですか。知らないと選ぶことができないので知識を高めることと、そういうデザインを見る目を養っていくことです。まずは勉強ですね。
【VANについて】
VANとはどういうものですか?
 国際的な援助のネットワーク作りで、災害・弱者に対して建築という観点から何ができるのかを考えていくプロジェクトです。現在、横浜国立や日大などと協力してやっています。
具体的にどんなことをしていますか?
 一昨年、社会的な弱者に対して何ができるかを考えるシンポジウムを開きました。同時に、社会的「弱者の家」と言うタイトルでコンペも行いました。他には、関係するテーマのNGOと一緒にこれから何ができるかを考えていこう、というところです。
【紙のスタジオの環境整備について】
紙のスタジオはどんな造りになっているのですか?
 紙のスタジオは防水加工した紙で管を作ってそれを骨組みとして学生たち自ら建てたスタジオです。

実際にどのようなことをやっていますか?
 紙のスタジオの内部空間をより過ごしやすいように自分たちでつくっていくことをやっています。具体的には、雨漏りを修繕したりだとか、周辺を緑化する、照明、机などの配置を考える、屋根などのメンテナンスをするといったところですね。
【家具作りについて】
椅子を作っている人もいますね?
 先ほどお話した環境整備と似ているのですが、一人一人が自分の使用する椅子を作ったりしています。これは七夕祭で展示することを目標として行っている活動です。さらに、他にもいろいろな家具を、紙のスタジオが使いやすいようにデザインして作っています。
【最後に】
この研究室と他の建築系研究室との違いは何ですか?
 1番大きいのは、実際に体を動かすところです。他の建築系では、手を動かして設計、図面をひいたり、模型をつくったりといったことが多いんです。もちろん私たちもリサーチやデザインの勉強などもやっていますが、それ以上に、物作りを主としてやっているので、やっぱりそこが違いますね。
最後にメッセージをお願いします。
 七夕祭ではこの紙のスタジオを開放します。あれは何だろう?と思っている方、良い機会ですのでぜひ見に来てください。
ありがとうございました。