コーヒー本来の味や香りを伝えたい 能城政隆さん(環4)
在学中もしくは卒業後にSFC生が「旗揚げ」した企業やお店を取り上げていくコーナー「HATA-AGE CLIP」。今回は、湘南台駅西口のバス停前でコーヒー専門店「のーじー珈琲」を営業している能城政隆さん(環4)に開店までの経緯やコーヒーに対する思いを聞いた。
「のーじー珈琲」は、9月末にできたばかりのコーヒーの専門店。コーヒー店で働いた経験や、生産者側からコーヒーを見つめることで、日本でのコーヒーのあり方に疑問を感じた能城さんが、「新しいコーヒー文化を創り、世の中を豊かにする」という思いから開店したお店だ。
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-コーヒーに興味を持ったきっかけを教えてください。
大学2年の頃にバイトをしていたコーヒー店で、コーヒーについて教わったのが最初です。コーヒーって色々な社会問題と密接に関わっていて、例えば途上国の生産者の貧困問題や南北問題など…。そこからフェアトレードにも興味を持ち、サークルに入ったりしたのがきっかけです。
-興味を持ったのはSFCに入ってからなんですね。大学に入る前はどんなことをされてたんでしょうか?
高3まで9年間野球しかやってこなくて、苦し紛れで大学に来て…。唯一数学は好きだったので、もう数学の先生になるしかないと思っていたんですが、SFCには色々なことをやっている人がいて、自分の好きなこと(コーヒー)をここまで膨らませていいんだなという気持ちになれました。SFCに来てなかったら、絶対お店はやっていなかったと思います。
-昨年、コーヒー生産者の現状を見るためにエチオピアまで行かれたそうなのですが、自主的に行かれたのでしょうか、それとも研究会の活動などで行く機会があったのでしょうか?
自主的に行きました。エチオピアのコーヒー生産者の生活実態に焦点をあてた「おいしいコーヒーの真実」というドキュメンタリー映画があって、これを見た時に結構ショックを受けて、真実だったら変えなきゃいけないなと…。
-というと、かなり悲惨な印象を受けたのですか?
そうですね。ちょうどその頃コーヒービジネスに興味を持っていて、将来もし自分がコーヒービジネスをやることになった時に、この生産地域の現状は少なからず伝えないといけないなと思いました。なので映画をみた数ヶ月後に、自分の目で見てこようと思い行きました。
エチオピアに、立ち飲みカフェというのがあったんです。そこが結構印象的で、今のお店も無意識にそれをイメージして作っていこうとしてました。
-お店を開く目的、開こうと思うに至った問題意識というのはどのようなものでしょうか。
日本だとブレンドコーヒーが出回っていて、消費者が、コーヒーそのものの味を知らないと言う現状があると思うんです。エチオピアで、生産者に「エチオピアのコーヒーが一番だろ!」って言われて、その時、エチオピアの人たちが作ったコーヒーの味をちゃんと理解していないのはちょっと失礼だなと思って。
でも、日本の消費者は、なかなかそういう事を知る機会がないんです。もっと、コーヒーの味を伝えるコーヒー屋が必要なんじゃないかと思います。
-カフェでコーヒーを飲んでも、クリームがたくさん入っていたり、フレーバーがついていたりして、もちろん美味しいのですが、コーヒーそのものの違いは分からないですよね。
日本酒や焼酎って、たくさん種類があるのに、安い居酒屋に行くと「焼酎」っていうメニューが1つあるだけになっていて、「これは何だろう…?」と思う時があるんです。そういう違和感が今の日本のコーヒーにあって。色々な種類があるのに「コーヒー」っていう一つの点として捉えられてしまっているというか。
「ブレンドコーヒー」っていうメニューがあっても、どんなコーヒーがブレンドされていて、何が特徴なのかもわからないですし。もっと、コーヒー本来の味や香りを伝えていきたいなという思いです。
-エチオピアに行かれてから、約1年でお店を開店されていますが、その間の経緯について教えてください。
まずはビジネスプランの書き方を学ぼうと思い、牧先生の「アントレプレナー概論2」を履修しました。その時はまさか在学中に開店するとは思っておらず、将来のためにと履修したんですが、そこでプランを書いていくうちにすごくやりたくなってしまって。
あと、井上先生の「コミュニティインベストメント論」では、このコーヒーのプロジェクトを持ち込んでプレゼンをしたり、実際にコーヒーを配って、色々な人からフィードバックを頂きました。
アントレ概論を通してメンター三田会の方とも知りあうことができて、一緒にお話させて頂いたりしながら準備を進めていきました。
-初めは学生のうちからお店を開くとは思っていなかったんですね。
いつかはやろうと思っていたんですけど、その時期がどんどん早くなっていった感じです(笑)
-開店までの間で、大変だったことなどはありましたか?
