5月27日、國領二郎総合政策学部長が、7月4日付けで総合政策学部長を退任し、慶應義塾大学常任理事(国際・SFC担当)に就任することが決定した。7月の任期満了に伴い、現在、新しい学部長を選ぶ選挙が行われている最中だが、実はこの選挙について、SFCの学生を含めて外部に一切公開されていない。

 学生主体のキャンパスと謳っておきながら、学生とは無関係の場所で学部長選挙が行われるのは、一体どういうことなのか。SFC CLIP編集部では、この問題について他の大学と比較して調査を行った。

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 まず、学部長選挙では、どのようにして候補者が選ばれるのだろうか。これについて、慶應義塾大学名誉教授である岡部光明氏(元・総合政策学部教授)による記述を見つけた(※1)。


「SFC両学部の学部長選挙に関しては、このたび新方式が導入され、まず(一)適任と思う教員を全教員がそれぞれ匿名で推薦する、(二)推薦された教員は候補者ステートメント(一枚紙)を作成するとともに、パネル討論でSFCのあり方についての意見を述べる、(三)そうした情報を踏まえて全員の投票によって学部長を選出する、という方式が採られることになりました。

 こうした方式が新たに採用されたことの趣旨は、深谷(昌弘)先生によれば(一)候補者ステートメントやパネル討論をもとにSFCの教員が皆でSFCの将来を考える機会にしうること、そして(二)将来を語ることを通じてSFCの未来を託せる人材を教員が自らの同僚の中から見いだすこと、の二点にあるそうです」





 これは、岡部氏が1999年6月、総合政策学部長選挙に推薦されたときのパネル討論会での意見陳述をテキスト化したものだ。

 もし、この方式が今でも採用されているとすれば、候補者は教員によって、教員の中から選ばれているということになる。つまり、学生の意志が反映されることはまずないと言える。



 では、学生が学部長の選任に参加している大学は、日本にあるのだろうか。

 一例として、立命館大学が挙げられる。立命館大学では、2009年10月の経済学部長選挙(※2)や2012年10月の国際関係学部長選挙(※3)に、学生が参加することができた 。候補者を予め選出するのは教員であり、学生は候補者に対して無記名投票による「拒否投票」を行う。

 どちらの投票においても、学部長選挙の意義が明確に公開・提示されるため、学生はきちんとした目的意識を持って投票に挑むことができる。

 以下は、立命館大学経済学部長候補者の拒否投票に関する告知資料の抜粋である。



 

「学生・院生のみなさんは教育の主体であり、自主的・自立的に学問研究を進める主体です。また、学生・院生のみなさんは、大学、学部ならびに大学院の運営に互いに協力して、自らの教育・研究を発展させる大学(学部)自治の担い手です。学部長は、このような大学自治・学部自治の担い手である広範な学生・院生と教職員に支えられ、その民主的総意とエネルギーの結集をはかり、教学の発展を担うリーダーとしての任務を担っています。したがって、学生・院生のみなさんが学部長の選出過程に参加することによって、その意志を十分反映させることは大きな意義をもつことです。」






 学部長の選挙ではないが、同様の選挙(信任投票、排斥投票)は、一橋大学の学長選挙(※4)や早稲田大学の総長選挙(※5)などでも行われている。



 以上のことから、学長・学部長の選出に学生が参加することは全く珍しいことではなく、学部自治・大学自治の方法として、ある程度認知されていることが分かる。



 では、話をSFCに戻そう。

 SFCは、講義や研究プロジェクトなど多方面において「学生主体」であることを強くアピールしており、学外からの評価も高い。学生と教員との距離はとても近く、半学半教という慶應義塾大学の精神を貫徹している。SFCの学生であれば誰しも、総合政策学・環境情報学の創造の授業で初めて学部長と間近で相対した時の、あのときめきを覚えているだろう。

 しかし、そんなキャンパスにおいて、学生はSFCの顔である学部長を選ぶことができない。それどころか、信任することはおろか、候補者が誰なのか、どのような方法で候補者が選ばれているのかすら知ることができないのだ。



 実は、この類の議論は目新しい話題ではない。SFC CLIPの記事では過去に、学部長選挙について学生からの不満の声がある、と紹介したことがある(※6)。



 SFC CLIP編集部では、現在この件について総合政策学部長選挙管理委員会に問い合わせているが、回答は得られていない。

 今回、一体誰が学部長に選ばれるのだろうか。今は、指をくわえて待っていることしかできない。

(引用元)