1月25日、14学則アンケートの結果を配信し、14学則特集が始まりました。


 みなさんは、SFCのかつてのカリキュラム(学則によって規定された教育内容)がどのような変遷をたどってきたのかを知っていますか。07学則については、当然、07-13年度の入学者は理解しているでしょう。しかし、それ以前の学則となると想像もつかない人が多いのではないでしょうか。当特集で14学則について考える前に、今までの学則の歴史を知る必要があります。
 そこで、今回は、SFCの学則の歴史を簡単に振り返り、カリキュラムの変遷を追います。古きをたずねて新しきを知りましょう!

注意事項

・この記事では、199x年度版の学則を9x学則、20yz年度版の学則をyz学則と呼ぶことにします。例えば、90学則は1990年度の学則のことです。
・画像は「カリキュラムの歩み | 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)」から引用しています。

ここからSFCは始まった! 1990年度学則

90学則90学則の概念図 (http://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/curriculum/history.htmlより)

必修・卒業条件

学年外国語科目保健体育科目 一般教育科目
1年 保健衛生1単位
体育実技1単位
体育理論0.5単位
3つの分野(人文科学、社会科学、自然科学)から各1科目以上
(1学年で履修する総合講座2単位と情報処理言語Ⅰ4単位含む)
インテンシブコース12単位
2年体育実技1単位以上
体育理論0.5単位以上
3年教養外国語
4単位以上
4年
学年 専門教育科目 合計
1年 30単位以上
両学部共通専門科目16単位以上
(必修である総合政策学部、あるいは環境情報学部2単位含む)
2年 60単位以上
学部内専門科目52単位以上
(学部内専門基礎科目と各自選択したコース系科目の合計24単位以上含む)
3年 研究会4単位
4年 研究会4単位

卒業条件:外国語科目16単位以上、保健体育4単位以上、一般教育科目28単位以上、専門教育科目76単位以上、合計124単位以上

まず、SFC初代(1990年度)の学則がどのようなものだったのか、確認してみましょう。
 07・14学則と比べて大きく違うのは、「学年ごとに科目が割り振られていること」「コース系列科目」の2点です。
 90学則では、上の表のように学年によって履修できる科目が違いました。上級学年が下級学年に割り振られている科目を履修することはできても、その逆はできません。例えば、1年生が学部内専門科目を履修することはできませんでした。学年による履修制限がなくなるのは01学則以降です。
 コース系列科目とは、学部内専門科目に含まれる科目です。3年生になると各自がコースを一つ選択し、そのコースに含まれる科目を履修しなければいけませんでした。
 このように異なる点があるものの、現在のカリキュラムに通じる点も多くあります。例えば、保健体育科目や情報処理言語Ⅰ、外国語科目が学部に関わらず必修である点です。人工言語関連科目は、情報処理言語Ⅰだけでなく両学部共通専門科目である情報処理言語Ⅱや各コース系列科目内でも開講されており、4年間通じて体系的に人工言語を学ぶことができました。
 つまり、90学則の時点で現在のSFCカリキュラムの特徴である「自然言語」「人工言語」の2要素が揃っていたと言えるでしょう。
 

体育科目が「ウェルネス科目」に 1994年度版

大まかな変更点

 
90学則94学則
科目名・制度
外国語科目インテンシブコース、教養外国語の2種類 中・上級外国語、海外研修が追加
保健体育科目 保健体育科目 ウェルネス科目(名称変更)
一般教育科目 一般教育科目 パースペクティブ科目(名称変更)
一般教育科目の分野人文科学・社会科学・自然科学分野の3つ 分野廃止
進級・卒業条件
研究会3学年で4単位、4学年で4単位 3・4学年合わせて6単位
専門教育科目 学部内専門科目52単位以上
合計76単位以上
学部内専門科目54単位以上
合計70単位以上
3年生への
進級条件
2学年で30単位以上修得 1・2年学年合計で60単位以上修得
 94学則と90学則の構造は非常に似ており、94学則は90学則のマイナーチェンジです。そのなかでも大きな変化があったのは、「ウェルネス科目」です。  体育科目は、ウェルネス科目に生まれ変わりました。ウェルネス科目は、1年生の春学期に「保健衛生」1単位と「体育Ⅰ」1単位が必修であり、1年生の秋学期以降に「体育Ⅱ」と「体育Ⅲ」を履修することができます。体育Ⅱ・体育Ⅲは、それぞれ15回の授業を受けた上でレポートを提出し、合格すると1単位が取れるという、今でもお馴染みの制度です。SFC特有の体育必修に関する制度は、94学則で確立されたようですね。  

