14学則特集 座談会。最終回となる第3部では、4学期制の導入とそれに伴う履修制度の変化についてお話を伺った。

■参加者
・加藤文俊環境情報学部教授 次世代カリキュラム検討WGリーダー
・内藤泰宏環境情報学部准教授
・中峯秀之湘南藤沢事務室 学事担当課長
・石崎翔太環境情報学部3年 学生生活情報サイト運営

■進行(文中オレンジ色)
・原光樹総合政策学部2年 SFC CLIP編集部 14学則特集担当
(※加藤教授は何度か中座)

議論は3時間にも及んだ

4学期制のねらい

— アンケート記事の4ページ目は、履修制度についてのアンケート結果です。履修選抜など、主に4学期制[*4]に伴う変化について聞いています。そもそも4学期制はなぜ導入されたのでしょうか。海外留学をしやすくなるともいわれていますよね。

加藤:
4学期制の導入で世間から一番注目を浴びるとすれば、海外留学についてですね。例えば、学期の前半に集中して単位を取れば、海外の大学の新学期に余裕をもって合わせられることがあります。これは留学に限ったことではなく、国内で長期インターンをしたい場合でも、休学等をせずに活動しやすくなります。

— 4学期制は義塾全体で施行されたものですか?

中峯:
義塾全体としての取り組みですが、2014年度はSFCと理工学部を中心に4学期制に対応した科目が開講され、2015年度からは三田の学部でも対応する科目が開講されます。

内藤:
義塾全体で学事カレンダーを共有しているんです。他学部の授業を受けているとき、キャンパスによって試験日程が違ったら困りますからね。今年度から、そのカレンダーは4学期制を許容するものになっています。SFCは「実験キャンパス」なので4学期制も最初に始めたということですね。

中峯:
いま、4学期制は対応科目の開講数から言っても慶應の中でSFCがかなりリードしています。だから、実験的に他学部の参考になるような取り組みを種々進めていく使命も担っているんです。SFCが4学期制をどう活用するか、学生さんからどんな活用事例が出るか、全塾から注目されています。ただ先行する取り組みであるが故に、新制度に対して違和感を感じる方もでてくるのだと思います。

[キーワード4] 4学期制
慶應義塾大学は、2014年度から2学期制と4学期制を併用した学事日程を導入した。SFCでも春学期と秋学期をそれぞれ前半と後半に分け、短期間に集中して学習に取り組むことができる前半・後半科目の設置を進めている。海外留学、フィールドワーク、インターンなど、大学を離れた活動を支援する環境を整えることを目指す。
2学期制では週1コマを14週かけて2単位を取得するが、4学期制では週2コマを7週間かけて2単位を取得する。
(http://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/curriculum/feature.html参考)

不具合が目立つ4学期制 積もる履修選抜への不満

— 履修選抜に関するアンケート結果では、14学則適用者・07学則適用者ともに、半数以上の学生が14学則の「履修選抜」の仕組みに不満を持っていました。
07学則時には初回授業で行われていた選抜が「初回授業前」になったこと。そして、いままでは課題で行われていた選抜に「抽選」というツールが使われるようになったことが、不満の主な原因だと思われます。

内藤:
4学期制が施行されたといっても、一学期の中で「前半」「後半」に分かれている授業はまだ少なく、良いところが見えにくいために不具合が前に立っているというのが現状だと思います。もちろん、そのままで良いとは思っていません。
4学期制の授業は、週2コマを7週間ですよね。通算何週間行うかが重要になってきます。07学則時のように、2週目の時点でまだ履修する授業が決まっていないとなると、7週間のうち2週間が、履修する授業が確定する前に終わってしまいます。週に2コマある授業だと、14回中4回分が終わってしまうことになるんです。果たしてこれでよいのか。
教員のほうも、授業の7分の2は、「この履修者たちが本当に履修するかわからない」という状態でやらなきゃいけなくなる。さすがにその状態は看過できないと判断しました。よって、1週目には履修選抜が終わっているという形をとることになったんです。
ただ、学生の顔を見てから選抜したいという意見は、教員の側にもかなりありますよ。

中峯:
いま内藤先生がおっしゃったように、4学期制はまだ動き始めたばかりで、科目も少なくメリットが見えにくいのは事実だと思います。先生方も戸惑われている方も多く、従来どおり初回はガイダンス的に、という方もいるので、アンケートのような「メリットが見えない」という意見が多くなっているのはやむを得ないと思います。しかし、4学期制の授業はだんだん浸透していくと思いますし、2015年度には、4学期制の開講科目は2014年度より多くなっています。
今後、4学期制の授業がどんどん増えていけば、「こうなるための4学期制なのか」というのが見えてくると考えています。

