16日、SFCに隣接する「湘南藤沢国際学生寮」が完成し、関係者向けの見学会が行われた。SFC CLIP編集部は真新しい慶應大生専用寮を独占取材した。

なお、慶應義塾大学湘南藤沢事務室に許可を取り、当日は最低限の編集部員のみで現地取材を行った。また本記事内で記述している内容は入寮開始前の段階のものである。実際に施設を利用する際には最新の情報をよく確認してほしい。

SFC北側に隣接 今春から入寮開始

今回竣工した「慶應義塾大学 湘南藤沢国際学生寮」はSFC総環地区の北側に隣接する慶應生専用の学生寮で、西松建設が施工し、西松地所が慶應義塾大学と提携して運営するということだ。しばらく前から工事が行われていて話題になっていたがこのほど竣工し、16日午前には長谷山塾長ら大学関係者を招いて竣工式が挙行されたということだ。SFC CLIP編集部は16日午後に行われた教職員向けの見学会に参加し、館内を取材した。西松地所が管理を手掛ける慶應生専用の寮は2017年3月竣工の日吉国際学生寮に続いて2件目であり、また2021年秋学期には港区に高輪国際学生寮も開設される予定である。

建物は鉄筋コンクリート造の地上4階建てで、ワンルームの個室が東西南北それぞれの面にあり、合計109室とられている。また管理人が常駐しセキュリティ面や地震への耐久性にも特に注意して設計されているほか、留学生の生活を支援する学生スタッフ「レジデント・アシスタント(RA)」もともに暮らすということだ。

近隣にはセブンイレブンと郵便局があるほか、南大山まで足を伸ばせばイトーヨーカドーなどがある。

建物外観 南側(総環地区側)が入口となる 建物外観 南側(総環地区側)が入口となる
建物外観 西隣の「打越公園」側に大きな看板が掲げられている 建物外観 西隣の「打越公園」側に大きな看板が掲げられている

名称 慶應義塾大学 湘南藤沢国際学生寮
所在地 神奈川県藤沢市遠藤6701番地内
建物計画 鉄筋コンクリート造 地上4階
敷地面積 1971㎡(596坪)
延床面積 3020㎡(913坪)
室数 109室(1Rタイプ14.5㎡)
管理人住居
駐車場 管理用のみ6台
駐輪場 50台

共用設備の一部は一般学生も利用可能

館内に入ると、左手に食堂と多目的室が用意されている。食堂には炊飯器や電子レンジなどの簡易的な自炊設備のほか、パーティー等での利用も想定してホットプレートやたこ焼き器なども準備されている。また多目的室にはプロジェクターや大型テレビなどが用意されている。グループワークや映画鑑賞会、ゲーム大会などに活用すれば盛り上がりそうだ。

簡易的な炊飯設備付きの食堂 簡易的な炊飯設備付きの食堂
食堂と一体化もできる多目的室 食堂と一体化もできる多目的室

なお、この食堂と多目的室については日中に限って一般学生も利用できるということだ。ただし食堂で夕食が提供される時間までには退出する必要があり、また寮生と一緒に寮の夕食をとることはできない。

毎日朝夕の食事の提供があるのは忙しい学生にとって心強いだろう 毎日朝夕の食事の提供があるのは忙しい学生にとって心強いだろう

寮生専用エリアにはセキュリティ完備

寮生専用エリアに入るには二要素認証が必要 寮生専用エリアに入るには二要素認証が必要

一般学生の入れるエリアから寮生専用エリアに入る際にはICカードと顔認証の2要素での認証が必要となっており、外と中を仕切る部分なだけに特に厳重なセキュリティ対策が施されている。また共用部から各階寮室エリアに入るにもICカードを通す必要があり、自分の階以外には入れなくなっている。男女混住の寮だが当然男女は別のフロアだ。

寮生専用エリアに入るとまずエントランスホールとエレベーターホールがある。エントランスホールは木目のデザインが美しい空間で、大型テレビも設置されている。

エントランスホール 顔認証付きの防犯カメラも設置されている エントランスホール 顔認証付きの防犯カメラも設置されている

2階共用部にはラウンジと中庭がある。中庭にはパラソルと席が用意されており、青空の下でくつろげる空間となっている。特に感染症対策が求められる昨今、このようなスペースが確保されているのは嬉しいだろう。

ラウンジは窓を開け放って中庭と一体化させられる ラウンジは窓を開け放って中庭と一体化させられる
中庭は空とつながった開放的な空間 中庭は空とつながった開放的な空間

続く3・4階共用部にはそれぞれ自習室、多目的室が用意されている。自習室は机と椅子が整然と並んでいるほか床面埋込式のコンセントも少数ながら用意され、またガラスを挟んで隣接するエレベーターホールに無線LANのアクセスポイントがある。一方の多目的室は防音性にも配慮した設計になっており、楽器やダンスの練習にも活用できるようになっているとのことだ。多目的室のみ照明がダウンライトになっているのも印象的だった。