DSが登場 研究会は必修ではなかった!? 1997年度版

大まかな変更点

94学則97学則
パースペクティブ科目 1学年で総合講座・情報処理Ⅰ履修 1学年で総合講座・情報処理Ⅰ・
データサイエンスⅠ履修
インテンシブ外国語 12単位以上8単位以上
学部内専門科目54単位以上60単位以上
研究会6単位以上必修とはしない
 97学則で注目すべき点は、データサイエンス科目という概念が導入された点と研究会科目が必修ではなくなった点です。  データサイエンス科目は、データを収集・整理・検索・分析し、導き出した結論を発表する力を育てるためとして、1997年度に掲げられました。学部に関わらず、データサイエンスⅠ(パースペクティブ科目に属するデータサイエンス科目のこと)2単位以上の修得が卒業に必要な条件です。データサイエンスⅡ(両学部共通専門科目に属するデータサイエンス科目)は必修ではありませんでしたが、大学は履修を推奨していたようです。これが14学則で設置されたDS(データサイエンス)1、DS2の前身でしょう。  研究会に関しては、90学則と94学則では研究会の単位が卒業に必要でしたが、97学則では必修ではなくなり、学部内専門科目の一種として扱われています。すなわち、97学則では、研究会に所属せずに卒業することが可能でした。  97学則では、現在のSFC教育の要である「データサイエンス」が登場しましたが、一方で研究会の影が薄れてしまったのです。  

大改革! 学年の垣根を廃止 デザイン言語が登場 2001年度・2004年度版

01学則01学則の概念図 (http://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/curriculum/history.htmlより)

進級・卒業条件

◇ → ◆ は◇学年から◆学年に進級する際に必要な条件のことを示す。
環境情報学部総合政策学部
1 ↓ 2 2学期以上在学且つ30単位以上修得
2 ↓ 3 4学期以上在学且つ60単位以上修得
3 ↓ 4 6学期以上在学
卒業条件 以下それぞれ全て修得
  • 合計124単位以上
  • 外国語科目10単位以上
  • データサイエンス科目4単位以上
  • 情報処理科目8単位以上
  • 保健衛生、体育Ⅰ、体育Ⅱ、体育Ⅲ
  • 専門科目のうち共通基盤・環境情報系・複合系科目から16単位以上
  • クラスター科目のうち共通基盤・環境情報系・複合系科目から16単位以上
  • 専門科目のうち共通基盤・総合政策系・複合系科目から16単位以上
  • クラスター科目のうち共通基盤・総合政策系・複合系科目から16単位以上
 「SFC Version2」と銘打たれた01学則は、今までの学則とは大きく異なるものでした。  学年別科目・コースが廃止され、現在のSFCで当たり前となっている、学年に囚らわれない履修が実現します。研究プロジェクトは原則2年生以降でないと履修できませんが、教員と面談して許可が下りた場合は1年生でも履修できました。研究プロジェクトは必修ではありませんが、カリキュラムの「核」とみなされ、大学は「強く履修を推奨」しています。  新しく導入されたのは、「クラスター」と「クラスター科目」です。  クラスターはSFCが取り組んでいる先端的研究領域のことで、全部で15のクラスターがありました。各クラスターでは履修推奨モデルが提示されており、どの科目を履修するか迷った学生は、そのモデルを参考にすることができました。いわば、クラスターは履修を考える際のガイドラインであり、この点が97年学則以前の「コース」との違いです。  「クラスター科目」は研究プロジェクトを支援する専門的な科目であり、全てのクラスター科目はSFCの大学院において「研究領域科目」として併設されていました。つまり、クラスター科目では大学生と大学院生が一緒に授業を受けていたのです。  また「自然言語」「人工言語」「データサイエンス」と並ぶ4つ目の要素として「デザイン言語」を掲げたのも、この02学則からです。自然言語に関しては新たに「ベーシック科目」「スキルモジュラー科目」「コンテンツモジュラー科目」が開設されました。ただし、コンテンツモジュラー科目は「外国語『で』授業を受ける」科目であり、通常は外国語科目ではなく汎用科目等として扱われました。現在のGIGAの源流と言えそうです。  2004年度にも学則は改定されますが、これは01学則を微調整したものです。名称がデータサイエンス科目からナレッジスキル科目、スキルモジュラー外国語からスキル外国語、コンテンツモジュラー外国語からコンテンツ外国語に変更され、現在の学生が聞き慣れている名称が出てきました。一方、進級・卒業条件は01学則とほぼ同じです。  