「14学則に伴う履修選抜の仕組みの変化にメリットがあると思いますか?」という質問に対する14学則適用者のアンケート結果。半数以上の学生が履修選抜にデメリットを感じているようだ。

4学期制が浸透しにくい背景 SFCの「商店街」性

内藤:
徐々に充実していくと思っているのですが、4学期制によっていきなりSFCの授業全体がバシッと変わらないのは、教員間での垣根が低いという要因もあると思います。SFCは、会社のようなピラミッド構造というよりは、町の商店街のような組織です。学部長は、いわば商店街の会長さんみたいなものですよ。
4学期制という新しい仕組みができても、トップダウンでガラッと変わるわけではありません。もしそうなるとSFCの良いところも壊れてしまうと思います。4学期制が浸透していくなかで、ほかの教員の工夫も見ながら、メリットを見つけて始めていくのがよいのではないでしょうか。その方が結果として学生さんにとってもおもしろい授業が増えることになるでしょうし。

加藤:
SFCで仕事をしていると「多様性」という言葉がよく出てくるんだけど、これに関しても同様で、教員の授業スタイルによって、4学期制を採用するかどうかは変わってきます。4学期制で集中的にやった方が良い授業も、そうではない授業もあるので。

— アンケートにも、授業よっては「4学期制で集中的に勉強ができて良かった」という声もありました。このように、不満ばかりではなくメリットを見いだす意見も確実にあります。

加藤:
4学期制とはまた別の話ですが、例えば、外国語インテンシブが週4コマで行われているのは、集中型が適しているからですよね。

「4学期制は効果的に利用されていると思いますか?」という質問に対する14学則適用者のアンケート結果。そもそも4学期制の授業を受けたことがないと答えている学生も多く、4学期制がまだまだ浸透していないことが伺える。

14学則による「リスク」 留学/バイオキャンプ

石崎:
14学則について、一つ僕が懸念している点があります。07学則適用者の人は、2018年3月を過ぎると、14学則に強制的に移行させられてしまいますよね。07学則と14学則では卒業要件も異なるので、休学をして卒業年が通常の人より遅れてしまうと、07学則の要件は満たしても14学則の要件は満たしていないという人が出てくる恐れがあります。07学則適用者にはこうしたリスクがあるため、逆に留学などをためらう学生も出てきてしまうのではないでしょうか。

中峯:
留学に関しては、留学期間を在学期間に入れ、現地での履修科目を単位として認定するということが可能です。そうすると、留学するケースでも4年で卒業できます。これは交換留学でも私費留学でも一緒です。
しかし、たしかに休学してしまうと石崎さんがおっしゃるようなリスクが生じます。学外での活動を考えている学生さんは、事前に準備が必要になってくるでしょうね。

— 留学の話が出たので、その関連で、バイオキャンプ[*5]に行く人のリスクにも触れたいと思います。14学則では、3年への進級要件が厳しくなったため、バイオキャンプに行く人はSFCのキャンパスで1年生のうちに履修すべき科目が増えてしまいました。そこへの配慮はどのようにお考えでしょうか。

内藤:
そうした声は研究会の学生からもあがっていました。それを考慮して、2015年度からはデータサイエンス2をバイオキャンプでも履修できるようにしました。学生からのフィードバックで仕組みを変えられた例ですね。
ただ、それ以外の進級要件である「外国語」と「情報技術科目」は依然として鶴岡では取れません。しかし、14学則以前でも、バイオキャンプを計画している学生は早めにに必修科目を履修しておかなければいけないということは変わらないですよ。

石崎:
もしバイオキャンプを希望する学生が1年生の春学期の言語で「ベーシック」になってしまった場合、秋学期で6単位取らなければいけなくなってしまいますよね。これは学生にとってかなり負担になってしまうと思います。

— なにしろ、バイオキャンプに行くとそうしたリスクがあるということですね。

内藤:
ちょっと変なことを言うけど。原級は学生にとってはショックだろうけど、3年生までは取り返せるので、そこまで神経質にならなくてもいいんじゃないかと個人的には思っています。2年生を3学期、3年生を1学期という形でも4年目で4年生に進級することは可能です。はじめの6学期をセットに考えて、そのなかで3年生まで上がれればよいのではないでしょうか。
7学期目で4年生になることを目標にしたほうが、逆に自由に履修計画を立てられると思いますよ。