3階の自習室 3階の自習室
4階の多目的室 4階の多目的室

このほか共用設備として宅配ロッカー、下足コーナー、防災倉庫、コインランドリー(各フロア32室あたり4台)、屋外自転車置き場(50台・2段式)が用意されている。

個室は109室 約14.5㎡

モデルルームとして用意された一室(4階南向き) モデルルームとして用意された一室(4階南向き)
個室の間取り図(西松地所公式サイトより引用) 個室の間取り図(西松地所公式サイトより引用)

全部で109室ある個室にはそれぞれICカードキーで施錠されている。個室部分は専有面積で約14.5㎡とのことだ。部屋に入るとすぐに水回りと収納があり、奥にデスクとベッド、正面にバルコニーがあるオーソドックスな構造だ。

個室内にはシャワーブースがあるものの浴槽はない。共用の風呂や近隣の銭湯なども無いので、風呂でゆっくり温まりたい人には気になるところだろう。また土間スペースが分けられておらず室内に土足で立ち入る形式なのも、日本ではあまりなじみのないところだ。

また公式サイトによると以下の物品が入居者に貸し出されるという。このほか布団がリースで用意されるとのことだ。

備品

デスク・本棚・チェアー・昇降ワゴン・マットレス付ベッド・ワードローブ・エアコン・2ドア冷蔵庫・照明器具・カーテン・物干し竿・インターネット(Wi-Fi完備)

貸出備品

掃除機・アイロン・アイロン台・布団クリーナー 

備品のデスクは決して大きくはないものの、ノートパソコンと外部モニターは設置できそうな広さが確保されていた。一方で各室に有線LANは引かれておらず、3-4部屋にひとつの無線LANアクセスポイントを利用する形になっている。

備品の学習机 家庭用の15型ノートPCが参考として置かれている 備品の学習机 家庭用の15型ノートPCが参考として置かれている

また国際寮ならではの配慮として、ベッドとマットレスを延長する家具が特注で用意されており希望者に貸し出されるということだ。ベッドから足がはみ出るのは高身長者にはありがちな悩みだけに、この対応は留学生に限らず嬉しい人は多いだろう。

なお建物内に同様の間取りの個室が1-4階の東西南北に合わせて109室とられている。各室にバルコニーは確保されているものの向きとフロアによって日当たりや洗濯物の干しやすさなどに違いが出るのもまた気になる点だ。

なおモデルルームとして男女それぞれを想定した南向きの2部屋が用意されていたが、違いは鏡写し・部屋の幅がわずかに違う・デスク上のノートPCの有無・布団の色といった程度であった。記事内の写真は男性を想定した部屋のものを使っている。

屋上設備も特別に見学

ソーラーパネル等が設置されている ソーラーパネル等が設置されている

また今回、普段は寮生でも立ち入れない屋上設備も特別に見学させていただいた。ここではソーラーパネルや太陽熱給湯、採光設備などが用意されており、この寮のうたう「環境・省エネへの配慮」がうかがえる。施設内には蓄電設備もあり、緊急時でも安心して電気を使うことができる。
また、周囲に高い建物が少ないこともあって屋上からは東西南の3方向を見渡すことができ、普段立ち入れないというのがもったいないと感じるほどだった。

屋上から東側「健康と文化の森地区」予定地を望む 屋上から東側「健康と文化の森地区」予定地を望む
南側「未来創造塾」エリア、SBCを一望する 南側「未来創造塾」エリア、SBCを一望する

ちなみに西側に隣接するSFC未来創造塾WEST地区では、こちらも西松建設グループが滞在施設を建設する予定だ。

気になる家賃は…? 鍵はやはり相鉄延伸か

さて、新築で設備が充実しているとなると気になるのは家賃等の費用ではないだろうか。公式サイトによると以下のような内容となっている。なおこの内容は本稿執筆時点(2021年9月)のものである点に注意してほしい。

月額費用 寮費(家具家電付き) 59,000円
電気料金 4,500円(税抜)
水道料金 3,500円(税抜)
インターネット使用料 1,500円(税抜)
食事代 個別清算
初期費用 入寮費 1年契約 90,000円
2年契約 150,000円
3年契約 200,000円
4年契約 240,000円
保証金 50,000円
年間管理費(保険等込み) 222,000円

家賃についてはさまざまな意見があるだろうが、周囲の出席者からは「かなり強気だな」といった声が漏れ聞こえてきた。

読者の多くが知っているようにSFCは駅から約4km離れた陸の孤島であり、大学にだけは近い反面で近隣商業施設等は非常に限られる。また行動範囲を広げようとするとバスの本数や渋滞、自転車であれば険しい地形に悩まされることになる。施設担当者は相鉄が延伸した際には駅前の好立地となる点をアピールしているが、当面入寮する学生にとっては辺ぴな場所には変わりない。SFCでは散々語られた話題だが、今回の寮にとってもやはり2030年以降に相鉄延伸が実現されるかどうかは非常に大きな関心ごとになるだろう。

このように学生にとってはメリットもデメリットもあるとみられる今回の学生寮。SFC生にどのように受け入れられるか、今後が楽しみだ。

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