研究会・卒プロが必修に 07年学則

07学則07学則の概念図 (http://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/curriculum/history.htmlより)

進級・卒業条件

 07学則・14学則での進級・卒業条件は以下の記事を参照してください。  今まで見てきたとおり、SFCは研究会プロジェクトを主軸としてカリキュラムが組まれており、決して研究会を疎かにしていたわけではありません。しかし、実際には卒業制作を行う学生は2割程度しかおらず、理想と実態にズレが生じていました。そこで、より研究会を重視し、卒業プロジェクトを必修にしたのが、この07学則です。  研究会を見据えて、進級・卒業条件も大きく変化しました。創造技法科目に含まれる従来の自然言語系の科目(言語コミュニケーション科目)・人工言語系の科目(プログラミング科目)・データサイエンス系の科目(ナレッジスキル科目)・ウェルネス系科目(ウェルネス科目)に加え、研究型思考を修得するためのシフト系科目(創造実践科目・先端発見科目)、研究活動を広げるための創造融発科目も必修となっています。また、4年生が研究会に集中できるように、4年生への進級条件が従来よりも厳しくなりました。ちなみに、自然言語・人工言語に関する必修が総合政策学部と環境情報学部で異なるのは、07学則だけです。  

流れを踏まえて 14学則を捉える

14学則14学則の概念図 (http://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/curriculum/history.htmlより)

進級・卒業条件

07学則・14学則での進級・卒業条件は以下の記事を参照してください MY時間割(仮)への登録期間が始まる! 進級・卒業条件に合わせた履修計画を  最後に、これまでの変遷を踏まえ、14学則についておさらいしてみましょう。  14学則は、07学則と同様に研究会・卒業プロジェクトを必修としており、卒業プロジェクトを重視した学則です。ただし、卒業条件は07学則よりも04学則以前に似ているように見えます。14学則で登場した「アスペクト」は、01学則のクラスター制や90学則のコース制の流れを汲んでいるのではないでしょうか。このことから、14学則は07学則の進化系でありつつ、従来の流れを組んだ学則といえるでしょう。  また、これまでの学則と比べると、14学則における「総合政策学部」と「環境情報学部」の関係は特殊だと言えます。90・94・97学則では学部内専門科目、01・04学則ではクラスター科目、07学則では人工言語と自然言語に関する扱いなど、カリキュラムにおいて総合政策学部と環境情報学部に明確な差がありました。しかし、14学則では2つの学部の違いは、必修が「総合政策学」であるか「環境情報学」であるかだけであり、ほぼ差がありません。良くも悪くも、学則上は双子学部が二卵性から一卵性になったのです。  さて、今回は学則の歴史を簡単に振り返りました。少しでもSFCのカリキュラムに興味を持ってもらえれば幸いです。  14学則特集では、引き続き調査やインタビューを通じて、14学則の実態を探っていきます。同時配信の『【14学則特集】 「足腰」を鍛える 言語学則の理念とは 藁谷郁美教授インタビュー』のほか、来週以降も、アンケート結果をもとに行われた座談会(教員・学事・SFC生・CLIP部員)の記事などを随時配信する予定です。お楽しみに!   参考文献
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