加藤:
SFCはキャンパスの移動もないので、自分から言わなければ原級は分からないですしね(笑)。

[キーワード5] バイオキャンプ
山形県鶴岡市の鶴岡タウンキャンパス(TTCK)に1学期間ないし2学期間通う(滞在する)ことをバイオキャンプと呼ぶ。希望する学生は、通常2年生時にバイオキャンプに通う。TTCKには、メタボローム科学をはじめとする最先端の生命科学研究が展開されており、最新の実験機器を実際に使いながら 生命科学の基礎を学ぶことができるプログラムが用意されている。
TTCKでは、「言語コミュニケーション科目」や「情報技術基礎」が開講されていないなど、開講されている科目に制限があるため、バイオキャンプに赴く学生は自身の必修科目や卒業要件に注意を払らう必要がある。
(http://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/curriculum/others.html参考)

石崎翔太さん

「ショッピングウィーク」はなぜなくなったのか

— 4学期制に伴う履修制度の変化を語る際、「ショッピングウィーク」[*6]がなくなったという話題もあります。そもそも「ショッピングウィーク」というのは正式名称なんですか?

内藤:
「ショッピングウィーク」は、正式名称でもないし公式には存在していなかったものです。文部科学省が定める大学設置基準というものがあって、SFCもその枠をはみ出すことはできません。
大学設置基準(第21・23条)では、1単位を45時間の学修とする授業の場合、1学期間で15週にわたる授業を行うように定められています。そのうち1週間を様子見に使ってよいということは書いていないので、「ショッピングウィーク」という言葉は正式には存在してはいけないものだったのです。
ただ、文科省も「ショッピングウィーク」と呼ばれて行われる授業が存在していることは認知していながら、大学に止めるようには言ってきませんでした。いままでは、ある程度柔軟に対応されてきたんです。

— 大学設置基準に照らせば、1回目から授業をしっかり始めるのが適切だと言うことですね。では、なぜSFCでは事実上の「ショッピングウィーク」が存在していたのでしょうか。

内藤:
それは、1回目の授業のあとに履修選抜があるから、その1回目の授業はガイダンスのようなものが学生にとって適切だろうという共通認識があったんだと思います。そのほうが学生も教員もハッピーになれたということですね。
例えば、ある教員の方は1回目の授業を45分で切り上げて、後半は別の教室に行けるようにされていました。
履修選抜の前に1回目の授業が行われるということから、「ショッピングウィーク」が発生する余地がありました。それは教員にも学生にとってもメリットがあることだったんです。

中峯:
そのような「ショッピングウィーク」ですが、4学期制になってはっきりとその存在の余地がなくなってしまったんです。理由は先ほどの話と同じで、4学期制の授業を開講するためには初回授業後の履修選抜という発想は許容できないからです。

[キーワード6] ショッピングウィーク
14学則施行以前は、履修選抜が第1回目の授業内で実施されていたため、授業が始まる第1週目は、授業選びを買い物に例えて「ショッピングウィーク」と呼ばれていた。この1週間を通して、学生はあらゆる授業に実際に出席することにより、自分に合った授業を選んで履修を決めることができた。また、同じコマに複数の授業をのぞくことも可能だった。
14学則から、第1回目の授業が始まる前にSFC-SFS上で履修選抜(事前選抜)が行われるようになったため、授業を総当りして選ぶような事実上のショッピングウィークは消滅した。
ただし、履修選抜に受かった授業や無選抜授業から実際に履修する授業を選ぶことには変わりないため、ショッピングウィークのようなものが完全になくなったわけではない。

「ショッピングウィーク」のDNAをどう受け継ぐか――1回の授業を取るか、「マッチング」を取るか

— 今後、「ショッピングウィーク」が復活する可能性はないのでしょうか。

内藤:
学期の終わりを伸ばすと、海外研修に支障が出るし、最初を早めようとするとガイダンス日程とかぶってしまう。やろうと思えば、ガイダンス期間にかつての「ショッピングウィーク」のようなものをできないわけではないので、可能性としてはできます。しかし、その「ゆとり」がないというのが現状です。

中峯:
大学としては、初回からしっかりと授業をするのがあるべき姿なので、本来の形に近づいていると考えた方がよいです。

— その「本来の形」というのは、文科省が定めた意味での形ですよね。必修が少なく、学生が自分で選んで履修する科目数が多いから「ショッピングウィーク」というものがあったのだとすれば、それが果たしていた役割というものは確実にあったはずです。そこを何らかの形で埋め合わせする必要があるように感じます。

内藤:
その通りなのですが、十数回しかない授業の1回を削ってもよいのだろうか? ということも言える。その1回、2回の授業を重視するのか、それとも学生と授業の「マッチング」を重視するのか。
僕たちが言っている「本来の形」というものは、法令遵守であるとともに、限られた回数の授業をしっかりやるのが「本来の形」でもあると思います。例えば、外国語インテンシブは、1回の授業の重みをとても意識して設計されているのがよくわかります。

— 4学期制の導入によって日程的には厳しくなったものの、学生が強く希望すれば、「ショッピングウィーク的なもの」が復活する可能性はまだあるんですか?