場所の確保等でしょうか…。でも、開店が決まってからの、発注先を見つけたりとか、道具を集めたりという作業はすごく楽しくて、全然苦ではなかったです。
-先ほど、授業のお話なども出ていましたが、開店するにあたってSFCでの経験や人間関係が役に立った場面は結構あったんでしょうか。
やっぱり「アントレプレナー概論」と「コミュニティインベストメント論」は非常に役に立ってます。
「コミュニティインベストメント論」で、プロジェクトはまず小さく動かしてみて、フィードバックを貰って、改善してまた動かすと言うPDCAサイクルをどん早くしていくことの大切さがわかりました。お店でも、まずは何か動いてみると、友達が「看板の字が小さいよ」とか「ここ電気消したら」とか言ってくれるので、そこをすぐ直したりしています。
あと、お店のすぐ隣にはマクドナルドがあって、ちょっと行くとドトールがあって、東口にも専門店があったりして、湘南台って結構競合がいるんです。「アントレプレナー概論」では、それらとの差別化をどうすればいいかといった、戦略の立て方を教わりました。
-お店を見てると、時々お手伝いの方がいらっしゃいますが、SFCのお友達ですか?
そうです。知り合い伝いで「働きたい」という人がいるというのを聞いて手伝って貰ったりしています。本当はバイトとして雇えたらいいのですが、そこまで軌道に乗るにはあと一歩届かず…。
-現在お店をやっていて、楽しいことやよかったことはありますか?
やっぱり、お客さんが美味しいと言ってくれたり、初めてブラックのまま飲めたと言ってくださるとものすごく嬉しいです。コーヒーの概念を変えるという目的が成功しているのかな、と。
あとは、リピーターになってくれる人がいたり、コーヒー苦手な人でも挨拶して行ってくれたりするのがすごく嬉しいですね。
-逆に、大変なことや、今後の課題などはありますか?
あと、もっと大勢の人に飲んでもらうにはどうしたらいいか、看板を見ても通り過ぎて行ってしまう人にどうアプローチすればいいか、が課題です。たくさん売りたいというよりは、とりあえず「コーヒーの味っていうのはこんなんなんだよ」ということを知って欲しいです。そのために、豆販売の導入やセミナーを開くことも検討中です。
-現在4年生とのことですが、来年4月の卒業以降はどうされるんでしょうか?
それは今すごく悩んでいて。でも実は今、SFC内に出店(移転)することを検討しています。
-卒業後まで視野に入れたビジョンのようなものがあれば教えてください。
いつかはでっかい企業にしたいなと思います(笑) といっても、大きくすること自体が目的ではないです。あくまでミッションを伝える手段として、規模が大きくなれば「一回飲んでみたいね」と思ってもらえる機会も増えるじゃないですか。1回飲んでもらえれば、今までと違うというのに気付いてもらえると思うんです。
そういう意味で、湘南台だけでなく色々なところでやって、大きくしていきたいなと思っています。
-最後に、読者にむけてメッセージをお願いします。
コーヒーってものすごく奥が深くて、楽しめる要素がたくさんあります。それを是非知って、楽しんでもらいたいなと思ってます。
『のーじー珈琲 』
営業時間:平日 7:30-12:30
おやすみ:日・祝日
住所:神奈川県藤沢市湘南台2丁目10-6
※年末は25日(金)まで営業、年始は1月5日からの営業となります。
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“コーヒー本来の味や香りを伝えたい 能城政隆さん(環4)” への1件のコメント
コーヒー大好きなので開店したときはすごく嬉しかったです!お値段も安くて、おいしいですし、SFC生の方が実際に想いをビジネスで形にしてやってらっしゃるのを見ると、勇気づけられます!これからも頑張ってください。