内藤:
ガイダンス期間に第0回の授業をやって、そこに来た学生しか履修できないということをしていた教員がいたということを聞いたことがあります。教員も学生との対面コミュニケーション、相思相愛を望んでいます。ですので、教員がそういう時間を自ら確保すれば、できるのではないかと思います。ただ、全部の授業でそれをやるのは無理ですよね。
履修選抜の方法が抽選になっている授業も、大学側が抽選にしてくれとお願いしているわけではなく、教員が決めていることです。履修選抜全体においては、定員きっちり選ぶというよりは、絶対に取らせたい人に取らせるという教員も多いです。選抜にもいろいろな選択肢が教員に与えられているので、活用していってほしいですね。

学事の中峯さん

履修選抜 理想と現実

— 2014年度から、「抽選」で履修選抜を行う授業が増えているのは、14学則や4学期制と何か関係があるのでしょうか?

内藤:
別に、授業の量が増えているわけではないので、14学則や4学期制とは直接は関係ないです。SFC-SFSというオンラインで履修選抜を行うようになって、多くの教員が抽選を積極的に選んでいるというだけでしょう。
教員のなかには、教室で実際に話をして対面コミュニケーションができないのであれば、課題をさせてもあまり変わらないので、いっそ抽選のほうがいいとおっしゃる方もいます。何かに影響を受けてバイアスがかかっているわけではないです。

中峯:
本来は、学生さんが取りたい授業を全部取れるのが理想なんですが、現実的にそれは難しいことです。限られている教室数のなかで一つの学期に1000の科目が開講されています。それらを同時に開講していくためにはどうしても制限をかける必要があります。それでも取りたい科目をどうしても取りたいということになると、申し訳ないですが全体としての開講科目数を削減させていただくか、教室数を増やすという対応も必要になってきてしまいます。残念ながら何かで妥協していただくしかないのが現実です。

履修選抜をすべての科目に

— 今期(2014年度秋学期)、「芸術と科学」(水2)という授業がありました。人数が異常に集中(1347人履修)して、θ館(600人収容)でも席が足りず、Ω館の2教室へ映像を中継するという状況になっていました。この原因は履修選抜の仕組みが変わったからなのではないかとささやかれています。

中峯:
たまたま、時間割の都合や色々な条件が重なって履修者数が膨らんでしまう科目が生じてしまうことはあります。ただ、これはSFCに限らず、三田等でも突発的にそうした授業科目が発生することはあります。

内藤:
カリキュラム委員会としては、すべての授業に履修選抜を付けるようにお願いしています。なので、そうした授業が出現することは望んでいません。選抜に外れて無選抜授業に駆け込む学生はいないべきなんです。
また、抽選に外れた人を救済するための科目を用意しようということは、一切していません。一人の教員につき4コマの授業なのに、救済のための授業をやってほしいとは言えません。その教員のポテンシャルを引き出すための授業でなければなりませんからね。
「芸術と科学」のような授業が生まれる原因は、おそらくはその曜日の同じ時限に人気のある授業がいくつか重なったり、いわゆるオフ日(履修する授業がない日)を作りたい学生がいたりするときに、履修選抜がない授業に大量の学生がなだれ込むということが起こるからでしょう。あとは、SNSで飛び交う情報なんかも関連してくるのかもしれません。

加藤教授

「どうせ◯◯だろ。」を超えて 議論の終わりに

石崎:
ここまでの議論を聞いていて、履修選抜のことについても現実的に難しい面があることはよくわかるのですが、学生としてはモヤモヤとした気持ちが残ります。

内藤:
一部の学生へのメッセージっぽくなっちゃうかもしれませんが、もう少し大学を信じてもらえたらうれしいです。「どうせ◯◯だよ」というマインドでは救いようがないというか、つまらない結論にしかたどり着けないと思うんですよ。期待を裏切られるかもしれないけど、学生さんにはより大学に働きかけてもらいたいです。
繰り返しますが、SFCは僕が関わった組織のなかでも学生のことを最大限に考えています。学術機関のなかには、教育を軽視しているところも多いですし、教育のことを雑用と言ってはばからない教員も知っていますが、SFCには僕が知っている範囲でそのような教員はいません。学部長も、教員の言うことよりも学生の言うことのほうが聞いてくれそうなくらいですしね(笑)。

中峯:
そうですね。何か言いたいことがあっても学事に直接言いにくいのであれば、CLIPさんを通してでも伝えてもらえればうれしいです。CLIPさんの役割も重要ですよ!

— がんばります(笑)。本日はお忙しいなかお集まりいただきありがとうございました。どんなキャンパスを実現したいか、そのためにどんな手段で実現するか。これからも丹念に議論していくしかありませんね。

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